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飯田です.
代謝系の判定基準は再検討中といたしまして,,,
個体が満たすべき必要条件として先に挙げた3条件,
> 1.代謝系である.
> 2.物理的境界で区切られた部分系である.
> 3.センサ,プロセッサ,アクチュエータ構造を持ち,刺激に
> 対して反応する.
のうち2.物理的境界で区切られた部分系である.
について補足いたします.
物理的境界とは,
1.物理量の偏りでできる,閉じた界面
のことを言っています.物理量の種類は特に考えていません.
イメージとしては,細胞膜,細胞壁等です.そこには,外界
と比べて物質が高密度に集結しています.全体としてみれば,
閉じたトポロジーになっており,その高い密度差をもとに,
系の内側と外側が明瞭に区別できます.
物質の分布以外にも,熱力学量の偏りなどが境界になり得ます.
先に,高橋さんからオートポイエシスに関連してご指摘いただいた
ように,生命システムの境界は物理的である必要は無いという考え
方もあります.しかし,わたくしは次の理由で物理的境界の方が
妥当だと判断しました.つまり,
2.一般にいう事物 Entity,あるいは Closureを記述する良い
枠組みがない.
個人による認識のばらつきが大きすぎ,現状では良い表現が
見つかりません.見つかったとしても,さらに自然法則との
関連が示される必要があります.
3.物理量の分布ならば明確に記述でき,自然法則との関連も
つきやすい.
4.物理的境界の方が我々の知る生物の特徴に良く合っている.
からです.
特定の界面が「客観的に」検出できることは,非常に重要です.
境界が検出されることは,特定の部分系の境界を与えることで
あり,内側,外側,摂取,排出,制御,運動,刺激,反応,通信
といった生命に関係する諸々の用語,ロジックの基盤になります.
逆に,この基盤を欠けば,それらの用語が使えない(意味を持た
ない)ことになり,非常に不便です.
物理的境界ならば,客観的に検出可能と期待しております.
(続く)
--
"Life and Evolution '97"
Kazuhiro Iida,
Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation,
34 Miyuki-ga-Oka, Tsukuba, Ibaraki, 305 Japan.
TEL +81(298)50-1142, FAX +81(298)56-6136.
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