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大戸です。
#テーマを明確化するためにスレッドを一つ分岐させました
ここでは次の事柄について、コメントします。
1.システムは下位構造を積極的に利用する
DNAは生命素としての位置より、システムに積極的に利用されたにす
ぎない
2.システムの持つ変化に対する内部応力は重要である
これを切り離して考えることはできない
3.システムの初期の立脚基盤を無視して変化しうる
システムは生成時の立脚基盤から遊離した形に変化しうるため、現段階
のシステムをただ追うだけではいけない。また、原型的なものにはそれ
ほどの大きな価値を付加することは危険である
At 16:13 97/09/12 +0900, Kazuhiro Iida wrote:
> 大戸 様
「様」は外してください ^^;
> むしろ,全ての生物が核酸からなる遺伝子を持っているのと同様
> な意味で,全ての生物がそれと相同な部分を持つような,そんな
> システム構造があるものと考えています.
初期の地球環境において、自己保存(複写)(と適度な自己破壊)系として
選択されたのがRNAであり、これが自己保存を主としたDNAの利用
と、複写機能など、自己保存のための機能の触媒としてプロテインに役
割分担されてきたと言われています。
このようなDNAの機構は「生命系に保存された」というよりも、「利
用された」と言うべきではないか、と考えられます。特に真核生物の場
合、巨大なDNAを安定に保存しておくことが可能となり、いくつもの
DNAの再利用が始まったと思われます。DNA複製の際に近接領域が
よれて、二重化することがあります。同様のパターンで、生活性の度合
いによっては簡単にファミリー化してしまいます。利用頻度の高い部位
(rRNAなど)については多重化しており、これが生命維持に対する危険性
を下げていると考えられます。
「中立進化説」ではこのファミリー化された遺伝子の片方にかかる淘汰
圧が低くなることから、効率的な(進化的)探索が可能であるとしていま
す。逆に遺伝子欠損を効果的に応用したものに B-cell があります。グ
ロブリンを形成する部分の遺伝子を、その分化過程において脱落させて
いき、異なるグロブリンを生成できるようにするわけです。
生命というシステムは、その下位構造を要素として積極的(貪欲)に利用
するものであり、いったん形成されたDNAは、そのダイナミクスも含
めて、かなり興味深い形で再利用されています。
進化に関してみても、真核生物においては、DNAをジャンクしていく
方向にあり、これは再利用性によるものと考えられます。また、生物シ
ステムに数多く見られる共生系なども、「独立に開発するのではない」
という発想であり、この意味から、DNAは偶然、その中心付近に位置
付けられた物質であるとの見方の方が正しいと思われます。
DNAのダイナミクスは非常に興味深く、生命システムを知る上で、こ
の上無い実現例であることは疑いようの無い事実ではありますが。
> さらにそこから,生命以後の進化の過程で獲得された形質を除い
> てみて(これは全くイメージで言っておりまして,満たすべきミ
> ニマルな必要条件群が示すものは進化の過程で獲得された形質を
> ほとんど含まないだろうという私の憶測によります.)得られる
> システム構造を,ここでは最小のシステム構造とか,ミニマルシ
> ステムとか呼んでおります.
(snip)
> > これは、DNAの情報が絶対ではなく、その場におかれた環境によって
> > ダイナミックにシステム自らが変更していっているという、良い見
> > 本と考えています。
>
> その変化(変異)が何によってもたらされたかを考えると,生命後の
> 選択淘汰,進化の結果とは考えられませんか?そういった現象を絶対
> 忘れないで,しかも,極力省くようにすることが起原へさかのぼる
> ことではないでしょうか?
「進化」というより、「システムの適応的変化」と言うべきですが、こ
のタームは生命システムにおける重要なダイナミクスであると考えます。
また、「共進化」という考えは非常に重要です。これは、生命システム
を擁しうる「場」があるとき、生命システムが介在するということによ
り、「場」が変化します。この変化した「場」に適合するような生物シ
ステムが発生し... というようにして、多くのニッチ(生態的地位)が形
成されていきます。ミトコンドリアなどは有名ですね。また、アリマキ
に共生している細菌類は、宿主となる生物種に依存しており、また、ア
リマキ側でも、細菌をためておく特殊な細胞を形成しています。
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