|
飯田＠ＮＥＣです．
昨日，個体レベルの生命が満たすべき必要条件を独断と
偏見に基づいて挙げました．
誤解の無いように書いておきますが，ここでは生命とは
何か，生命の必要十分条件は何かを示すことを目的とし
ているのではありません．それが認識などの内容を含む
難しい問題であることは明らかです．ここでは，一気に
必要十分条件を書き下すのではなく，それに徐々に迫る
という意味で，「必要条件」をを挙げてゆこうとしてい
ます．ですから，ここに書いた以外にももっと多くの条
件があるはずで，それらをご指導いただければと願って
おります．
方針としては，できるだけコンパクトに，しかも客観的
な言葉で記述しようと考えております．
さて，昨日補足させていただいた １．代謝系であるに
関して，その検証方法を検討してみます．（検証手段の
ない条件は，客観性に乏しいと考えられるからです．）
２）所与の系が代謝系であることの検証方法：
検証ステップ：
所与の部分系について，
１．物質，熱力学量の出入りがあるか？
無ければＮＯ．
所与の部分系の内外で，物質，熱力学量の出入りがある
ことは，その部分系が，熱力学的流れの上にあることを
意味します．
２．物質の分布に内外の差があるか？流入したのと別種
の物質の生産が見られるか？
無ければＮＯ．
部分系の内部は，その外側と比べて秩序だっている必要
があります．物質の分布に内外の差があることは，秩序
の存在の前提条件です．逆に分布の差があったとしても，
それだけでは，代謝系であるとは言えません．それでさ
らに次のことを調べます．
３．部分系の中に持続的に散逸が見られるか？
部分系の内部で物質や熱力学量間の変換が生じ続けてい
るとすれば，熱の生成，もしくは（間接的に計測される
ものとして）エントロピーの生成が観測されるはずです．
もし，部分系の中に，１次の熱力学的ソース，例えば，
火山の噴火口や，熱水の噴出口ななどがなければ，熱や
エントロピーの持続的生成が見られることは，部分系の
内部で何らかの状態変化が起こり続けていることを意味
します（化学反応だけとは限りません）． ２．と３．
の条件を満たす部分系は，外部から流入した物質，もし
くは熱力学量を用いて，内部に２次的な熱力学的ソース
（レザバー Reservoir）を形成していることになります．
３．が満たされたとしても，１次のソースが存在しな
いことを証明する必要がありますので，さらに次のこと
を調べます．
４．その部分系からの物質，熱力学量の出入り禁じた時，
散逸が停止するか？
もし，部分系の内部に１次のソースがなければ，出入りを
禁じること（閉鎖系化）することで，系は平衡状態へ向か
うことになり，散逸が停止するはずです．もちろん，完全
に閉鎖することは困難ですが，近似的に散逸がゼロと見な
せれば良いと思われます．
上の検出条件は，計測機器の精度等をまだ考慮していませ
んので，実際それを観測可能にするためには，もう少し議
論が必要だと思います．とりあえずたたき台として挙げま
した．
以下余談です．
ＮＡＳＡは，火星に生命が存在することをどうやって証明し
ようとしているのでしょう．何か，生命検出基準でも作って
いるのでしょうか？
上の３．で述べたことに関係しますが，現存する生物の構成
物質，例えば，蛋白質，糖質，脂質などはレザバーとしての
役割りを果たしている物質です．それで，逆にレザバーとな
りうる物質を見いだすことで，代謝系の存在の可能性を探る
ことはできますが，やはり１．２．３．４．が満たされない
と生命が存在するとは断言できないと思います． ：）
--
"Life and Evolution '97"
Kazuhiro Iida,
Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation,
34 Miyuki-ga-Oka, Tsukuba, Ibaraki, 305 Japan.
TEL +81(298)50-1142, FAX +81(298)56-6136.
----- |
|
|
