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松野先生 LIFEの皆様
松野先生> ここでいささか話が込み入ってくるのは、鳥瞰図
> そのものをでっち上げるのは全体視野を豪語する鳥ではなく、限られた
> 視野で地面の上を動き回っている虫けらに依存せざるを得ない、とする点
> においてです。ある特定のタイムスケールの出現は何かの運動の結果にな
> ってしまいます。それが何であるのかは、目下のところ見当がつきません。
飯田:
一つアイデアがあります.:)
統計力学と比べてみます.統計力学で特定のタイムスケールとは,
局所平衡状態の実現に十分なタイムスパンです.局所平衡状態とは,
ご存知のように系を構成する要素の相互作用(例えば,衝突ですとか,
通信ですとか)が十分に行き渡って,局所のエントロピーが最大となる
状態(各要素の持つ情報に偏りが無い状態)です.
この考え方に習うと,もし,虫の通信範囲,通信方法が決まれば,
その虫の世界のタイムスケールは自動的に決まります.
通信範囲の数倍程度の近傍にいる他の虫から得られる情報が飽和するのに
かかる時間,つまり新しい情報が得られなくなる時間が,その虫に特徴的な
タイムスケール(統計力学のアナロジーとしての)になります.
このタイムスケールは人間が与えたものでなく,虫そのもののメカニズム
で決まるタイムスケールなので,松野先生の「虫の視点の時間」にフィット
するように思えます.
(虫の通信範囲を引っぱり出したのは,空間スケールがタイムスケールと
表裏一体だからです.例えば,力学段階のタイムスケールには,平均自由
行程が対応します.)
(統計力学のタイムスケールのイメージは,例えば,
{Zubarev, D., Morozov, V., and R$ddot{o}$pke (1996), Statistical
Mechanics of Nonequilibrium Processes, Vol.1, pp. 89-92,
Akademie Verlag, Berlin.}
に基づいて議論しております.)
飯田@NEC
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"Life and Evolution '97"
Kazuhiro Iida,
Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation,
34 Miyuki-ga-Oka, Tsukuba, Ibaraki, 305 Japan.
TEL +81(298)50-1142, FAX +81(298)56-6136.
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