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生命の起源 #958 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
958
DATE
12/28/1998 11:51:54 AM
TITLE
[life:00958] Re: Nature article: Hypercycles, BIF
AUTHOR
Kazuhiro Iida <iidakek@***.***>
BODY


横林様 LIFEの皆様

今年もわずかとなりました.大掃除で土日費やした飯田です.:)


横林さん:
> 一つ重要な要素を加え忘れました。自己複製には分子認識を伴った
> 情報伝達が絶対必要だということです。分子認識を伴わない複製は
> 単なる自己触媒です。ここで話を分子レベルでの自己複製系に限れ
> ば、我々の言う「情報」とは単なる分子構造だということになりま
> す。その分子の化学的性質や分子認識能などの「表現形」は分子構
> 造で一義的に決まるので、(2)のような定義は結果であって情報
> の本質はペプチドの一次配列にあると考えて良いと思います。
>
> ・・・書き方が逆のような気がしますが、分子構造を情報とすると
> 分子認識を伴わない複製は情報伝達なんてありえないというのは、
> お解りいただけるでしょうか。
>
> これは単なる定義の問題なのかもしれませんが、以上の立場から、
> (3)の視点は賛成できません。ランダムな配列でも分子それぞれ
> が情報を持っているし、環境によって選択された結果は単にそれら
> の情報(遺伝子形)がその環境に適した表現形の情報を持っていた
> というだけのことです。「どういう分子構造が選択されたか」とい
> うことを情報というのなら別ですが私は「どういう情報が選択され
> たか」というように解釈します。

飯田:
今,横林さんは「分子合成」における情報伝達という際,何が情報かを指摘され
ています.(3)の立場は,このスケールと時間スケールのズレがあるように思
えるので,まず横林さんと「分子合成」の土俵で議論させていただき,後日
(3)について議論いたします.:)


飯田の主張1.立体構造の伝達はキーでない.

分子認識とは,ある分子が,その他の分子(あるいはその分子と同じ種類の分
子)と特異的に結合する(あるいは特異的に排除する)ことで,分子の立体構造
や,電子配置がその基礎になっていると理解しております.まず,横林さんが
「(2)のような定義は結果であって情報の本質はペプチドの一次配列にあると
考えて良いと思います。」とおっしゃるのは,ペプチドの一次元配列が決まれ
ば,少なくとも生体内では「その立体構造とか,電子配置が一意に決まる」の
で,そのペプチドが合成される際,アミノ酸の一次元の配列順序こそが情報と考
えて良いということですよね.

つまり立体構造とか電子配置とかが情報の中身で,配列順序は,それと1対1に
対応しているから,それも情報と言って良いというお考えですよね.絵としては

アミノ酸配列 (情報)



立体構造 情報



分子認識


でしょうか.

そこで私が疑問に思うのは,ふつうの自己触媒反応でも立体構造や電子配置が伝
達される点です.低分子化合物A,B (たとえばAは,酸素ラジカル, Bはオゾン)
から成るAの自己触媒反応でも,A は (複雑ではないかもしれませんが)特定の
立体構造を持っており,基質Bとだけ反応する特異性もあると言えるでしょう.
プリオン蛋白質の変位型と正常型では変位型の立体構造が,正常型を変位型に変
えますが,この場合は一次元配列は同じですが,分子認識の結果として立体構造
だけが伝達されてゆきます.立体構造が複製されている.特異的であるというだ
けでは,自己複製と自己触媒が区別できないように思います.


立体構造



分子認識

に注目するより,むしろ一次元配列によって「間接的」に立体構造を伝達できる
仕組み(一対一に対応づけできる複雑な仕組み),さらに進んで核酸−蛋白質の
コード系によって「さらに間接的」に表現されているという点が,生物の自己複
製と自己触媒系の違いではないでしょうか?



飯田の主張2.情報の間接性がキーである.


DNA



RNA



アミノ酸配列



立体構造

この間接的な表現のどこからが(アミノ酸配列なのか,RNAの塩基配列なの
か,DNAの塩基配列なのか)を情報と呼べば良いのかわかりません.むしろ分
子合成のスケールで「自己複製」と「自己触媒」をわけるキーワードは情報の
「間接度」ではないでしょうか?


例えば,立体構造にいたるまでの階段の数を間接性と呼ぶとすれば,

低分子化合物の自己触媒反応は,間接度=0
生物の自己複製は,      間接度=3

スクリプス研の反応は,アミノ酸の配列は所与ではありますが異なるペプチドの
組み合わせの自由度がありますから

   間接度=1
と言えると思います.

間接度が多いほど,バラエティーが生じやすく成ります.
この2つの主張(作業仮説)について,どうお考えでしょうか? 

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Kazuhiro Iida, "Life and Evolution '98 --> "
Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation,
34 Miyuki-ga-Oka, Tsukuba, Ibaraki, 305-8501 Japan.
Phone +81(298)50-1142, Facsimile +81(298)56-6136.
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