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生命の起源 #936 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
936
DATE
11/24/1998 03:08:32 PM
TITLE
[life:00936] Re: Genome and Ogigin (
AUTHOR
mmaeda@***.*** (MAEDA)
BODY


前田です。

今、ばたばたしているので研究会のご紹介まで。

>(前田さんからちょい関連する研究会のお誘いメールもら
>いました.プログラムもらったらホームページに載せます.)

飯田さんにお話ししたのとは違いますが、別のML経由でこんなんも来てます。
ご参考まで。

私も興味はあるんですが、所用のため行けないのが残念です。

- - - - - ここから


Special Workshop on
Computer Simulation of the Cell
(人工知能学会第四回分子生物情報研究会)

ゲノム解析による遺伝子情報の爆発的な増大にともない、細胞代謝をシステム
として理解することは21世紀の生命科学における最も重要な課題のひとつと
なります。本ワークショップでは、未だ発展途上にある「細胞モデル・シミュ
レーション」の分野に挑戦する研究者を集め、各自の研究内容を紹介するとと
もに、21世紀の生命科学のあり方を議論します。

日時:1998年11月27日(金)
場所:慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス
τ(タウ)11号室
地図:(http://www2.keio.ac.jp/Campus/map-fujisawa.html)
交通:小田急線湘南台駅 タクシー15分 バス20分
JR東海道線辻堂駅 タクシー20分 バス30分

----------------プログラム------------------------------------------------
ご挨拶 13:00-13:10
冨田勝(慶大・生命情報研究室・環境情報学部)
E-CELLプロジェクトの概要 13:10-13:35
冨田勝(慶大・生命情報研究室・環境情報学部)
E-CELLのモデリング手法とシステム構築 13:35-13:50
高橋恒一(慶大・生命情報研究室・政策メディア研究科)
バーチャル大腸菌構築の新手法 13:50-14:15
大竹久夫(広島大・先端物質科学研究科)
細菌走化性のシミュレーション 14:15-14:40
諸星知広(広島大・先端物質科学研究科)
酵母と大腸菌の全細胞シミュレーションについて 14:40-15:05
北野宏明(ERATO JST、SONY CSL)*代理

***休憩*** 15:05-16:10

代謝経路解析用統合シミュレータ(BEST-KIT)の開発 16:10-16:35
岡本正宏(九工大・情報工学部)
E-CELLシステムを用いた転写、翻訳、複製のモデリング 16:35-16:50
橋本健太(慶大・生命情報研究室・政策メディア研究科)
E-CELLシステムを用いたヒト赤血球のモデリング 16:50-17:05
松嶋亮(慶大・生命情報研究室・政策メディア研究科)
E-CELLシステムを用いた原核細胞化走性シグナル伝達経路のモデリング17:05-17:20
松崎由理(慶大・生命情報研究室・政策メディア研究科)
細菌の熱ショック応答のアルゴリズムを用いたフィードバック制御 17:20-17:45
倉田博之(東大・ 工学部)
シミュレ−ションのために数理モデリングを用いることについて 17:45-18:10
武田裕彦(九大・理学部・生物)

***懇親会*** 18:30-21:00

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講演要旨

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細菌の熱ショック応答のアルゴリズムを用いたフィードバック制御

(東大工)倉田博之,関実(九大工)古崎新太郎(広大工)大竹久夫

生命は複雑なもので、理解することができないものであると思われてきた。
それは人工物と材料、設計方法が全く異なるからである。しかし、多様な分子
の複雑な相互作用のはたらきをアルゴリズムというレベルで抽象化することに
より、電子工学者は電子回路、化学工学者は化学プロセス、機械工学者はロボッ
トのアルゴリズムと比較することが可能になる。このようにアルゴリズムの集
積体であるソフトウエアという概念から生命分子のはたらきをとらえ直すこと
により、生命の仕組みをコンピューター中で再構成する。
生命の基本的本要素をすべてもち、ゲノムの構造が完全に明らかになってい
る大腸菌をモデルとして研究をスタートする。生命のソフトウエアを明らかに
する戦略は、1. 熱ショック応答、浸透圧応答、アミノ酸の代謝、燐酸スト
レス応答などの各要素システムをモジュール化する。2. 情報処理層、代謝
層、遺伝子発現層からなる細菌の3層構造は各モジュールを統一する基本構造
と考えて、すべてのモジュールをこの3層構造の中に格納する。
今回は大腸菌の熱ショック応答の分子レベルでのフィードバックアルゴリズ
ムを人工物である恒温プロセスに移植することによって、コンピューター上に
再構成する方法を示す。

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細菌走化性のシミュレーション

○諸星知広・辻 敏夫・大竹久夫

広島大学大学院・先端物質科学研究科・分子生命機能科学専攻
広島大学工学部・計数管理工学講座

細菌は最も単純な生命体であるが、環境からの刺激を認識して泳ぐ方向を変
えることができる.また同一の環境刺激が続くと適応機構が働き、その刺激に
はやがて反応を示さなくなる。細菌に限らず生命体が、誘引物質へ集積したり
忌避物質から逃避したりする性質を走化性と呼ぶ。細菌は、生命体をシステム
として解析するための最も単純なモデル系であるが、特に細菌の走化性は刺激
入力から運動出力に至るまでの内部情報処理経路がわずか数種類のタンパク質
によって実現されているという点で非常に興味深い。これまでにも、細菌走化
性のシミュレーションに関する研究はいくつか行われてきたが、それらの研究
では細胞内情報処理系の働きの一部をシミュレートしたに過ぎず、刺激の入力
から運動出力までの系全体を扱っているわけではない。本研究ではまず、細菌
の中から大腸菌 (Escherichia coli) を解析対象に取り上げ、外部刺激の入力
から内部情報処理のネットワークを介して鞭毛モータに運動制御信号が伝達さ
れるまでの全体機構をモデル化した。次に、最適化アルゴリズムを用いて内部
パラメータ値を調節することにより、大腸菌の走化性をコンピュータ上に再現
することを行った。シミュレーション結果は、走化性実験における観察結果と
逐一比較することにより、その再現性が確かめられた。最後に、大腸菌の走化
性アルゴリズムを基に、移動ロボットの行動を制御するプログラムを開発し、
人工物である移動ロボットと生命体としての細菌の行動の比較を行った。

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バーチャル大腸菌構築の新手法

大竹久夫・滝口昇
広島大学大学院・先端物質科学研究科・分子生命機能科学専攻

 本講演では、最も単純な生命体システムのひとつとして大腸菌を取り上げ、
コンピュータ上にバーチャル大腸菌を構築するための新しい考え方と手法につ
いて述べる。この新しい考え方では、まず大腸菌の『意志決定』装置として、
主としてRNAポリメラーゼ、シグマ因子および転写因子からなるタスクセレク
ターを設定する。このタスクセレクターにより、大腸菌の振舞いのルールとし
てのアルゴリズムをソフトウェアデーターベースより選択させ、そのアルゴリ
ズムの実行段階においてハードウェアデーターベースから必要な遺伝子を読み
出す。現在、演者らが作成中のアルゴリズムには、浸透圧、温度、酸素濃度や
pH変化への応答、炭素、窒素やリン飢餓への応答、DN A損傷や緊縮応答および
定常増殖期への移行のアルゴリズムなどが含まれている。これらのアルゴリズ
ムは、独自に開発したツールにより、フローチャートに表現されルール化され、
バーチャル大腸菌のソフトウェアデーターベースに登録されつつある。

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代謝経路解析用統合シミュレータ(BEST-KIT)の開発

九州工業大学情報工学部 岡本 正宏

数理モデルの作成、状態方程式(微分方程式)の自動生成、微分方程式の数
値計算、未知速度パラメータの推定、数値シミュレーション結果のグラフ化、
反応機構そのものの推定といった作業が1つのシステムとして統合化されたシ
ミュレータBEST-KIT (Biochemical Engineering System Analyzing Tool-KIT)
を開発した。このシミュレータを用いると、ユーザは、マウスクリックのみで、
階層性ある非線形反応系の構造を手軽にお絵描きのような感覚で定義、連結し、
大規模な代謝経路をつくることができ、さらに、作成したモデルから、反応種
の複雑な微分方程式が自動生成され、タイムコースが表示されるという一連の
作業を簡単に行うことができる。また、コンピュータの画面上に表示された代
謝マップのある領域を指定することだけですべて解析できるようなインターフェ
イスも組み込まれている。しかし、現在のところ、素反応ステップに含まれる
速度パラメータの値には未知なものが多く、質量作用則に基づく立式よりも、
素反応ステップを関数ブロックとして捉える方が現実的なことも多い。そこで
付加機能として、代謝経路の素過程でおこりうる速度変化を関数ブロック化し、
その関数ブロックを連結することで、ある代謝経路の反応図が作成できるよう
なインターフェイスも取り入れている。

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シミュレ−ションのために数理モデリングを用いることについて

武田裕彦1,John Reinitz2
1: 九大・理・生物,2: Brookdale Center for Molecular Bio., Mt. Sinai
Med. School

Genes Network Database : (http://www.csa.ru/Inst/gorb_dep/inbios/genet
/gen et.htm) の mirror site を調べると、ロシアの科学者がData Base
Curatorとして参加し、アメリカの科学者が Acquisition of gene expression
data に力を注いでいます。日本の科学者がこれに模擬計算機実験として関わ
るというのが Sony CSL からの参画になっています。
 数理モデリングの分野では遺伝子間相互作用の揺らぎを扱うに、確率的手法
による厳密解導出の定跡、および計算機上の事後確率最大化問題の解法が伝統
として蓄積されてきました。そこで、これに基づいて相手国のテクニカルな背
景にまで応接することを試みます。
 具体的には、遺伝子ネットワ−クの模擬を上流から下流まで一貫した工程と
考えたとき、[1] 遺伝子産物可視化のための抗体の調製 -> [2] 可視化した遺
伝子発現パタ−ンの観測 -> [3] 発現パタ−ンをデ−タに用いての機械学習 -
> [4] 模擬実働 ... 、という各ステップについて配列レベルの情報、生物学
としての知識にまで理解を深めるために数理モデリングからの命題を行使でき
ることを示します。

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E-CELLプロジェクトの概要:細胞内全代謝の包括的シミュレーションに向けて

○冨田勝13、橋本健太12、高橋恒一12、松崎由理12、松嶋亮12、齋藤佳奈子13、
柚木克之13、三由文彦13、中野寿子13、谷田さくら13、清水友益14 (慶大・
1生命情報研、2政策・メディア、3環境情報、4Department of Zoology,
University of Cambridge)

ゲノム・プロテオーム解析によって得られた大量の遺伝子機能情報や代謝経
路情報に基づき細胞の全体または一部の代謝活動をコンピュータ上で再構築す
るための汎用のシミュレーションソフトウエア「E-CELL」を開発した。
E-CELLはSubstance-Reactorモデルに基づいており、酵素反応や膜輸送など
の化学反応をReaction Ruleとして個々に定義するとそれらを疑似並列に実行
し全体の振る舞いをシミュレートする。ユーザは物質濃度の増減や特定の反応
の速度などを観察することができるだけでなく、グラフィックインターフェー
スから介入して任意の物質濃度を人為的に増減させる事もできる。
昨年までに我々はE-CELLシステムを用いて127個の遺伝子からなる仮想の
「自活細胞モデル」を完成させたが、現在これに細胞増殖に必要な遺伝子を加
えることによって「自活増殖細胞モデル」の構築を目指している。また、転写
制御やDNA複製などの代謝を拡張するためにDNAや転写翻訳機構のモデリングに
改良を加えた。一方、これらの仮想細胞モデルとは別に、E-CELLを用いてヒト
赤血球細胞のシミュレーションやバクテリアchemotaxisのシグナル伝達のシミュ
レーションも行なっている。

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E-CELLのモデリング手法とシステム構築

○高橋恒一12、柚木克之13、清水友益14、冨田勝 (慶大・1生命情報研、2政策・
メディア、3環境情報、4Department of Zoology, University of Cambridge)

E-CELLシステムは全細胞規模でのモデリングおよびシミュレーションを目指
して開発されたソフトウェア環境である。E-CELLは細胞系の振る舞いを細胞内
外の分子種間の相互作用を計算することにより模擬する。実験系の空間的構造
を位相的に定義することにより、細胞質や細胞膜、培地等に加え、複数の細胞
で構成される系を実現することも可能である。それぞれのコンパートメントの
状態は物質濃度のベクトルにより表現されるが、これらは様々なGraphical
User Interfaceにより観察および操作が可能である。
E-CELLは細胞内代謝系のみならず、遺伝子制御ネットワークや細胞周期等の
高次の細胞活動を表現することも試みる。モデリング理論、数学的手法、ソフ
トウェアアーキテクチャなど、E-CELLシステムが取り扱う様々な問題やその解
法について議論する。

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E-CELLシステムを用いた転写、翻訳、複製のモデリング

○橋本健太12、三由文彦13、清水友益14、里吉健12、冨田勝13
(慶大・1生命情報研、2政策・メディア、3環境情報、
4Department of Zoology, University of Cambridge)

E-CELLシステムは、分子レベルでの細胞内代謝の包括的シミュレーションを
行なうことを目的としたソフトウェアである。このE-CELLシステムを用いて、
転写、翻訳、DNA複製の分子レベルのモデリングを行なった。
これまでには、E-CELLシステムを用いて自己を維持し続ける仮想の「自活細
胞モデル」にアミノ酸やヌクレオチドを合成する代謝系を組み込んだ細胞のモ
デリングとシミュレーションを行なってきた。これに加えて細胞増殖が可能な
「自活増殖細胞モデル」を構築するためには、DNA複製のモデリングが必須で
あるが、DNA複製と転写は同じ染色体上で行なわれるため、いくつかの衝突が
生じてしまう。この問題を解決するために今回設計した転写翻訳および複製モ
デルの詳細とそれを用いて構築した「自活増殖細胞モデル」のシミュレーショ
ンについて報告し、さらにラムダファージの転写制御ネットワークへの応用に
ついても考察する。

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E-CELLシステムを用いたヒト赤血球のモデリング

○松嶋亮12、川瀬晶子13、渡邊奈生子13、中野寿子13、齋藤佳奈子13、冨田勝13
(慶大・1生命情報研、2政策・メディア、3環境情報)

ヒト赤血球細胞は一つの完結した細胞として、Glycolysis, Nucleotide
Metabolism, Pentose Phosphate Pathway などの代謝系を持つ。実験的に良く
研究されてきた細胞のひとつであり、酵素反応の詳細なパラメータなどの実験
データが様々な研究グループから多数報告されている。
今回我々はE-CELLシステムを用いて、このヒト赤血球細胞をコンピュータ上
に再構築する試みを行なった。E-Cellプロジェクトでは昨年、仮想の「自活細
胞」のモデリングを完成させたが、本研究はE-Cellプロジェクトとしてはじめ
ての実在する細胞のモデリング、シミュレーションである。
ヒト赤血球細胞の33個の代謝物質の濃度と41の酵素反応のキネティックパラ
メータは過去の実験系で得られたデータを参照し、酵素反応式には
reversible/irreversible chemical reactionや Michaelis-Menten mechanism
などの一般的な反応式の他に、ヘキソキナーゼ反応ほかいくつかの化学反応に
は専用の反応式を用いて詳細なモデリングを行なった。こうして構築した赤血
球モデルをE-Cellシステムでシミュレートし、その振る舞いを実験系から得ら
れた実際の赤血球の振る舞いと比較し考察を行なう。

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E-CELLシステムを用いた原核細胞化走性シグナル伝達経路のモデリング

○松崎由理12、齋藤佳奈子13、清水友益4、谷田さくら13、冨田勝13(慶大・
1生命情報研、2政策・メディア、3環境情報、4英国・ケンブリッジ大・動物)

細胞内の化学反応シミュレーション環境 E-Cell System を用いて原核細胞
の化走性を司るシグナル伝達経路をモデル化した。E.coliやS.typhimuriumは、
非常に広い範囲の化走性刺激物質濃度に対して反応すると同時に、その微少な
変化に対しても敏感に反応することが知られている。これは化走性を司る比較
的少数の分子からなるシグナル伝達経路の特性によると考えられているが、そ
の制御機構の全容は未だ未解明である。
この経路に関わる全ての細胞内蛋白質はその配列および構造が解明されてお
り、さらに酵素反応の多くも速度論的に解析されているため、近年ではコンピュー
タ・シミュレーションを用いた研究も盛んになっている。本研究では刺激物質
aspartateの受容体およびChe蛋白質の複合体形成、Che蛋白質群の相互作用に
よるリン酸のフロー、Che蛋白質とモーター蛋白複合体の相互作用による化走
性反応、および受容体のメチル化による順応の機構をE-CELLシステムを用いて
モデル化およびシミュレーションした。今後このモデルを拡大し、TCA回路な
どの代謝経路が化走性に及ぼす影響を解析する予定である。

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- - - - - ここまで


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..zzZZ M. MAEDA
(-.-)// mmaeda@***.***

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