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生命の起源 #882 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
882
DATE
08/27/1998 05:53:23 PM
TITLE
[life:00882] Re: Fractal Makes Life
AUTHOR
kawamura@***.*** (KAWAMURA Kunio)
BODY


早瀬さん,再び分からない点について質問させていただきます.

>>4.現在の生命に移行する前にあった前生物的な物質系は,
>>様々なものが考えられると思います.鉱物でなくてもいいと
>>思うのですがなぜ鉱物を支持しているのですか.
>
>過飽和の溶液が絶えず流入してくるような開放系では、結晶が成長し、
>壊れ、また成長するといった具合に、自己再生が容易に行われます。
>Graham Cairns-Smithはこれを「ゼロテク」といっています。
>あとこれに、進化の可能性、自然選択の仕組みをうまく考案できれば、
>単細胞までの階段を上っていけるだろうというのが、鉱物起原説の発想
>です。
>有機物の自己再生の仕組みは、どうしても複雑なものになるので、
>Graham Cairns-Smithのいう「石組のアーチ」の議論が成り立つのでは
>ないかと思います。(石組みのアーチを組み上げるのに、アーチを最初
>から組んでいくのではなく、石を山形に積み上げてから、中をくりぬい
>ていけば簡単に組み上げていけるという論議)
>「ゼロテク」を持っているだけ鉱物起原説が一歩リードというのが、
>私の「感じ」です。

ゼロテクとは,いわゆる生命が持つような意味の情報によらない.すなわち,結晶構
造はそれを構成する原子の種類と熱力学的な条件がきまると一義的に決定されます.
ゼロテクとはそのような意味だと理解しました(間違っていれば教えて下さい).た
しかに結晶は熱力学的条件が同じであれば常に同じものが生成するという意味で再生
します.しかし,化学反応は結晶に限らずにこのような性質を持っていると言えませ
んか?有機化合物でも同じ条件であれば同じ量と種類の化合物が生成するはずです.
結晶構造を再生と呼ぶならこれも再生と呼べるのではないかと思いますが,いかがで
しょうか.
また石組みの議論については,具体例をあげていただければ理解しやすいと思います
が,どのようなことでしょうか.

>>2.最初の遺伝情報はフラクタルな鉱物によって形成されてい
>>たとお考えなのでしょうか.そうであればフラクタルな鉱物が
>>情報を保持できるということはどういうことなのでしょうか.

>「フラクタル鉱物が、有機物スープから物質をセレクトし、有機物の
>自己再生を引き起こせる物質の組み合わせを見出すことができた」
>つまり第一歩を踏み出せたと仮定します。
>このフラクタル鉱物の表面は、その物質群で覆われます。
>そしてゼロテクで作られる子孫は、その有機物の組み合わせも引き継ぎ
>ます。これは情報を子孫に伝えていることになるでしょう。
>物質群で覆われたフラクタル表面は、有機物スープに比べて、エントロ
>ピーは低くなっているのでしょう。エントロピーが低いということは、
>それだけ情報量が多いということであり、その状態が子孫にも引き継が
>れるのです。
>(書けば書くほど、だんだんボロが出てきそうです。)

結晶が遺伝情報を持つ仕組みはあり得るのかどうかがもっとも興味深いと思います.
そのあたりが明確になれば理論として成り立つのではないかと思いますが,何かいい
アイデアはありませんか.

>>3.フラクタルな鉱物が最初の生命体であったとする場合,
>>現在の生命とどのような相違があるでしょうか.
>>たとえばそれは,代謝だけをするシステムなのか,
>>遺伝情報も持っていたのかなど,説明をお願いします.
>
>最初の生命体は遺伝子を持っていませんし、膜で覆われてもいません。
>しかし「ローテク」ですが自己増殖は可能です。
>有機物スープからの多様な物質の供給をうけ、様々な化学反応をその
>フラクタル表面の穴ぼこ実験室で試し、(その表面で起こると仮定さ
>れている)ハイパーサイクルをより複雑巧妙なものに進化させていく
>ことも可能です。(本当か?)

結晶を構成要素とするハイパーサイクルとはどのような系を考えればいいのでしょう
か.ハイパーサイクルには複製過程が含まれていますが,フラクタル鉱物とそれに関
わる有機物とでハイパーサイクルをお考えであれば紹介をお願いします.

>>1.鉱物が触媒として機能した可能性はあると考えますが,
>>触媒がフラクタルな鉱物である必然性はなんでしょうか.
>

>考えるうちに「粘土説」には、いくつか欠陥があることに気が付きま
>した。
>
>一つ目は証拠が無いことです。
>粘土が「ハイテク」に乗っ取られる寸前の状態では、粘土遺伝子はほ
>とんど「ハイテク」の働きをしたはずです。
>粘土遺伝子の複製に付いても相当複雑なメカニズムを発達させていた
>はずです。
>そのような複雑なメカニズムを、保守的な生物があっさり捨て去るで
>しょうか。普通は、外殻を作る時に利用するなど、何らかの他の用途
>に転用したりするので、粘土遺伝子の痕跡がどこかにあるはずだと思
>います。もちろん土壌中でまだ見つかっていない生物で、そのような
>痕跡を持つ原始的なものがいる可能性はあります。

この部分は別の意味で興味深いと思います.つまり,生体反応は酵素によって制御さ
れているので最終的には遺伝情報によって決定されていると考えることができますが
,もっと基本的な反応で,遺伝情報によって制御されていない化学反応があるかも知
れないし,それらについて役割を調べる必要があると思います.酵素がなくても起こ
る高速反応は溶液内では非常にたくさんありますが,それらの反応はわざわざ酵素に
よって制御しなくても手を加えずに利用されている可能性はあるのではないかと思い
ます.
似たような意味で,原始において鉱物が果たした役割を利用している生物の痕跡は見
つかるかも知れないと思います.

>二つ目は、「ハイテク」に乗っ取られる寸前の複製メカニズムについ
>てです。
>「ハイテク」の複製マシンはまだ未完成で、すべて「ローテク」の遺
>伝子の設計図に従って複製しなければなりません。
>粘土結晶の複製は、機械的に壊れることによって行われます。

鉱物は熱力学的に結晶構造が決定されるのであって,それを生物のもつ複製と同じ意
味を持っていると考えるのは間違いだと思います.もし,鉱物の結晶構造が熱力学的
平衡条件以外の因子によって支配されている実例があるのであればそれは大発見だし
,熱力学も修正されなければならないと思います.もちろん準安定状態などというこ
とはありますが,それらも結晶構造の変化が起こる速度の問題であって熱力学が間違
っていることの証拠ではないと思います.熱力学的に決定される鉱物の構造と言うこ
とを生物における複製と同列に考えるのは,複製という用語の範囲を広げることであ
って,意味がないと思いますがいかがでしょうか.

>するといろいろな疑問が一気に解けたように感じました。
>結晶に情報を書き込んで、その情報に従ってその上に有機物を配置し
>ていくのでは早晩自己複製時に困難が生じてくるであろう。
>結晶表面の有機物はただ上に乗っかっているだけで緩く結晶と結びつ
>いているだけの筈だ。
>だから結晶の遺伝情報は、必要ないのだ。
>結晶に情報を貯えるのではなく、結晶+有機物の関係が淘汰を受けれ
>ば進化が可能だ。

残念ながら,ここの説明はよく分かりませんでした.フラクタル鉱物が最初に必要で
あった要点を概略していただけませんか.

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川村邦男
大阪府立大学 工学部 応用化学科
〒599−8531 大阪府 堺市 学園町1−1
電話    0722−52−1161 内線2356
ファックス 0722−59−3340

Dr. KAWAMURA Kunio
Department of Applied Chemistry
Osaka Prefecture University
Sakai, Osaka 599-8531, NIPPON (JAPAN)
TEL 81-722-52-1161 ext 2356
FAX 81-722-59-3340

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