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前田@生物研です。
まとめレスで失礼します。
●In [life:00756]●
荒さん:
>プロテオームという用語はわりとあやふやなまま雰囲気作りに使われている
>気もします。「ある生物の全タンパク質セット」という意味でよいのでしょ
>うか?
今までにその辺で聞いた情報ではそんな感じで使われているように思います。
飯田さん:
>計算器で自由エネルギーとか計算した結果は,まだ精度が良くないですよね.
>となると,X線結晶構造解析が,ゲノムプロジェクトの配列解読技術に相当
>する中心的技術になるんでしょか?????
荒さん:
>構造解析はたしかに大変ですが、ブレークスルーは期待しています。
これについて今の段階では中心的技術になりにくいと考える理由を述べます。
まずX線解析について、解析そのものよりも解析に耐える結晶を作ることがネック
になっているようです。十分な結晶だけを作るのに数年かかったという人の話を聞
いたことがあります。
次にNMRについて、重元素標識するためには大腸菌において発現系が確立されて
いる必要があります。測定のために純度95%レベル以上のものを濃度として数mg/ml
濃度のサンプルがml単位で必要です。したがって発現系、精製方法がかなり確立し
ていなければ測定は難しいです。
これらの両方について特別な装置が必要であり、しかも数千万以上(おそらくは数
億円)のオーダーの価格です。したがって、どこでも購入できるというものではあ
りません。
逆にこれらのことがクリアできれば立体構造を得ることは、技術的にそう難しくは
ないということです。
●In [life:00759]●
飯田さん:
>Proteome研究では,特定の「現象」と関連づけられた「未知の」
>蛋白質と,「既知の」蛋白質を関連づけるということですか.
おおまかにはそう理解しています。
>1)蛋白質の機能は特定されているが,多様な現象にどう関わって
> いるかは,良くわからない.それで現象との関連づけをする.
>2)現象に関連づけられた蛋白質を,(未知の)遺伝子配列と
> 対応づける.
2)については少し違うと思います。現在のところ未知ではなく既知だと認識して
います。
飯田さん:
>これは,機能未知の遺伝子から,めくらめっぽう蛋白質を合成してみて,
>その機能を調べるという
> 遺伝子配列 → 蛋白質機能
>のストーリーのお話しですね.
これについては、いくつかの問題点があると思います。
まず蛋白質を合成できたとしますね? 合成した蛋白質が果たして天然と同じトポ
ロジーをとっていて活性を保持しているかというとそれは証明できません。(実は、
NMRで構造を決定するときに発現&精製はかなりネックになっていて、ミスフォ
ールドした蛋白ができるため、サンプル作成はこの段階で手間取るようです。)
それとcDNAライブラリをもし全部使って発現系に持っていったとすると、おそらく
は発現量の多い蛋白質だけしかとれないという結果になるでしょう。この辺の発現
量が少なくて重要な蛋白質をどう処理するかは興味あります。
この段階はどうにかしてクリアしたとして、次に機能未知の蛋白質の機能を調べる
のでしょう? 1つずつ全部結合するかどうかスクリーニングするのでしょうか?
ううむ、膨大ですね。
#でも最初にゲノム研究をやるという話を聞いたときも気が遠くなる話だと思った
#ので同じレベルなのかも。(^^;)
●In [life:00760]●
飯田さん:
>遺伝子配列 → 蛋白質 → 特定の構造に結合するリガンドで釣り上げ
>みたいな話しはないでしょうか?
荒さん:
>あります。でも、そのリガンドにつくからたしかに生体内でもそうかという
>と必ずしもそうではありません。蛋白工学的な物性としてはいいんだけど、
>生理現象を反映してるかは確証を得るのは結構大変です。また数多い化学物
>質との結合活性を見るのは結構大変です。まあそうした個々の物質ごとの研
>究が1個1個論文になってるわけなんですが。ただゲノムプロジェクトの展
>望上にはこうしたアッセイを一気にできるようなシステム作りも考えられて
>いると思います。
これ実現したら興味あります。
●再び In [life:00759]●
飯田さん:
>(いずれにしても,)蛋白質の構造自体はproteome研究のターゲットでは
>「ない」わけですね?
おそらくは。
>すると,蛋白質分子構造の進化系統樹みたいのを期待するのは間違い
>で,むしろ従来からの構造主義の流れに期待すべきということ
>でしょうか?
今のところではそうなるのではないかと思います。
では、おやすみなさい。
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MAEDA Miki
(- -) mmaeda@***.***
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