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生命の起源 #512 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
512
DATE
01/14/1998 08:43:02 AM
TITLE
[life:000512] Re: Marine Origins
AUTHOR
"Hajime Mita 三田 肇 筑波大学" <mita@***.***>
BODY


飯田 様 LIFEの皆様
>
> お助けありがとうございます. :)
>
> > 飯田:
> > (# 三田さん助けて下さい.)
>
> 三田さん:
> まず、海底熱水噴出口は、エネルギー勾配の存在、種々の金属イオンの濃縮などがみ
> られ、化学進化の場として有望であり非常に興味深いものです。しかし、注意しなけ
> ればならないのは、原始地球に存在した反応と同じことが一部は起こっているかもし
> れませんが、現在の海底熱水噴出口から湧いている有機物は地球上の生物に起源する
> と考えた方が良いということです。ここで高濃度に存在する有機物が、即、生命の起
> 源物質とは考えない方がよいということです。ないしろ、海底熱水噴出口周辺にはす
> でに多くの高等生物すら存在しているわけですから。
>
> 飯田:
> 検出されたアミノ酸等の有機物質が,自然合成によると証明する必要が
> あるわけですね.確かに,熱水の循環があるために,周囲の生物由来の蛋白質が
> 海水とともに熱い部分へしみこんで行って,分解され,アミノ酸となって吹き出
> している可能性もありえますね.

蛋白質から直接アミノ酸ができなくても、原始地球を再現しているわけではなくその
組成などは異なっていることが考えられます。例えば、アミノ酸が脱炭酸したアミン
や脱アミノしたカルボン酸から再度アミノ酸が合成された場合、原始環境でも現在で
も起こり得る反応だと思いますが、出発物質の組成が異なるため生成するアミノ酸の
組成も大きく変わってしまうでしょう。あるアミノ酸が熱水環境で多くても、それが
原始環境の反映かどうかは難しくなります。

> 次のようなことを調べればわかるような気もします.
> 1.D型アミノ酸の存在
> 熱合成なら,D,Lが同量合成されるはずなので,Dが存在すれば
> 自然に合成されているものと思われます.

熱水中では、非常にラセミ化速度が速いので決め手にはなりません。もっともL体し
かなければ問題外ですが。

> 2.炭素同位体のかたより
> 生体由来の炭素には同位体の偏りが見られると聞いたことがあります.

可能性は高いのですが、途中の反応によっては難しい可能性があります。同位体の偏
りはもっとも基本的には光合成の炭素同化に依存ししていると考えられています。そ
の後の、生合成過程のバリエーションによってばらつきが大きくなったりします。

> 三田さん:
> SH、SSHの関与は、しばらくあまり見なかったと思ったのですが、この1、2年
>  中略..
> たとえば、Liu, Orgelら(Nature 1997, 389, 52 )、Severinら(Nature, 1997, 389,
> 706), Giulio(Biosystems, 1996, 39, 159)など。
>  中略...
> た考えられます。ただし、アセチルCoAは核酸と同じようなものですから、相当に進
> 化した形であると考えた方がよいと思います。アセチルCoAの本質は、CoAにあるので
> はなく、アルキル-SHにあると思います。どのような化合物がどこにどれだ存在す
> るかというデータはすぐ出てきませんが、簡単なものならどこにでもあったでし
>ょう。

原始環境と同じことが現在の地球上のどこかで起こっていると考えるのは無理なので
はないでしょうか。現在の環境から、原始環境の状態を推し量り、そのような場でど
のような反応なら起こり得たか、それを組み合わせていくとどのような形で生命へ達
しうるかを類推していくことしかできないのではないでしょうか。化学進化はシュミ
レーションと言うよりモデル化と言った方が良いような気がしています。例えば、海
底熱水噴出口であれば、高圧、高温の場であるが非常にはやい冷却効果も期待できる
、高濃度の金属イオンが溶存していることなどが重要な因子であり、これらのどれか
あるいは全てがキーになっているのでしょう。系を単純化させていきながら、これら
のどれがどの反応にどう寄与していくか考えていくのが大切だと思っています。

> 飯田:さっそく勉強させていただきます.
> かなり進化した形とお考えということは,ADPやATPもかなり,進化した
> 形だとお考えなわけですね?
> (私は,比較的早期にADPや,ATPが自然合成されただろうと思っていまし
> たので,合成の専門家の三田さんに指摘されて,どきどきしています.)
>
> 進化した形と考えられるのは,ADPやATPの自然合成が非常に困難なことから
> 導かれる帰結と考えてよろしいでしょうか?

何に比べて困難かと言うことですが、メタンチオールやチオ酢酸などに比べればはる
かに困難でしょう。

ADPやATPの自然合成は、核酸合成をしている人は無理だとは言わないでしょう
が、自分から見ればとてつもなく難しいように思います。(ペプチドを作る方が容易
だと思っていますが、この辺は人により見方が分かれるでしょう。でも、楽にできる
とは言わないと思います。)

とりあえず。

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三田 肇 MITA, Hajime

筑波大学化学系宇宙化学研究室(下山研)
305 茨城県つくば市天王台1−1−1
Tel : 0298-53-4134, Fax : 0298-53-6503

Department of Chemistry, University of Tsukuba
Tsukuba, Ibraki 305-8571, NIPPON (Japan)
Tel : +81-298-53-4134, Fax : +81-298-53-6503

E-Mail : mita@***.***
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