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生命の起源 #301 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
301
DATE
10/29/1997 06:45:19 AM
TITLE
[life:000301] Re: E-Cell
AUTHOR
"Kazuhiro Iida 飯田一浩 NEC基礎研究所" <iida@***.***>
BODY


高橋 様  LIFEの皆様


ふう,疲れた...

>飯田 | おっしゃる意味はわかります.でも,システムの構成要素と,それが観察される
> | コンテキストを区別することって,観察という概念を入れた段階で,部分と
> | 全体の議論になりませんか?
>
高橋さん> これは何らかの誤解とおもわれます。
> 上の文のいいたいことは、
> 「系を環境との関係で語るのではなく、また観測者の認識主観との
> 関わりで語るのでもなく、純粋にその系をその作動により記述することで
> 単位体を定義しよう」という一文に集約されます。


飯田:

1.書くことは区別することですから,「書かれたもの」は,松野先生の言葉
  を借りれば鳥観図を書くものの視点,全体の視点にあるように思います.
Varelaは,つまり書けないものを書こうとしているのでないでしょうか?
Varelaの視点は,元々,そこに矛盾があるように思えます.

(書けないものは科学の対象にはなりにくいです.)



> 飯田| まず,次の二つの問いに答えて下さい.
> |
> | Q1.オートポイエシスの見方でなければ説明不可能な現象があるか?
>
高橋さん> この問いはベルタランフィーが一般システム理論を提唱して以来、
> あるいはその先駆者たちがシステム論の基礎となる考え方を表明した時以来
(中略)
> まず、オートポイエーシス論が対象としているのは物理的現象そのもの
> ではありません。そうではなくて、物理的(あるいは非物理的)
> 現象群をひとつのまとまりとして組織化し、生命の有機構成を可能に
> している「しくみ」「なりたち」です。これはライプニッツに始まり..

飯田:
2.もちろん,この辺は理解しております.理解した上で,
  しくみ,成り立ちは,全体の視点で書けますし,

(中略)
> 位相的な空間、特にオートポイエーシス論の場合は産出関係の
> ネットワークにより現前するオートポイエーシス空間での現象に
> 注目し、この空間において一般的に不変な構造を扱うのであって、
> 物理的な時空間において不変な構造を扱うのではありません。


飯田:
3.その空間と実空間が直接には結びついていないという
  理由である事物が autopoietic であると判定するのが難しい
(といいますか,不可能に近い)わけですよね.

それよりは,実空間との対応が良くとれた空間で議論するほうが
いいんではないでしょうか?

(中略)
高橋さん> 望みはもちろんありますが)、「オートポイエシスの見方でなければ
> 説明不可能な現象」はないといえるとおもいます。

飯田: 私もそう思います.


> 飯田:| 私は,部分系とは,全体の中で特定の条件を満たす部分だと思って
> | 形式的に,
> | $ D = {r | Psi[r; ho] >0 } $
> | Dは,システムの存在領域,
> | $Psi$は,検出条件を代表する実関数(言い換えれば観測装置),
> | $ ho$は,全系の振る舞いを決める統計量
> | と書いております.
> | これは,対象物(ここでは$ ho$に由来する物理量の分布)
> | と観察のコンテキスト(ここでは,$Psi[]が代表)を,
> | あからさまに分けることに相当すると思います.
> | でも,この書き方は,明らかに全体と部分という視点に立っています.
>
高橋さん> このような定式化が「現象論」の典型的なものであり、対象系の
> 検出を現象の観測に頼っており、系の動作そのものの説明には触れていません。


飯田:
もちろんです.$ ho(t)$の遷移は,生命を検出する$Psi[]$によって
その遷移が,逆向きに,規定されているだけです.
$ ho(t)$は,実際の生命現象の局所的な遷移を元に,同定と$Psi[]$
による判定を繰り返して漸近して得られます.

autopoiesisのように,生命のダイナミクスが最初に定義されるのでなく,

生命のダイナミクスは未知として,我々のコンセンサスのある概念「生命」
は,どのようなダイナミクスで得られるか?と考えるわけです.

4. autopoiesisの考え方は,研究(ターゲットへの漸近)という行動に
   関して,本末転倒になっていることにもお気づきになるでしょう.

(中略)
> まず前者は系をそれそのものの動作によってのみ説明できていますし、
> 後者はさらに自分自身の位相的配置、構成も自分自身で規定できています。

x + s -> 2 x といった化学反応系
dot{X}(r) = - D $
abla X$といった方程式はそうではないわけですか.


>飯田 | Q2.全体の視点のモデル無しに,オートポイエシス的見地から
> |    定量的デルが書けるか?
>

高橋さん> 上の諸理由により現時点では無理だとおもいます。


飯田:
先に述べた意味で,autopoiesisの見方は,誤っていると思います.

5. 新たな発展を考えられる場合にも,このQ1.Q2.は,試金石に
   なると思います.


飯田@NEC
--
"Life and Evolution '97"
Kazuhiro Iida,
Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation,
34 Miyuki-ga-Oka, Tsukuba, Ibaraki, 305 Japan.
TEL +81(298)50-1142, FAX +81(298)56-6136.


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