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生命の起源 #205 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
205
DATE
10/22/1997 07:29:16 AM
TITLE
[life:000205] A worm's perspective.
AUTHOR
"Kazuhiro Iida 飯田一浩 NEC基礎研究所" <iida@***.***>
BODY


松野先生 LIFEの皆様

本日,松野先生の内部観察に関するご講演を聴講させていただきました.
その感想と併せて,内部観察という視点の意義について議論させて
いただきます.

部分の視点のモデルを物理時間 t によらず書くというのは,自分で書こ
うやろうとすると”非常に”難しい仕事です.先生のお仕事の深さ,イン
パクトの大きさを感じます.

ただ私は,この部分から視点の重要性を認識した上で,なお,古典的な
全体の視点の記述で,部分の視点にたつ説明を十分近似できるという仮説
を持っております.

その線で,今日先生とのやりとりの中で感じたことは,”タイムスケール”
の問題です.「虫の視点」は,限られた精度,限られた範囲で観測し,限
られた通信速度で相互作用するような存在(最も自然な存在)が,その根
にありますが,これを我々が全体の視点でモデル化する時,問題になるの
は,その対象物の持つ有限性,局所性ではなく,むしろ我々がフレキシブ
ルなタイムスケールを扱う方法を知らないという理由によると思います.

先生のおっしゃる物理時間tは,特定の長さで区切られた時間と解釈いた
しました.我々が,釣り合いの方程式を書くタイムスケールは,同期とり
の信号が伝搬する現象を書く時のそれとは明らかに異なります.
にもかかわらず,自然界の存在は無数のタイムスケールで成り立つ法則に
従っている.そこに矛盾,誤差が生じる.そういうことではないでしょう
か?

このように考えると,その長さが可変なタイムスケールを導入することが,
虫の視点のコンセプトをくみ取ったモデルを作るのに不可欠に思えます.

それをどのように書くか検討がつきませんが,この問題と,統計力学の永
遠のテーマ,第一原理からマクロな振る舞いを導くという問題がとても似
ているように思えます.もちろん統計力学は,「あからさまに」複数のタ
イムスケールを使うので,虫の視点の記述としては不十分かもしれません.
しかし,私は,とりあえず,このようなあからさまな書き方でもって始め
てみようという立場です.これは,非平衡統計力学の書き方を採用する
理由の一つです.

このような近似的書き方でどのような不都合が生じるでしょうか?
その辺が知りたいところです.

(トロントから帰られた直後のレクチャーにもかかわらず,強い印象の
残るご講演でした.あらためて,ありがとうございます.)

飯田@NEC
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"Life and Evolution '97"
Kazuhiro Iida,
Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation,
34 Miyuki-ga-Oka, Tsukuba, Ibaraki, 305 Japan.
TEL +81(298)50-1142, FAX +81(298)56-6136.


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