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生命の起源 #1709 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
1709
DATE
04/25/2006 00:04:14 AM
TITLE
[life:001709] Re: 比喩 Windows OS
AUTHOR
Koichi Takahashi <ktakahashi74@***.***>
BODY


物理的基盤や異なる歴史的経緯を経てきた、違う種類の系の間に
成立するアナロジーや相同といったものを用いることが有益である
文脈として、以下の二つのものが思いつきます。

1 違う種類の系との比較を通して相同性、相違性などを列挙し、
  そのひとつひとつを吟味することで、個々の系の機能や
  なりたちに関してこれまでとは違った視点を通してより
  深い理解を目指す。
2 ある現象論的階層を議論、比較の対象としながらも、それらの系
  の間には現象論に直接依存しない何らかの本質的な共通性が
  存在し、それらを包含するより高次の概念に到達することを目指す。
  あるいはそのような過程を経て過去に得られた概念に最終的に
  帰着することを意図として現象論を展開する。


僕が「Windows と細胞との比喩が最も近道であるかどうかはわからない」
と述べたのは、おもに2の文脈からです。個人的な興味がこちらに
かたよっているため意図せず説明不足となってしまい申し訳ありま
せんでした。

2の文脈で、では何にたいしての「近道」を探しているのかというと、
僕がよく使う例はマトゥラーナとヴァレラのオートポイエーシス理論です。
彼ら自身でこれを全て述べたわけではありませんが、この理論の周辺で
展開された研究では、主に代謝作用を通して、細胞と、神経系、多細胞系、
社会システム、地球というシステムなどが同じクラスの系であり、統一の枠組
で現象論を議論できる可能性が指摘されています。
マトゥラーナ・ヴァレラの主張はオートポイエーシス作用をもって生命の
定義としてよいということですから、この議論の平面上である系、たとえば
社会システム、に成り立つなんらかの観察あるいは知見は、直接間接
どちらにせよ細胞にも成り立つということになり、オートポイエーシス系
として議論できる全ての系へのより深い理解につながるかもしれません。


1の文脈ではOSと細胞がおもいもよらず面白い比較対象ということがわかり
大変楽しませていただいています。ですから、OSと細胞との間でも
意味のある比較は可能であり、それが両者の機能やはたらきへ
の深い理解の契機となることは十二分にありえますし、これがこのスレッド
での議論の主要な目的であると認識しています。

もちろん、ブラウン運動のみではなくあらゆる種類の物理階層でみられる
ランジュバン方程式の普遍性とか、拡散や情報理論でもそうですけども、
違った概念に基づけば違った比喩が成り立ちます。しかしこれらは
系の機能や構造を扱う理論(システム論)というよりは現象論の
抽象化、記述に根ざした体系の意味合いのほうが強いとおもわれますから、
OSと細胞との間の比喩でどの程度まで意味をつきつめられるかは確信が
ありません。いや、もしかしたらOSと細胞にもなんらかの共通のシステム論
が成立するのかもしれません。しかし、これまでの議論ではこの点には触れられ
ていなかったと思います。

個人的な意見として、工学系と生命系との比較が、2の文脈下
ではどこまで普遍的なものに到達できるのか自体は僕個人としては悲観的に
考えている、というのがこれまでLIFEで表明させていただいている事
(たとえば下で引用いただきました部分など)の真意で、議論の有用性そのもの
を否定しているわけではありません。


高橋




> 高橋様 LIFEの皆様
>
> 別件
>
>> 工学のアナロジーで語られた生物あるいは細胞のモデル
>> が、本当に我々が最終的に帰着すべきところなのかという
>> ことです。従来の人工物は必ず設計図がある(だれかの頭の中
>
> 飯田:
> まあ,システムの理解ということで最初は工学のアナロジーでも
> いいんじゃないでしょうか.たぶん,どこかに共通の部分があるから
> 予測性のあるモデルが作れる(作れた)のです,
>
> 次の段階では,もう対象は確定したわけですから,その
> 対象を,アナロジーなしに注目する量, エネルギーでも
> 物質の量でもそれが担う情報でもいいですが,それらがどのように
> 発展するかを方程式に書いてみたりする.すると,全く
> 同じ構成の方程式で書ける別の現象まで見つかったりする.
> また次の段階では,逆に個々のステップを詳細に見てみる.
> すると,式の上では同じだったものが,式に含まれない部分まで
> 見てみると全く別の機構で実現されていたりするのを発見する.
> これ,システムのトップダウン方向の理解ですね.
>
> 伝統ある生物学生化学はボトムアップ方向でやってきて成功して
> きたわけですが,総合の段階にくると,やっぱり「まあしょうがない
> この系は受容システムと呼ぼう」とか,免疫システム,運動システム
> と呼ぼうとかいうことにならざるをえない.そういう事実もあります.
>
>
>> つまり、酵素はその動作の特徴時間スケールではその近傍の分子としか
>> 相互作用できないかわりに多数コピーが存在しそれぞれ分子運動に
>> より次々に分子の変換をしていきますが、OSでは多数スレッドを
>> 利用するようなプログラムは別ですが基本的にインスタンスは
>
> 逆に,上のような物理基盤の異なる機構が,適切な粗視化レベルで
> 見ると,同じ情報の流れを形成し,同じ時間発展をするとしたら,
> そのほうが面白くないですか? :)
> 例えば(出た!比喩だ)水や油,さらには電子と,構成要素や微視的な
> 相互作用は違っても全て同じ流体の法則に従い,同じ拡散法則に従うように,
> より微視的なレベルでは,異なっていても,より大きなスケールのシステム
> では要素が異なっても共通の振る舞いが見られたりする.
> 「数」だの運動の「乱雑さ」などといった確かに微視的レベルでも共通
> だったのだけれども,他の特徴に隠れて見えていなかった共通な性質が
> 強烈に現れたりする.
> さらには,それら共通の振る舞いが出現するのに必要な条件が,これまた
> 共通だったりする.それも,「いと おかし」というわけで,
> windowsと細胞なのでした.
>
> 飯田一浩
>
>
>
>

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