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生命の起源 #1391 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
1391
DATE
05/29/2002 12:43:32 AM
TITLE
[life:001391] 0と1の数が保存されるメリット
AUTHOR
Kosaku Inagaki <inagaki@***.***>
BODY


飯田 先生

昨日述べました「順列組み合わせ」の議論は、情報屋さんでも
なかなかご理解いただけないことが多いです。当たり前の計算の
つもりですが、常識に反するからでしょうか。「ここを削らないと
論文を採録しない」と査読者から無理やり削らされたことがあります。

ところで:
> 2)0と1の数が保存されていることは,化学的な素子のモデルとしては面白い
> ですが,情報処理的なメリットは無いように思えました.

これには「拘束条件(constraint)」の導入という、人工知能分野で
常套的に行われているトリックが潜んでいます。人工知能の分野では
「強力な方法」とみなされています。なぜ?と他の分野の方は
不思議がられることが多いです。

拘束条件を余分に付け加えると、「可能な順列組み合わせの数が
劇的に減る」という効果があります。普通の順列組み合わせでは
天文学的な数になるところを、ほんの少し拘束条件を入れるだけで、
片手で数えられる数に減ったりします。

たとえば、下記の論文(見づらいコピーですみません)では、
「物質保存」と「左右対称」という2つの条件を入れて、
セルラーオートマトンのセルを設計しています。(自分でも
読み返してみないと、細部は忘れましたが)3入力3出力の
セルの場合、なんら拘束条件がない場合、1.678×10^7通りの
セルがありえます。ところが、2条件を入れると、たった1種の
セルに絞られます(さらに「計算万能」という条件も入れているようです)。
そしてそのセルを使ったオートマトンは、ウルフラム型のカオスの縁に
似た現象を起こすとともに、カウフマン型のカオスの縁の性質をも
もっています。

http://inagaki1.kuis.kyoto-u.ac.jp/articles/WolframKauffman.html
(ややこしいので読まれなくて結構です)

物質保存の条件を入れないと、こんな特殊な例はみつけにくい
でしょうし、カウフマン型の性質を数学的に証明するのが困難
だったかもしれません。その点では小さな成功の1例です。
(ただ、ごく平凡で稚拙なトリックに見えるので、これで理論を
考えると言い始めたときには、えらく評判が悪かったです)

進化を考える際、情報屋としての考え方は、このように物理的世界の
拘束条件などを導入して、順列組み合わせの数をうんと減らし、
生命誕生の確率をどこまで上げられるか、というアイデアが
基本かと思っています。

物質保存は、考えうる拘束条件のうちの1例ですし、まだまだ
パズルにすぎません。なお、知能の場合には、別の拘束条件を
使わないといけないのですが、ともかくも生命を合わせて
ごく稚拙で単純な段階です。

数学理論の大きな欠点:
 モデルが極度に単純でないと、何一つ証明できないのが普通です。

〒606-8501
京都市左京区吉田本町
京都大学 情報学研究科
稲垣 耕作
E-mail: inagaki@***.***
URL: http://inagaki1.kuis.kyoto-u.ac.jp
TEL/FAX 075-753-5978

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