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生命の起源 #995 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
995
DATE
02/18/1999 10:25:53 AM
TITLE
[life:00995] 返
AUTHOR
"Kauhiro Iida" <iidakek@***.***>
BODY


平藤様 LIFEの皆様

おはようございます.

1.間接度について

飯田:> >で,伝達される情報の複雑度を示す簡単な指標が必要.例えば,情報の間
接度
> >といった物差しはどうかということになってました.
平藤さん:
> 「間接度」は反応時の下流からの反作用を減らすための機構(物理的な相互作用
> を非対称にする)の強さとして,非常におもしろい指標だと思います。システム
> 論的には,間接度を上げるのはコストアップに繋がるため,「なぜわざわざ間接
> 度を上げているのか?」は重要な要素です.

飯田:
私は,とりあえずセントラルドグマ的にDNAから酵素までの流れをイメージして
間接度という言葉を使っていましたが,起原近傍での情報の流れをイメージする
と平藤さんご指摘のように,下流から上流へ情報への直接的フィードバックが
あり得ますね.

反作用を減らすとは,そのフィードバックを減らして(1)流れの方向を維持する
(2)元の情報を変化しにくく保つことですよね?
(面白い視点なので,ご一緒にもう少しつっこんで考察してみましょう.:)


2.選択の表現について.

>飯田: >とりあえずの(不十分な)たたき台としては,
> >選択前の物質分布ρと選択後の物質分布ρ'の相対エントロピーでしょうか.
> >-∑ ρ' ln ρ'/ρ が大きければ,分布になんか違いがあることがわかりま
> >す.

平藤さん:
> 情報理論的には情報量の変化分(相互情報量)の方が直感的に理解しやすい指標
> です。

飯田:相互情報量は,2つの情報源の従属度の指標なので,選択を表現するには
あまり向かないと思います.

ご存知のように,情報源A,B間の相互情報量Iは
I(A,B)=H(A)−H(A|B)  
H(A)=-∑P(α)logP(α)
H(A|B)は,条件付きエントロピー -∑P(α∩β)logP(α|β)
で,A,Bが独立の時0になります.
#誤解のないように注意しておきますが,上は情報理論のエントロピー
#物質の分布に関するものは統計力学でいうエントロピーです.
#それで,物質分布の相対エントロピーとか相互エントロピーという
#場合は,新たに定義していることになります.
それで,


平藤さん:
> 物質分布の情報量を定義するには,全物質の総量を1に規格化した濃度を確率と
>見なせば良さそうです。

飯田:
そういう方法もありますが,物質間の変換があり,系からの散逸(淘汰)があ
り,..と
いった系なので,上の方法は問題が多いと思います.
統計力学(Gibbs統計)でいきなり定義するのが良いのでは?

平藤さん:
>しかし,1分子のDNAからの情報の流れを追うには
> 濃度のようなマクロな量が使えません。分子機械と分子機械の間のアナログ的な
> 会話(量子論的相互作用)を情報量としてどう表現するか? なかなか奥が深そ
> うな問題で,しばらくはまってしまいそうです。

飯田:
うーん,それは確かに難しいですね.決まった物質の分布に関する情報は統計力学
でも扱えそうですが,一つの分子が持っている形や各部の運動状態という情報は
どうしたもんだろ.....
DNAみたいな巨大分子の場合,熱力的エントロピーなんて計算するの大変そう.
塩基配列に関するエントロピーなら簡単に計算できるのに....


ちなみに,伏見先生はアイゲンらの方法を引用して遷移行列の対角成分で
淘汰を表現しておられました.
{伏見譲,1992,「進化とエントロピー」,別冊数理科学:エントロピーそのさ
まざま
な顔つき,サイエンス社}

アイゲンらの方法では,情報量やエントロピーといった指標は扱っていません.
選択は,ミクロの方程式(除去)そのもので表現しています.

今私たちは情報量や複雑さといったものを導入して淘汰を表現しようと
しているわけですが,これは種々のミクロな淘汰を共通に扱えて,結果
的に何が,「どれだけ」変わったのかを一目で把握するマクロな表現,
指標を探しているということですね.

伏見先生は上で,熱力学とのアナロジーで淘汰ポテンシャル(淘汰地形)
という概念を提出しておられます.この概念は,イメージしやすいですが,
その時点では,このポテンシャルがうまく表現できてませんでした.
定式化できたか尋ねてみたいと思います.


飯田@NEC基礎研究所

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