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生命の起源 #957 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
957
DATE
12/24/1998 11:22:50 PM
TITLE
[life:00957] Re: Nature article: Hypercycles, BIF
AUTHOR
Yohei Yokobayashi <yohei@***.***>
BODY


横林@まだクリスマスイブのサンディエゴです。

On Fri, 25 Dec 1998 14:22:46 +0900
Kazuhiro Iida <iidakek@***.***> wrote:

> 上で横林さんは,自己複製という際に伝達されるという情報について視点を提供
> されています.まずKiedrowskiの実験で(1)DNAの塩基の一次元配列 = 情
> 報という見方,(2)ペプチドの側鎖の化学性状と立体構造 = 情報という見
> 方です.
> 今回参加した研究会で埼玉大学の伏見先生は,(3)選択の結果 = 情報とい
> うアイデアを出されました.(3)については,特に物質に依存しません.
>
> 先に,自己触媒反応と自己複製の違いについておたずねしましたが,横林さん
> は,そこで情報がコピーされるのが自己複製と言われました.私も賛成です.と
> すれば(2)の見方ですと,自己触媒反応と自己複製の違いが不明瞭です.
> (1)の視点は,物質が特定されているという意味で明快ですが,果たして,全
> くランダムな配列や極端に短い配列(オリゴヌクレオチドなど)にも情報を見い
> だせるのかが不明です.(3)の視点では,情報の意味が環境との関係で定義さ
> れています.DNAの塩基配列でいえば,単なるランダムな配列は情報を担っては
> おらず,その配列が環境によって選択された結果,配列に生じる偏りを情報と見
> ます.

一つ重要な要素を加え忘れました。自己複製には分子認識を伴った
情報伝達が絶対必要だということです。分子認識を伴わない複製は
単なる自己触媒です。ここで話を分子レベルでの自己複製系に限れ
ば、我々の言う「情報」とは単なる分子構造だということになりま
す。その分子の化学的性質や分子認識能などの「表現形」は分子構
造で一義的に決まるので、(2)のような定義は結果であって情報
の本質はペプチドの一次配列にあると考えて良いと思います。

・・・書き方が逆のような気がしますが、分子構造を情報とすると
分子認識を伴わない複製は情報伝達なんてありえないというのは、
お解りいただけるでしょうか。

これは単なる定義の問題なのかもしれませんが、以上の立場から、
(3)の視点は賛成できません。ランダムな配列でも分子それぞれ
が情報を持っているし、環境によって選択された結果は単にそれら
の情報(遺伝子形)がその環境に適した表現形の情報を持っていた
というだけのことです。「どういう分子構造が選択されたか」とい
うことを情報というのなら別ですが私は「どういう情報が選択され
たか」というように解釈します。

> 私は(3)の見方に賛成です.自己触媒反応では立体構造や配列はコピーされま
> すが同じものしかできません.しかし自己複製系ではバラエティーが自然に生
> じ,それらが環境によって選択されることで,徐々に別のバラエティーが作られ
> てゆく点が,単なる自己触媒系と異なるように思います.

上で述べたように同じ物ができる際に分子認識がなければいくら
同じ物ができても情報伝達はありません。そもそも同じ物しかで
きない系では同じ物ができて当たり前です(i,eミセル)逆に分子
認識があれば同じ物ができなくても情報伝達はありえます。結果
的に同じ物が選択的に(必ずしも絶対的ではなく)できればそれ
は自己複製系です。

> > #専門紙に投稿されたのでご存知ないと思いますが、
> > アラニン変異体は自己複製はしないものの、無変異体
> > の生成を触媒する、逆に無変異体は自己複製はするが
> > アラニン変異体の生成は触媒しないという、変異体の
> > 生成が抑制される系も発表しています。
>
> ここでは,人為的に作られた変異体が使われていますから,「(3)の意味で
> は」やはり触媒系に思えますが,自然に変異ペプチドが形成されるような系にな
> ると自己複製系と言えるのではないでしょうか.LIFEの皆さんはどう考えま
> すか?

もう少し具体的に説明させていただくと:

3つのペプチドE,Ea,Nというペプチドがあって以下のように2種類
のペプチドが生成される可能性があります。

E + N --> EN
Ea + N --> EaN

ここでENは自己複製をしますが、EaNはしません。またENはEaNの
生成を触媒しませんが、EaNはENの生成を触媒します。

したがって、3つのフラグメントを試験管にいれてやると最初は
バックグランド反応でEN,EaNの両方が生成しますが、すぐにENは
自己複製するため、さらに(バックグランドで生成した)EaNは
ENの生成を助けるためENが共通の資源であるNを独占するような
形になり系の中の大部分を占めるようになります。

これは単純な系ですが、2つのペプチドが生成しうる系である情
報がもうひとつの情報に比べて選択的に伝達される例だと考えて
います。

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Yohei Yokobayashi
yohei@***.***

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