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生命の起源 #956 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
956
DATE
12/25/1998 02:22:46 PM
TITLE
[life:00956] Re: Nature article: Hypercycles, BIF
AUTHOR
Kazuhiro Iida <iidakek@***.***>
BODY


横林様 LIFEの皆様

「生命の起原−その物理的側面−」研究会でしばらく空けてました.(内容につ
いては,後日紹介いたします.:)


横林さん:
> von KiedrowskiのDNAを用いた化学的複製系ではDNA配列
> が伝達される情報であるということは明らかですよね。
> ペプチドの場合はもっと緩い意味での配列情報が伝達さ
> れると考えています。例えばcoiled-coilの疎水界面の
> ロイシンの一つをアラニンに変異させると、アラニン変
> 異体は全く自己複製しません。また疎水界面の両脇にあ
> るアミノ酸(e, g位置)はinter-helicalなイオン相互
> 作用があることが知られ、その電荷の組み合わせによる
> 相互作用、反発なども触媒、自己触媒反応の選択性に影
> 響してきます。一方で、ミセルの場合は反応時にそのよ
> うな分子認識が発生しません。極端な話、疎水部分のア
> ルキル鎖なんて、いくつ炭素があってもよいわけです。


飯田:

上で横林さんは,自己複製という際に伝達されるという情報について視点を提供
されています.まずKiedrowskiの実験で(1)DNAの塩基の一次元配列 = 情
報という見方,(2)ペプチドの側鎖の化学性状と立体構造 = 情報という見
方です.
今回参加した研究会で埼玉大学の伏見先生は,(3)選択の結果 = 情報とい
うアイデアを出されました.(3)については,特に物質に依存しません.

先に,自己触媒反応と自己複製の違いについておたずねしましたが,横林さん
は,そこで情報がコピーされるのが自己複製と言われました.私も賛成です.と
すれば(2)の見方ですと,自己触媒反応と自己複製の違いが不明瞭です.
(1)の視点は,物質が特定されているという意味で明快ですが,果たして,全
くランダムな配列や極端に短い配列(オリゴヌクレオチドなど)にも情報を見い
だせるのかが不明です.(3)の視点では,情報の意味が環境との関係で定義さ
れています.DNAの塩基配列でいえば,単なるランダムな配列は情報を担っては
おらず,その配列が環境によって選択された結果,配列に生じる偏りを情報と見
ます.

私は(3)の見方に賛成です.自己触媒反応では立体構造や配列はコピーされま
すが同じものしかできません.しかし自己複製系ではバラエティーが自然に生
じ,それらが環境によって選択されることで,徐々に別のバラエティーが作られ
てゆく点が,単なる自己触媒系と異なるように思います.


横林さん:
> #専門紙に投稿されたのでご存知ないと思いますが、
> アラニン変異体は自己複製はしないものの、無変異体
> の生成を触媒する、逆に無変異体は自己複製はするが
> アラニン変異体の生成は触媒しないという、変異体の
> 生成が抑制される系も発表しています。


ここでは,人為的に作られた変異体が使われていますから,「(3)の意味で
は」やはり触媒系に思えますが,自然に変異ペプチドが形成されるような系にな
ると自己複製系と言えるのではないでしょうか.LIFEの皆さんはどう考えま
すか?


飯田@NEC基礎研究所
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Kazuhiro Iida, "Life and Evolution '98 --> "
Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation,
34 Miyuki-ga-Oka, Tsukuba, Ibaraki, 305-8501 Japan.
Phone +81(298)50-1142, Facsimile +81(298)56-6136.
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