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生命の起源 #880 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
880
DATE
08/27/1998 04:20:26 PM
TITLE
[life:00880] Re: Fractal Makes Life
AUTHOR
"Hayase Tomoaki" <hayase@***.***>
BODY


川村様、LIFEの皆様、
早瀬です。

長文にて失礼します。
答えやすいものから答えていきます。

>4.現在の生命に移行する前にあった前生物的な物質系は,
>様々なものが考えられると思います.鉱物でなくてもいいと
>思うのですがなぜ鉱物を支持しているのですか.

過飽和の溶液が絶えず流入してくるような開放系では、結晶が成長し、
壊れ、また成長するといった具合に、自己再生が容易に行われます。
Graham Cairns-Smithはこれを「ゼロテク」といっています。
あとこれに、進化の可能性、自然選択の仕組みをうまく考案できれば、
単細胞までの階段を上っていけるだろうというのが、鉱物起原説の発想
です。

コアセルベードやマリグラヌールなどの説では、細胞に似た入れ物が、
ある条件では無生物的に生成できるので、
あとこれに自己再生の仕組みをうまく組み込めれば、単細胞になるであ
ろうという発想です。

生命の起原は最終的には確率の問題といえるでしょう。
どれでも起こる可能性はあったが、どれが一番起こりやすいのかという
議論に最終的になると思います。
有機物の自己再生の仕組みは、どうしても複雑なものになるので、
Graham Cairns-Smithのいう「石組のアーチ」の議論が成り立つのでは
ないかと思います。(石組みのアーチを組み上げるのに、アーチを最初
から組んでいくのではなく、石を山形に積み上げてから、中をくりぬい
ていけば簡単に組み上げていけるという論議)
「ゼロテク」を持っているだけ鉱物起原説が一歩リードというのが、
私の「感じ」です。

>2.最初の遺伝情報はフラクタルな鉱物によって形成されてい
>たとお考えなのでしょうか.そうであればフラクタルな鉱物が
>情報を保持できるということはどういうことなのでしょうか.

(この部分具体的な物質名が思い浮かばないので、非常に説得力
無しです。具体的な物質名をどうか問わないで下さい。)

「フラクタル鉱物が、有機物スープから物質をセレクトし、有機物の
自己再生を引き起こせる物質の組み合わせを見出すことができた」
つまり第一歩を踏み出せたと仮定します。
このフラクタル鉱物の表面は、その物質群で覆われます。
そしてゼロテクで作られる子孫は、その有機物の組み合わせも引き継ぎ
ます。これは情報を子孫に伝えていることになるでしょう。
物質群で覆われたフラクタル表面は、有機物スープに比べて、エントロ
ピーは低くなっているのでしょう。エントロピーが低いということは、
それだけ情報量が多いということであり、その状態が子孫にも引き継が
れるのです。
(書けば書くほど、だんだんボロが出てきそうです。)

>3.フラクタルな鉱物が最初の生命体であったとする場合,
>現在の生命とどのような相違があるでしょうか.
>たとえばそれは,代謝だけをするシステムなのか,
>遺伝情報も持っていたのかなど,説明をお願いします.

最初の生命体は遺伝子を持っていませんし、膜で覆われてもいません。
しかし「ローテク」ですが自己増殖は可能です。
有機物スープからの多様な物質の供給をうけ、様々な化学反応をその
フラクタル表面の穴ぼこ実験室で試し、(その表面で起こると仮定さ
れている)ハイパーサイクルをより複雑巧妙なものに進化させていく
ことも可能です。(本当か?)

ここで想像力を飛躍させます。
フラクタル鉱物を淡水に対する溶解から守るのにもっとも効果がある
と思われるのは、それを膜で覆うことだと思います。
従ってハイパーサイクルはまず最初に膜を発明したでしょう。
しかし膜を通して外界から物質をやり取りする仕組みが無いので、
膜はフラクタル表面をきっちりと覆うようなものではなくあちこち破
れていて、フラクタル表面をフラクタル模様で覆うようなものだった
でしょう。(私はフラクタルが好きです。)
膜の端っこで外界と物質をやり取りするのです。
そしてさらに飛躍すれば、膜の下に有機物をため込み穴ぼこ実験室で
RNAやそれから蛋白質を作る仕組みなども発見しついに遺伝子が完
成し・・・などとなる予定です。
(この辺は眉に唾して聞き流して下さい。)

>1.鉱物が触媒として機能した可能性はあると考えますが,
>触媒がフラクタルな鉱物である必然性はなんでしょうか.

以下は、私がFMLを思い付いた経緯です。

私は10年ほど前 Graham Cairns-Smithの「生命の起源を解く七つの鍵」
という本を読んで、「粘土説」のファンになりました。
以来、折にふれ読み返し色々、生命の起源について考えてきました。
考えるうちに「粘土説」には、いくつか欠陥があることに気が付きま
した。

一つ目は証拠が無いことです。
粘土が「ハイテク」に乗っ取られる寸前の状態では、粘土遺伝子はほ
とんど「ハイテク」の働きをしたはずです。
粘土遺伝子の複製に付いても相当複雑なメカニズムを発達させていた
はずです。
そのような複雑なメカニズムを、保守的な生物があっさり捨て去るで
しょうか。普通は、外殻を作る時に利用するなど、何らかの他の用途
に転用したりするので、粘土遺伝子の痕跡がどこかにあるはずだと思
います。もちろん土壌中でまだ見つかっていない生物で、そのような
痕跡を持つ原始的なものがいる可能性はあります。

二つ目は、「ハイテク」に乗っ取られる寸前の複製メカニズムについ
てです。
「ハイテク」の複製マシンはまだ未完成で、すべて「ローテク」の遺
伝子の設計図に従って複製しなければなりません。
粘土結晶の複製は、機械的に壊れることによって行われます。
新しい結晶面は、未完成マシンの乗っている結晶面から相当離れた所
にできます。
マシンの部品は拡散によって新しい面に運ばれるのでしょう。
完成間近のマシンは部品も多いはずです。
どのようにして、結晶面の設計図どおりうまく組みあがっていくので
しょう。一体粘土遺伝子は、どんな複製メカニズムを発達させたので
しょうか。
Graham Cairns-Smithはトランプカードのタワーのような実験室を想像
したりしているようですが、「生命の起源を解く七つの鍵」の前半の
ホームズばりの推理に比べると、少し飛躍があるように思います。

この複製の機構をいろいろ考えている時に、ふと壊れた結晶片が元の
結晶と同じ構造を持つということは、フラクタルの自己相似性だと気
がつきました。自己相似性は、コッホ曲線などで数学ではごくおなじ
みのものです。
結晶が析出する時、フラクタルな構造をとることもかなり一般的です。

するといろいろな疑問が一気に解けたように感じました。
結晶に情報を書き込んで、その情報に従ってその上に有機物を配置し
ていくのでは早晩自己複製時に困難が生じてくるであろう。
結晶表面の有機物はただ上に乗っかっているだけで緩く結晶と結びつ
いているだけの筈だ。
だから結晶の遺伝情報は、必要ないのだ。
結晶に情報を貯えるのではなく、結晶+有機物の関係が淘汰を受けれ
ば進化が可能だ。
結晶表面はある程度複雑だから、ハイパーサイクルを作れそうだ。
増殖機構は、ただ壊れるだけなので非常にローテクですむ。
結晶は粘土である必要はない。ローテク遺伝子は必要ない。

フラクタルな結晶鉱物が鉱物資源の獲得を目指し生き残りをかけて
生存競争を繰り広げる。
その鉱物は有機スープの有機物を利用することを覚える。
そのテクニックを変化発展させることは、有機物スープの多様性に
よって保証される。

これがFMLの発想なのです。
だから最初にフラクタルな結晶鉱物が必要だったのです。


早瀬 友秋  hayase@***.***
http://www.pluto.dti.ne.jp/~hayase/
(この記事の元となっているアイデアは上のURLにのってます)


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