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生命の起源 #862 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
862
DATE
08/20/1998 06:39:01 PM
TITLE
[life:00862] Re: The day of origin
AUTHOR
tomo@***.*** (Tomohiko Yamaguchi)
BODY


飯田様、LIFEの皆様、山口智彦@物質研です。

あやふやだった点を確認していただき感謝します。
以下の私のコメントは1冊の本のみに基づいていて、まだこのような場に
出す段階ではないと思うのですが、取りあえずのご返信ということにさ
せて頂きます。訂正・補足を宜しくお願いします。

>山口様
>
>お昼に話した生命の最初の痕跡の件です.:)
>
>形態的な痕跡だけでは,類似の自然物が存在するので
>判定が難しく,何かの生化学的痕跡が同時に存在せねば
>「納得いかんなー」と思うわけです.
−そうですね...。
 どのような痕跡があればよしとしましょうか?
 有機物を含むマイクロマンガンノジュールが33億年前の縞状鉄鉱床
 から発見されているようで、有機物の存在を生命活動の痕跡として考
 える立場もあるそうです。でも慎重に慎重に...。

>
>一番古い細菌の痕跡は,オーストラリアピルバラ地塊のノースポール
>産の35億年前のチャートに含まれるとなっていて,藍藻の形態に
>そっくりだそうですが,生化学的な痕跡もあったという話しは聞い
>ていません.
−形態は本当に藻類そっくりです。
>
>そのピルバラでストロマトライト(藍藻の集団を基に形成される岩石)
>が見つかったという報告は,東大の磯崎先生の研究によれば,ストロ
>マトライトでなく,類似の模様を持つ変性岩だったそうです.
−ノースポール周辺は当時海の底だったようですね(枕状溶岩の存在)。

>藍藻だとすると,酸素を放出しているはずですが,大気中の酸素が
>明瞭に増加した時期は,23億年?25億年前と推定されています.
>(これは,3価の酸化鉄で赤くなった赤色砂岩層がそこから17億年
>前ぐらいまで存在するためだそうです.)
−確かに、オーストラリアはハマースレイの鉄鉱石地層には薄い酸化鉄の
 層が幾重にも積層した様子が認められるということですが、一方、
 グリーンランドのイアス地方で発見された世界最古の縞状鉄鉱層の年代
 は約38億年前に遡るそうです。つまり酸素は38億年前に、何らかの
 理由(生物由来であると良いですね)で、少なくとも局所的には出現し
 ていたと考えられるような気がします。この「ローカル性」が重要では
 ないかとも思います。蛇足ながら、イアスの最古の地層は褶曲性の縞模
 様の堆積岩 − つまり38億年前の地表にはすでに陸と海があり、岩
 石を運ぶ水の流れ(土石流?)も存在したということになります。
>
>それで,私は現状では生命の起原は「25億年前」までは遡れるのか
>なーと思います.
−地球全体の酸素濃度が上昇したのはおそらくご指摘のとおり25億年前
 と考えて良いと思います。但し、一気に今のように酸素濃度21%になっ
 た訳ではないようで、20億年前の大気の酸素は現在の高々1%に過ぎな
 いという計算結果もあるようです。

>
>昨今の話しでは,40億年前には最初の生命が誕生したに違いないとか
>いう話しがでてきて,とても勇気づけられるのですが,眉につばを
>つけて聞いています.何しろ,私は地質学者ではないのがつらいところ.

 − 以上の私のコメントは、松井孝典氏(東大理・惑星科学専攻)の
 『地球46億年の孤独 − ガイア仮説を越えて』(徳間書店)を参照
 したものです。一般向けのエッセイにも似た解説書ですが、地球大気に
 関して私の知りたかったことが書かれていると感じました。

 松井孝典氏は大陸の成長発展という議論も展開しています。
 原始大気中の高濃度の二酸化炭素や一酸化炭素の濃度が低減する過程
 は大陸の形成過程と不可分ではあり得ないということです。化学進化
 や生化学進化を考える上では、生命起原のゆりかごであると考えられ
 ている渚や波打ちぎわの時間発展についても注意深く検討する必要が
 あるかと思っています。大きな大陸が形成されたのが19億年前、そ
 の大陸が分裂したのが6億年前、だとすれば生命の起原に関わる頃の
 海と陸の関係はどのようなものだったのでしょう。小さな陸地が軽石
 のように熱い海に浮かんでいるというイメージに近いかもしれません。 
 なお、科研費研究の中に「全地球史解読」(代表・熊沢峰夫・名大教
 授)なるものがあり、その中間報告書も甲斐昌一先生から頂いている
 のですが、怠け者故まだよく眼を通しておりません。この中に何らか
 のヒントがあるかもしれないと思って見返しているところです。
 


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