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大戸さん
> 初期の生命システムが形成されるに当たって必要な物質基盤の重要性と、
> 生命システムが内在している「場」との相互作用性による、初期物質場
> による束縛からの離脱についてです。
とても深い意味が込められているように感じますので,あえて質問させ
ていただきます.
1.場?
生命システムが内在する「場」という概念が良くわからないのですが,
(申し訳ないです.)統計力学でいう「場」の意味ですか?
ベクトル場みたいな意味ですか?特定の方程式に従う大きなシステム
という意味ですか?
2.物質場からの離脱?
物質が従っている法則から自由になる,任意の反応が起こせる
ようになる(任意の情報処理ができる)という意味ですか?
> そういうわけで、最終的には生命システムを構成する要素は「物質」
> である必要はなく、概念的に「情報」の流れと考えていくことにな
> ると思います。
この捉え方は良くわかります.さて,どこから始めましょう?
まず,生命に特徴的な情報の流れとは?でしょうか. :)
> 上記の仮説自体は知りませんでした。ただ、「乗っ取り」が主ではありませ
> ん。「創発」に関する概念の方が、感覚的に近いものだと思います。
> #ちょっと違いますけど...
33番目の記事で引用した "Genetic Takeover"という図書をご覧下さい.
乗っ取りというのは,生命システムは自分に都合の良い新たな物質的基盤
を探して乗り換えるという意味です.Cairns-Smithは,はじめ鉱物の結晶
がつくる自己複製システムが有機化学反応を触媒するようになり,システム
自体を自己複製する有機システム,核酸や蛋白質からなるシステムに
置き換えることで,現在の生命システムができたと言っています.
(ちなみに,その本の中にでてくる石積みのアーチを作る作り方の話は,
良い比喩です.
小石をたくさん積み上げておいて,注意深く小石を取り除いてゆくと
とても一個づつ積み上げてはつくれそうもないアーチを作ることができます.
できあがったアーチを見ても,それが先の方法で作られたことを知ること
はもはやできません.現在の生物ができあがる時も,これと同じように
捨てられた小石がたくさんあるはずで,現在の姿だけ見てもその作り方を
知ることは難しいことを言っています.)
(続く)
飯田
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"Life and Evolution '97"
Kazuhiro Iida,
Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation,
34 Miyuki-ga-Oka, Tsukuba, Ibaraki, 305 Japan.
TEL +81(298)50-1142, FAX +81(298)56-6136.
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