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生命の起源 #732 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
732
DATE
05/19/1998 08:48:38 PM
TITLE
[life:00732] Re: 質問
AUTHOR
kiga@***.*** (Daisuke Kiga)
BODY


飯田様 LIFEの皆様


>木賀> 見返していて、82ページにずばりの表を見つけました(大腸菌では
>A、C、G、U
>> が24、22、32、22%、他に5種の生物が書いてあります)細胞のRNAの85
>> %がリボソーマルRNAであるのために、RNAの塩基組成が偏るらしいです。真核生物で
>
>飯田さん:
>(それでも,A+U,C+Gを計算すると46%,54%で,ほぼ50%に
>なるのは何故??)

 この表の中では、AUが一番少ないのがラット肝臓で39%、一番多いのがポリオ
ウィルスで55%になっています。
 その後、リボソームRNAのデータベースを覗いてみました。大サブユニットについ
て、高熱古細菌でGC含量が64%、何かの生物のミトコンドリアで20%でしたか
ら、tRNAと近い傾向があるかもしれません(注:それぞれ一種しか調べていません)


>飯田さん:
>ちょっと面白いなと思いつつ,読んでなかった総説を紹介します.

ありがとうございます。

飯田さん:>それから,またまた,思いつきですみませんが
>
>分子進化リアクターで,人為的に色々なAT/GC選択圧をかけることで
>コドン自体の進化を再現するという実験やっちゃえばいいんじゃないでしょう
>か.

DNAの複製機構にプレッシャーを持つよう変異を入れた菌を培養するのも面白いと思
います。ただ、進化させるのに時間がかかってしまいますから、ある程度こちらで手
助けをする必要があるでしょう。問題は、コドンが変化した時に生育が有利になるよ
うなマーカーをどう設計するかです。ここでふと考えますが、GC含量の偏りはDNA
複製・修復時の偏りの結果なのでしょうか。それとも、淘汰の結果なのでしょうか。

AT/GC選択圧をかけなくても以下の方法があります。

大澤先生らのコドン捕獲説では、コドンの変化の過程が、空きコドンができて、それ
に対応するtRNAが消失する第一段階と、別のtRNAのアンチコドンが変化して空きコド
ンに対応する、第二段階に分かれます。第一段階まで進んだ生物を探して、これにこ
ちらで設計したtRNAを入れる、という計画がいぜん我々の研究室でありました。

 どちらにしても、大きな問題点は、コドン表を上手にいじらないと、翻訳の乱れに
よる制約でで実験材料自体が死んでしまうことです。私は、tRNAに対応するアミノ酸
を結合させる、アミノアシルtRNA合成酵素を用いて実験を行っていますが、tRNAのア
ンチコドンに対する認識が甘くなったこの手の酵素を大腸菌にいれると、てきめんに
菌が弱ります。
 この様な制約は進化の過程でも当てはまったはずです。おそらく最初は、現在より
も種類の少ないアミノ酸(しかも特異性が低かったことでしょう)からなる翻訳系が
、そのコードするタンパク質の機能を失わずに複雑化していった過程は非常に興味深
いと思います。

 翻訳系の個々の反応についてはいろいろと研究が進んできますが、システムとして
の翻訳系の起源と進化に関してはまだまだこれからだと思っています。この線を実験
的に追っていければいいな、と思っています。そのためには、とにかく分子進化につ
いていろいろ考えることが必要です。これからもアドバイス、よろしくお願いいたし
ます。




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東京大学 大学院理学系研究科 生物化学専攻
           横山研究室 木賀大介
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