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生命の起源 #730 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
730
DATE
05/19/1998 02:55:26 PM
TITLE
[life:00730] Re: 質問
AUTHOR
kiga@***.*** (Daisuke Kiga)
BODY


>川村様、飯田さま、life のみなさま

初めまして。東大院・理学系・生物化学・横山研究室・博士課程の木賀と申します。
みなさまの興味深い議論を拝見するだけでしたが、以前のメールの答えを見つけまし
たので、自己紹介をかねて発信いたします。

 私の所属する研究室ではRNAとタンパク質の相互作用について研究を進めています
。材料の一つはtRNAと、これにアミノ酸を結合するアミノアシルtRNA合成酵素です。
もう一つはスプライシングを制御するRNA結合タンパク質となっています。研究室の
多くの人はNMR、X線利用した立体構造解析を行っています。私はこの線から少し
はずれていて、生体高分子の人工進化系を利用しています。修士時代はRNAの試験管
内進化(in vitro selection, SELEX)法で、小分子に結合する新規なRNAを単離・解
析していました。博士課程では、遺伝暗号表を改変する計画の一環として、上記のア
ミノアシルtRNA合成酵素の改変を行っています。
 この数年の私の興味は、4種類のヌクレオチド、20種類のアミノ酸がなぜ選ばれ
たのか、という点です。ですから、飯田さんの2月の投稿、[LIFE - No.00580] Leas
t number of amino acid speciesには非常な興味を覚えていたのですがついつい発信
しそびれてしまいました。(まだこのネタで投稿してもよろしいでしょうか?)

 さて、河村様の

>> こんにちは.
>>  核酸,特にRNAに含まれる各塩基の生体中における存在量(割合)について,一
>> 般的あるいは詳しい報告をご存じの方がありましたら,教えて下さい.

も気になっていたのですが、最近教科書「ワトソン・遺伝子の分子生物学第4版」を
見返していて、82ページにずばりの表を見つけました(大腸菌ではA、C、G、U
が24、22、32、22%、他に5種の生物が書いてあります)細胞のRNAの85
%がリボソーマルRNAであるのために、RNAの塩基組成が偏るらしいです。真核生物で
のスプライシングに関わるRNAの量についてはこの付近のページには記述はありませ
んでした。

河村様、もしよろしければ、どのような背景で塩基組成に興味を持たれたか教えてい
ただいてよろしいでしょうか。

また、飯田様の

>進化との関連では,大野乾(すすむ)さんが,
>GCペアが多いと熱的に安定なので,進化も
>そちら方向に(特別な淘汰圧がなければ
>という意味と理解しております)進みやすい
>という論文を書いておられたのを覚えております.

 ということですが、別の要因もあるかも知れません。ゲノムに対してはは種ごとの
AT/GCプレッシャーが存在するために、コドンの3文字目の組成がひどく偏ることが
知られていて、普遍遺伝暗号から外れたコドン表の成立を説明するための大澤先生ら
の「コドン捕獲説」という説があります。
 また、tRNAのステム領域もこのプレッシャーを受けるようで、tRNAの機能のために
は塩基対を形成していればよい、という部位ではほとんどGCペアもしくはAUペア
になっている、という例を見かけます。ただし、AUの連続するステムはミトコンド
リアで多く見かけます。
 この先はまだ調べたことはありませんので、確度の低い私の感想です。リボソーム
においても、tRNA同様、機能発現のためには単に塩基対を形成すればよい、という部
位が多くあります。では、このような部位でもtRNA同様にAT/GCプレッシャーによっ
てステムの塩基組成が大きく変わるのではないでしょうか。

 話が前後しますが、ゲノムに対するAT/GCプレッシャーについて何かご存じの方は
いらっしゃいませんか?古沢・土井先生のお仕事のさわりや、ミトコンドリアでのDN
A複製時のCの脱アミノ化によるATプレッシャーがあること、好熱菌では熱安定性が
重要になるので(DNAの複製時の偏りか、淘汰の結果かは存じませんが)GCプレッシ
ャーがある事を知っていますが、原著論文・総説を読んだことがないので、現在のこ
の分野の動向については私は知識が足りません。

私も生命の起源と進化について非常に興味を持ちますが、勉強不足を痛感しています
(最近メイナード・スミス/サトマーリの「進化する階層」(日本語版)を読み始め
ました)。いろいろ的外れなことを書き連ねることがあるとも思いますが、みなさま
、どうぞよろしくお願いいたします。

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東京大学 大学院理学系研究科 生物化学専攻
           横山研究室 木賀大介
〒113 東京都文京区本郷7-3-1
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E-mail : kiga@***.***
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