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生命の起源 #67 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
67
DATE
09/12/1997 10:39:34 AM
TITLE
[life:000067] Re: What is life?
AUTHOR
"ohto@***.***" <ohto@krc.sony@***.***>
BODY


大戸です。(とっても長いです ^^;)

At 19:16 97/09/11 +0900, Kazuhiro Iida wrote:
> 飯田です.
>
> このスレッドで議論していることに関して,今日次のような
> 質問がありました.レスがほとんどないことにも関係すると
> 思いますので(^^;) ちょっと補足します.

提案している問題の大きさによるものであり、ML管理者(主催者)
としては非常に不安になることとは思います。チャット系のMLの
スレッド量を考えれば、非常にすくなくなると思います。

友人と運営している psycotherapy ML も、スレッドがなかなか発生
しなくて、困っています。このMLのように学問的に難しいという
よりも、プライバシーの問題などが大きく、匿名投稿の可能性など
を考えているところです。

> いただいた質問は,
>
> 1.生命システムを記述するとはどういうことか?
>   生命はとても複雑な構造をしているので不可能じゃない
>   か?(こころのうちでは,何を馬鹿なことをやってるんだ?
>   という意味かな:) 
>
> 2.生命のシステム構造が記述できたとして,どのような意義が
>   あるのか?(こころのうちでは,生命の起原の研究は実験が
>   全てじゃないのか?という意味でしょうか:)

(独り言 ^^;)ここでのこのようなコメントは誤解を招きかねません
ので、ご注意下さい _._

> 1.の質問は誤解によります.
> 生命のシステム構造を記述するとは,特定の生物を精密に観察し
> て,その振る舞いを余すところなく記述することではありません.
> そのようなことは,一人でできることではありません.記述する

これには同意します。大腸菌は、その遺伝的な構造や活動の多くが
明らかにされている生物の唯一(?)のものですが、これですら、人類
は合成できません。もちろん、DNA合成装置によって、かなり長い塩
基対を合成することができます。生活性を失っていないウィルスか
らトランスポゾンのような遺伝子の組み込み機構を持ったベクター
を切り出し再構成して、かなり自由に生物をいじることができるよ
うになってはいます。

生物系の、ちょっと踏み込んだこと(実験系)をやっていた人であれ
ば同意していただけると思うのですが、大腸菌で通用していたこと
の多くは酵母菌では、すぐに使えなくなってしまいます(原核と真核
の違い)。また、多細胞生物では、かなり異なる様式を備えています。

> 対象は,このスレッドで議論しようとしている生命が満たすべき
> 必要条件を満たすような最小の力学系(ミニマルシステム)を記
> 述するということです.モデルを作って実験結果にフィットさせ

このようなことから、ある程度普遍的なモデルを作り得たとしても、
個々の生物に当てはめることはまず無理と考えるべきでしょう。
#将来的には可能かも知れません

> ることではありません.起原で見られた生命は,様々な構造と機
> 能をもっていたかもしれませんが,ここで記述する力学系と相同
> なシステム構造をもたざるを得ないような,そのようなミニマル
> なシステム構造です.

私(の立場)は「ミニマルな構造」を求めることは難しいと考えてい
ます。私が求めているのは「ミニマルなダイナミクス」であり、物
質基盤は、取っ掛かりとしては重要とは思いますが、生物界全体に
ある程度の普遍性を持たせないといけない問題であり、DNAやRNAに
こだわり続けるのは良くありません。

飯田さんは、議論の足場としての「物質相互作用系」の提案をされ
ているものと考えますので、この点について、私は了承しています。

生物界全体を統べる法則はあるのでしょうか?意味としての相互作
用と相互進化(赤の女王仮説に近いかも)および、下位階層構造の自
己組織(崩壊)ダイナミクスと、これをその上位の階層ではシステム
内に取り込んでいくメカニズムが働いているようで、多分にフラク
タル構造を取っています。よろしければ、この点からのアプローチ
をスレッドを分けて論じようと思います。

> そのような生命システムを記述する時,重要なことは,システム
> を記述する各要素に特別な意味や目的を与えないような表現を用
> いるということで,特定のシステムを見いだしたり,それが生命
> 的であるか否かを判断するのは,我々の観察の結果として後付に
> 決まるようにすることです.例えば,ρはDNAで,,,と書い
> たたんに発展性のないシステムになってしまいます.それがDN
> Aに相当する役割を担うかどうかは,我々が,そう判定するから
> であって,システム自体は何の意味づけもなしに遷移を繰り返せ
> ば良い,その遷移が適当なら,生命らしく見えるだろう,そんな
> 記述の仕方をすると良いと思います(この前お知らせした文献を
> ご参照下さい.).

私の知っているところでは、郡司ペギオ=幸夫の書かれている論文
が、そのようなことを「論理学的に」論じていますが、私には到底
理解できていません ^^;
#現代思想に連載されていたりしました

> 2.の質問に関しては,次の2つの事実?があります.
>
> 第一に,生命のミニマムなシステム構造は未知であり,それを記述
> した人は誰もいないということです.ミニマルシステムを記述でき
> た人がいないということは,先の必要条件群を満たすようなシステ
> ムが記述できただけで,科学的な意義があるということです.この
> 科学的貢献は,発見に依存する通常の科学の展開と少し異なります.
> つまり,我々は生命の具体例を既にたくさん知っているのです.知
> っているにも関わらずそのミニマルな性質について十分理解してい
> ないのです.この状況は,多くの事例から帰納するような状況で,
> 発見によってケリがつくという種類の問題と異なりますが(実験し
> て見つかるのでなく,知っていることから合理的に結論が導かれる
> タイプの問題,合成の問題です.),遺伝子の暗号が解けたことに
> 科学的な意義があるように,科学的意義の見いだせる問題です.

実は、あのコドンについては、まだなぞがいっぱいあります。ご存
知と思いますが、ミトコンドリアの転写系は異なっていますし、ま
た多義的であり、かつ、非常に変化が速いです。

同様に、生物と言わないのであれば別ですが(感染フェーズに入るま
ではエネルギーの散逸はない?)、ウィルスの遺伝子の解釈系はとん
でもなく複雑になっています。パッキングや進化速度を速めるとい
う戦略もあってのことなのですが、わざわざコドンのフレームシフ
トや終端コドンの無視、逆サイドからの翻訳など、さまざまなこと
をやっています。もちろん、翻訳の多義性も備えています。

これは、DNAの情報が絶対ではなく、その場におかれた環境によって
ダイナミックにシステム自らが変更していっているという、良い見
本と考えています。

とはいえ、コドン表の発見は非常に有意義ですし、真核生物界にお
いては、ほぼ、普遍のようです。

> もう一点は,生命的システムは,AIの分野で工学的インパクトを
> 持つということです.この辺は,企業にいると,ちょっと書きにく
> いので勘弁して下さい(大学にいたら,ホイホイ書いていることで
> しょう).

AI分野へのインパクトといった場合、大変な誤解が生じます。AIはフ
レームモデルやプロダクションルールなど、人間の知識活動をモチー
フとしており、また、生物システムとしては、高次の精神活動にしか
注目していません。生物システムの原理に近い話は遠慮されるきらい
があります。最近のALの流れにより、自律エージェントに対する要求
などが考慮されて来てはいますが、これもまた、高度のネゴシエーショ
ンを必要としているのであり、単純な分散システムの応用として浸透
することはありません。つまり、この部分にセマンティックギャップ
が生じているのです。

やはり、スレッドを分けるべきなのですが、現在、工学者の多くは生
物システムに食指を動かされています。私の場合、どちらの部分にも
属していましたので、人工生命=バーチャルペット(=たまごっち ^^;)
という図式や、GAによるパラメーターの決定、NNによる掃除機 ^^;;;
に終始しているような事態です。

そんなこんなで、私は工学分野における(日本での)人工生命に対する
態度には否定的であり、安易な考えで来て欲しくない部分があります
(偉そうなことが言えるような身分ではないのですが...)。既にこの分
野で、独自の足場を築かれている人たちは、このようなフィーバーに
否定的です(もちろん、冷静な人には暖かい(はず)です)。

> (余談ですが,これまでに知られている生物で一番小さいものは,
> mycoplasmaの基本小体で約100ナノメートルの細胞です(ウイルスが
> 生物かどうかという議論は,このスレッドでのまとめが出るころ明

P-code やトランスポゾン、コピア、これに外殻がついたウィルスもま
た、生命現象に重要な要素を含んでいます。ウィルスもまた、宿主と
なる生態系に入った段階で生活性を持ちますし、宿主の細胞内物質を
借用するのですが、宿主遺伝子の必要部分を刺激して、必要な物質を
合成させたりしますので、「代謝系」という観点では合格です。最小
を追い求めてしまうと、どこで切るかの問題になってしまいますので、
この問題を避けるためにも、フラクタルの概念が重要であると考えら
れます。

現在知られている、自己代謝系として最小のものは、マイコプラズマ
である、ということですけど。

マトゥラナらはシステムとしての内外の分離系を提案しており、私は
これについては非常に面白いと思いました。ハーケンのシナジェティ
クスや、プリゴジンの散逸構造についても、非常に重要な概念と思っ
ています。これらが基盤となって、フラクタルな自己組織系が生まれ
ていると感じていますし、同時に、この概念と「閉鎖系」との概念に
は、相反する所はないと感じています(これもスレッドを分けるべきで
すが...)。

飯田さんのアプローチはたたき台としては良いもの(従来の科学でやら
れていた手法に近い?)と思います。ただ、荒[LIFE-No.00064]さんの
コメントがなければ、コメントを続けようとは考えなかったとは思い
ます。




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