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生命の起源 #608 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
608
DATE
03/12/1998 03:06:20 AM
TITLE
[life:000608] Re: Conference report
AUTHOR
"Kazuhiro Iida 飯田一浩 NEC基礎研究所" <iida@***.***>
BODY


(つづき)

その自己触媒系の反応を,物理的クライテリア(Physical criteria)
を挙げて,それらを満たすか否かを観察しました.

今回は,説明のためにとりあえず,
1.エッジ
2.エントロピー過剰生成
3.エントロピー減少
4.走化性
を挙げました.

1.のエッジは, |∇[n]| > δ1 という条件,
2.のエントロピー過剰生成は,σs > δ2
3.のエントロピー減少は dS/dt < 0 
4.の走化性は,jn ∝ ∇[y] と書けます.
σsは,化学反応によるエントロピーの生成速さ
Sはエントロピー,δ1,δ2はある検出の閾値,
jnは自己触媒分子nの流れで,いづれも局所における条件です.

最初これらの条件を満たす部分は全く検出されませんでしたが,
反応が進むにつれ,各条件を満たす部分が特定の領域に出現し,
全ての条件を満たす領域は,分布の移動方向の前方部分に出現
しました.(ちなみに,その領域では波状のパターンが形成さ
れていました.)

この検出されなかったものが,ある時から「検出される」いう
ことは,創発や進化に相当する現象と考えています.
(複雑系の研究では,系自体の軌道の情報生成量などをもとに
創発的システム云々を議論しますが,ここで言う創発は,それと
は異なり,現象そのものの素朴な定義を言っています.もし,
検出する基準に幾つかの階層を設けることができるなら,
それらが次々に満たされてゆくことは進化に相当するという
具合に考えます.)

現在,この4つの条件を満たす部分系の解析をしています.
この部分系の挙動は,先に与えた全体系の方程式を,生命の
属性を拘束条件として解いた解に相当するもので,既知の
全体系の方程式とは異なる相互作用成分が含まれているのでは
と期待しています.
(このように部分系の振る舞いから逆向きにシステムの構造を
同定する手段が,先の論文に書いた内容です.)

上のやり方は,言うならば,
「生命はどういう属性を持つか,まず書いてみよう.それを
満たす現象があれば,現象からシステム構造が同定できる」
というストーリーです.それで,従来の「最初の生命はこういう
システムだったに違いない,なぜならば.事例1,事例2..」
というストーリーとは異なるように思います.

この方法の善し悪しはいづれ明らかになるとして,学会で
システムに関する話題がもっと多く議論されて欲しいと願って
おります.


(システム関係の学会報告は以上です.下は余談です.)

上のシミュレーションは,ストラテジーを説明するために
行いましたが,走らせてみるとそこそこ面白いです.とても
簡単な系なので,すぐに書けます.ソフトを希望される方は
個人的にご連絡下さい.


飯田@NEC
--
"Life and Evolution '97"
Kazuhiro Iida,
Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation,
34 Miyuki-ga-Oka, Tsukuba, Ibaraki, 305-8501 Japan.
TEL +81(298)50-1142, FAX +81(298)56-6136.




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