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LIFEの皆様
ハイパーサイクルに関連してもう一つ.
ハイパーサイクルは安定な力学系だが,自己保存系とは
言えないと思うと書きました.
ハイパーサイクルは,力学的安定点を持つ場合だけでなく,リミット
サイクルとなったり,それを構成する触媒のテンプレートの突然変異
による系構造の変化(あるいは進化)を生じうることが指摘されてい
ます.見方によってはかなり生物的に見えます.(突然変異がどんどん
起こってハイパーサイクルが,生き物らしくなる可能性も否定できま
せん :)
しかし,物質的遺伝情報を含んでいるという理由の他に,ハイパーサ
イクルが自己保存する最初の代謝系としてイメージしにくいと思う理
由は,その安定性故の系構造の固さです.少なくとも数理表現の上では
ハイパーサイクルは,要素となる触媒とそのテンプレートが決まれば,
系構造が決まりますし,しかも同時には許される系構造は,一種類だけ
です.
自己保存は,難しい概念ですが,環境の変動に適応しながら代謝を持続
する機構と考えると,ハイパーサイクルは,原材料の一つが無くなるよ
うなドラスティックな環境変化に耐えないように思えます.(計算して
確かめる必要はあります.)
むしろ,熱力学的定常状態にその安定性を求める,Kauffmanの
autocatalytic setのようなぼやっとした集合の方がフレキシブル
で保存しやすいのではないでしょうか.もちろん,autocatalitic set
が,自己保存系か?遺伝情報はどこからでてくるんだ?ときかれると
答えられません.(試行錯誤中).
何か別の視点が必要なのかもしれません.
力学的安定性,定常状態.自己保存に関して,それ以外に
何か良い視点は無いでしょうか?
飯田@NEC
--
"Life and Evolution '97"
Kazuhiro Iida,
Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation,
34 Miyuki-ga-Oka, Tsukuba, Ibaraki, 305-8501 Japan.
TEL +81(298)50-1142, FAX +81(298)56-6136.
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