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高橋様 LIFEの皆様
おはようございます.
> 高橋さん:
> > 「 自己保存的な力学系 」
> >
> > というものがあったとすると,それは,それ自体の
> > 構造を保持している..遺伝情報に近い情報を保持していると言えるのでは
> > ないかなどど,思いつつも,じゃあ,自己保存的な力学系って
>
> 既に御存知かもしれませんが、アイゲンのハイパーサイクルがそのような
> 系の定式化の試みの一つとして有名です。
> (オートポイエティックシステムもその一つですがこれは御存知のようですので)
>
> {Manfred Eigen, Christof K. Biebricher, and Michael Gebinoga;
> {f The Hypercycle. Coupling of RNA and Protein Biosynthesis in the
> Infection Cycle of an RNA Bacteriophage},
> Biochemistry, Vol. 30, No. 46, 1991 11005-11018}
>
ハイパーサイクルは,確かに「安定」な力学系です.
ただし,代謝起原説 v.s. 核酸起原説 という視点で見ると,
代謝起原説を裏付ける自己保存的力学系とは言いにくいと
思っております.
第1に,ハイパーサイクルは,核酸などの(ゆわゆる遺伝子と呼ばれる)
触媒のテンプレートの存在が前提です.
ハイパーサイクルは,
1)触媒のテンプレートと
2)そのテンプレートを翻訳してできる触媒,それから,
3)テンプレートと触媒の合成の基質となる低分子物質のふんだんな供給
を前提としています.
さらに,その系の進化(もしくは構造変化)は,1)のテンプレートに
生じる突然変異が原因とされています.
それで,遺伝子(核酸)起原説を裏付けるものにはなっても,
本来の代謝起原説の裏付けとは考えにくいのです.
第2には,いわゆる自己保存は,力学的安定性とイコールでない
ということです.(ちょっとたくさん書くことになりますので
とりあえず,第1の点について議論ののち第2の論点に移らせて
いただければ,嬉しいです.)
余談ですが,Eigenのハイパーサイクルの論文は,幾つか
読んでいましたが,高橋さんにご紹介いただいた論文は未読でした.
参考になります.うろ覚えですが,最近,全く人工的にハイパー
サイクルを in vitroで構成したという論文が,NatureだかScience
だかに載ってたと思います.調べておきます.
飯田@NEC
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"Life and Evolution '97"
Kazuhiro Iida,
Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation,
34 Miyuki-ga-Oka, Tsukuba, Ibaraki, 305-8501 Japan.
TEL +81(298)50-1142, FAX +81(298)56-6136.
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