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生命の起源 #564 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
564
DATE
01/26/1998 08:34:20 AM
TITLE
[life:000564] Re: E-Cell
AUTHOR
"KOUICHI Takahashi-S" <t94249kt@***.***>
BODY


高橋です。

| 飯田:
| (Kcatは,酵素,基質によって10^8倍違うというのが定説のようですから,
| Kcatの平均 -> 1ms はあまり,説得力が無いような...(^^;)  )

うーむ、たしかに直接導出した数字ではないし妥協の産物ではあります。


| 高橋さん:
| DNAやRNAとタンパク等とのバインディングや、膜タンパク
| 等の複数の部品から成る分子の形成に関してはDynamic Programmingで
| 迅速平衡を仮定してしまったほうがいいということにしました。
|
| 飯田:
| このDynamic Programmingですが,音声認識とか,遺伝子配列のアラインメント
| で使うあのDynamic Programmingですか??? イメージが湧きません.
| どんな風に使っておられるのか,簡単に教えていただけないでしょうか.:)

ええと、初歩的な話からしますと、例えば

v_1
A + B <------> C
v_-1

の形の複合体形成で、解析的に解くと、
v = v_1 - v_-1、平衡定数をk、として
# 見てのとおり v は流束じゃなく結果としての変量です。
平衡の定義 v_1 = - v_{-1} より解は
D = k^2a^2+k^2b^2-2k^2ab+2ka+2kb+4kc+2
とおいて
v = (ka+kb+1 + sqrt(D)) / 2k
,(ka+kb+1 - sqrt(D)) / 2k
で、a,b,c>0より簡単な証明でこのうち前者が求める解ということがわかります。

これはこれでいいんですが、反応器の入出次数および化学量論的係数
を任意に取って計算させるためにはそれぞれのパターンに関して式を
立てなければいけません。これはちょっと面倒なので、一般の反応

v_1
ν1 S1 + ν2 S2 + ... + νm Sm <------> νm+1 Sm+1 + ... νn Sn
v_-1
(ただし左辺でν>0、右辺でν<0)
に関して、求める速度v'から導かれる次のステップの濃度をSiと書くとして、
Si = - v'/νi
k = Π{Si^{νi}}
を、現在の状態をS'iとしたときのv(v',S'1,...,S'n,k)を
評価関数としてv'に関して最適化するわけです。
具体的には、v=0が可能なことは明らかなのでv=0となるv'を探索します。
アルゴリズムは一種の逐次探索法ですがこの問題に最適化されています。
このやり方は僕が考えたわけじゃなくて当時(いまも)転写翻訳を担当していた
メンバが考えて、コードも書いたものです。一般的にはニュートン法等を
使うところで、どっちが有利か比較研究するべきですが、この方法で
とりあえずうまくいっているのでそのままにしてあります。
別にこれにこだわっているわけではないのでほかによい方法があれば
乗り換えます。

あたりまえですが、この方法は上の解析的な方法も含めて反応が属する系
全体の平衡を境界条件として仮定しているので、
有限の時間刻み幅を使う以上は実際のE-Cell上で動かすときは
平衡に達するまでの時間は有限です。
この遅れ時間は無用な振動の原因となるなどの悪さが考えられるので
これをいかに抑えるかが苦心するところのようです。


慶應義塾大学s 環境情報学部 (Bioinformatics Lab.) ‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
高橋 恒一
_____Kouichi Takahashi t94249kt@***.*** _______


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