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生命の起源 #536 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
536
DATE
01/19/1998 08:47:00 AM
TITLE
[life:000536] Re: E-Cell
AUTHOR
"KOUICHI Takahashi-S" <t94249kt@***.***>
BODY


高橋@慶應藤沢です。再送です。


| 飯田:
| 釈迦に説法という感じがありますが,自然現象のシミュレーションの
| 場合,時間ステップは,短ければ良い,あるいは長ければ良いと
| いうものではありません.問題にしている現象に合わせて選ぶのが
| 一番です.例えば,fsec オーダーの時間ステップで化学反応を
| を追うとすると,これは分子の形がどう変形するかといったミクロ
| な現象を追うことに適していますが,濃度レベルのマクロな反応を
| 追うのには短すぎます.計算量が多いというだけでなく,平衡が成
| り立たないからです.

これはおっしゃる通りでして、積分間隔を短く取り過ぎると平衡を
仮定した計算が成立しなくなります。

| Kcatから 1ms を導かれた根拠をお教えいただけると,もう少し
| 具体的にお答えができるかと思います. :)

まず最初にいわなければいけないとおもうのは、
実はここはいろいろと内部でも議論があったところでして、
積分間隔はE-Cellの実行中でもマウス操作だけで目的と必要に応じて
自由に変えられるようにしてあるということです。
デフォルトを1msにしているだけです。

で、1msと決めた理由ですが、
積分間隔をサンプリング周波数fとして考えてみると、ナイキストの定理により、
表現できる時間スケール(=周波数)はf/2で、1msの間隔に対しては
物質濃度への寄与に関して最大500Hzの周波数成分を持つ現象を表現
できることになります。
E-Cellのような形式で細胞の活動をモデリングした場合、
細胞内の主要な時間スケールのなかで一番短いものというのは、
複合体形成を考えればとりあえずいいだろうとなりました。
しかし、酵素反応の部分反応としての複合体形成はM.M.式をつかえば
無視できるし、DNAやRNAとタンパク等とのバインディングや、膜タンパク
等の複数の部品から成る分子の形成に関してはDynamic Programmingで
迅速平衡を仮定してしまったほうがいいということにしました。
そうすると積分間隔は、主要な現象のなかで次に速そうな、
酵素反応の時間スケール(つまりKcatの値)よりも短く、
複合体形成よりも長いことが必要になります。複合体形成の
タイムスケールよりも長くなければならない理由は
上での飯田さんの御指摘の通り、平衡を前提とした計算を行うからです。
そこで、標準的な酵素のKcatの値を調べてみると、1 から 10^-7 [s^-1]
程度がほとんどでした。
まあ、厳密にいうと1msでは時間解像度が不十分ではありますが、
Kcatの値ぎりぎりまで意味を持つような酵素反応の状態というのは
考えにくいので、現状では計算力とも考え合わせてこのくらいかな、
ということにしております。

P-6 200MHzで遺伝子127個の仮想細胞を駆動すると実時間よりも
大体10倍遅い系内時間で走ります。
近々これより3倍速い計算機が入る予定ですが、速度を桁単位で上げるのは
容易ではありません。たしかにそこらへんが計算機の一番おもしろい
部分の一つではあるんですが。



慶應義塾大学s 環境情報学部 (Bioinformatics Lab.) ‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
高橋 恒一
_____Kouichi Takahashi t94249kt@***.*** _______


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