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生命の起源 #517 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
517
DATE
01/14/1998 02:19:29 AM
TITLE
[life:000517] Re: Marine Origins
AUTHOR
"Kazuhiro Iida 飯田一浩 NEC基礎研究所" <iida@***.***>
BODY


三田様 LIFEの皆様


1.ATPは進化した形?

> 飯田:進化した形と考えられるのは,ADPやATPの自然合成が非常に困難なことから

> 導かれる帰結と考えてよろしいでしょうか?

三田さん:
何に比べて困難かと言うことですが、メタンチオールやチオ酢酸などに比べればはる
かに困難でしょう。
ADPやATPの自然合成は、核酸合成をしている人は無理だとは言わないでしょう
が、自分から見ればとてつもなく難しいように思います。(ペプチドを作る方が容易
だと思っていますが、この辺は人により見方が分かれるでしょう。でも、楽にできる
とは言わないと思います。)

飯田:
自然合成可能な物質で,ATPに相当する物質を挙げるとすれば,
ズバリ! 何を挙げられますか?



2.熱水口周辺の有機物の由来

三田さん:
も起こり得る反応だと思いますが、出発物質の組成が異なるため生成するアミノ酸の
組成も大きく変わってしまうでしょう。あるアミノ酸が熱水環境で多くても、それが
原始環境の反映かどうかは難しくなります。
 中略....
熱水中では、非常にラセミ化速度が速いので決め手にはなりません。もっともL体し
かなければ問題外ですが。

飯田:
なるほど.我々が生活しているマイルドな環境のアナロジーで考えたので,
間違ってしまいました.高温での平衡は,それ以前の情報を消し去る方向
に作用するというわけですね.

>飯田: 2.炭素同位体のかたより
> 生体由来の炭素には同位体の偏りが見られると聞いたことがあります.

三田さん:
可能性は高いのですが、途中の反応によっては難しい可能性があります。同位体の偏
りはもっとも基本的には光合成の炭素同化に依存ししていると考えられています。そ
の後の、生合成過程のバリエーションによってばらつきが大きくなったりします。

飯田:
なるほど.熱水口の周辺の生体系における生産者は硫黄細菌が主と聞きました.
ということは,これも期待薄ということですね.僅かに期待するとすれば,
マリンスノー等で降ってきた有機物由来の炭素ぐらいですね.



3.自然合成は続いているか?

三田さん:
原始環境と同じことが現在の地球上のどこかで起こっていると考えるのは無理なので
はないでしょうか。現在の環境から、原始環境の状態を推し量り、そのような場でど
のような反応なら起こり得たか、それを組み合わせていくとどのような形で生命へ達
しうるかを類推していくことしかできないのではないでしょうか。化学進化はシュミ
レーションと言うよりモデル化と言った方が良いような気がしています。例えば、海
底熱水噴出口であれば、高圧、高温の場であるが非常にはやい冷却効果も期待できる
、高濃度の金属イオンが溶存していることなどが重要な因子であり、これらのどれか
あるいは全てがキーになっているのでしょう。系を単純化させていきながら、これら
のどれがどの反応にどう寄与していくか考えていくのが大切だと思っています。

飯田:
重ねて,なるほど.
(# 今井先生のフローリアクターに期待してしまいます.)

その昔は,酸素O2は,ほとんど存在していなかったことなどが報告されて
います.他にも色々現在と異なる条件があったでしょう.証明も難しそう.
でも,そのくらいの条件の違いで生命源物質の自然合成が止まってしまう
だろうかいう疑問は残ります.(その辺は,まったく根拠を欠きますが.)
生産はされてるんだけど,すぐ生命によって消費されてしまう.といった
説明は,わかるんですが....
(その意味では,生命後の世界は,自然発生を許さない質的に異なる世界
と言えるかもしれません.)



飯田@NEC
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"Life and Evolution '97"
Kazuhiro Iida,
Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation,
34 Miyuki-ga-Oka, Tsukuba, Ibaraki, 305 Japan.
TEL +81(298)50-1142, FAX +81(298)56-6136.



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