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生命の起源 #513 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
513
DATE
01/14/1998 08:47:47 AM
TITLE
[life:000513] Re: Gene and Evolution
AUTHOR
"MIYAKE, Hiromichi 三宅 啓道 東京工業大学" <miyake@***.***>
BODY


LIFEの皆様

こんにちは、三宅です。忙しさにかまけておりました。

From: Chiba Kazuhiro <k-chiba@***.***>
Subject: [LIFE - No.00490] Re: Marine Origins
Date: Mon, 12 Jan 1998 08:36:23 +0900
> :から見直すと、つまり、生命の進化を1つの最適化ゲームのように考えたとき
> :プレイヤーにとってまず一番重要なのは GA がどのように有効であるかではな
> :く、いかなる戦略がもっとも望ましいものか、ということになるのではないで
> :しょうか?とすると、数万年だか数億年だかを熾烈な競争にさらされてきた自
> :然界はその中でも有効な戦略を取らざるを得なかったのではないか、というの
> :は想像なんですけども(^^;
>
> GA などのアルゴリズムは,プレイヤが実行するものではないでしょうね.
> また,「自然界が ... 戦略をとる」というのがよくわかりません.
> これは,「自然界の各生命が ... 戦略をとる」ということでしょうか ?

これは、私の意図するところではありません。今現在、生殖メカニズムをコン
トロールできる(できそう?)生物は、私の知る限り、人間だけだと思います。
誤解を招いてしまったようで申し訳ないのですが、プレイヤというのはもちろ
ん擬人的な比喩で言ったものです。

> そうだと致しまして,環境に依存しない最良の戦略は存在しないでしょうね.

そうだと思ます。私が意図したことを、あえて(つまり私の意図するところで
ないのですが)実際の世界のなかに、あてはめてご説明しますと:

私は、古生物学に触れたこともないので、あくまで仮定として話します。たと
えば、地質学的なタイム・スケールでの昔、まだ、原始生物しか地球上には棲
息していなかっとき、その生殖メカニズムは現在のものとは同じだったのでしょ
うか。なかには、異なったメカニズムをもつ生物が存在していたと、ここでは
仮定します。つまり、様々な生物は生存競争というレベルで、その環境への適
応という意味で評価され、生存できるか、死滅するかを受け入れることになる
でしょう。しかし、生殖メカニズムの差異というものは、その適応能力に影響
を与えずにはおられなかったかもしれません。あるメカニズムをもつ生物が、
より環境に適応できるように進化するスピードが、他のメカニズムをもつ生物
の進化のスピードよりも十分大きかった場合、メカニズムのレベルでも環境へ
の適応能力というようなものを問われるかもしれません。これと似たようなこ
とを、以前どなたか仰っておられました。とすれば、その環境での最良の戦略
というものがあるのではないでしょうか。

現実の物理的世界の説明を意図している場合は、このような問いは全く意味の
ないものかも知れませんが、数理的にはとても重要だと思います。たとえば、
じっさい、将来のコンピュータの開発が生物の進化といった概念を取り入れて
議論するという方向でも進んでいるので、軽視できない問いだと思います。ち
なみに、聞きかじっただけなので突っ込まれると何も言えないのですが、DNA
の様々な変換のメカニズムのうち、いくつかの変換をモデル化して、計算のシ
ステムを構成すると、いわゆる計算論でいわれる Turing Machine や
Universal Computer と同等の計算性能を持つことがごく最近論文で発表され
ているようです。ちなみに、量子計算機も理論的には Universal Computer と
同等の計算性能をもっていると言われています。そういう目でみると、生物の
進化の過程は、数億年という長い年月をかけた、遺伝子というデータの計算過
程にすぎません。もちろん、あくまで上のような意味で、ということですので
現実には違うよというお叱りはこの場合あたりません。

> 現在の近傍に対して有利な戦略をとると考えるのが自然でしょうか.

そうだと思います。ただ、離散的メカニズムの恐ろしいところは、連続性を無
視したことが起こりうる、ということも言えると思います。

From: "Kazuhiro Iida 飯田一浩 NEC基礎研究所"<iida@***.***>
Subject: [LIFE - No.00498] Gene and Evolution
Date: Mon, 12 Jan 1998 15:52:59 +0900
> D.Brayさんとも話したのですが,分子レベルでの
> 進化はこう捉えることもできるでしょう.
> 通常,進化では,シンプルな系から複雑な系が生じると
> 考えられていますが,
> 触媒能の進化を考える時は,少なくとも逆に見えます.

とても興味深いお話だと思います。進化がひとつのメカニズムであれば、どの
ような作用をもたらすかを系の複雑さや単純さで測る必然性はないのかな、な
どと夢想してしまいました。

From: "Kazuhiro Iida 飯田一浩 NEC基礎研究所"<iida@***.***>
Subject: [LIFE - No.00500] Re: Gene and Evolution
Date: Mon, 12 Jan 1998 15:57:01 +0900
> でも,リーディング鎖の配列は,かならず保存されることから,
> 最良?の配列は残しながら,片方の鎖で進化の冒険をするという
> 戦略がとられていると主張している人(確か,三共製薬?の古沢さん?)
> がいて,けっこう皆に受け入れられてきています.

いわゆるエリート戦略と呼ばれているものですね。自然界での実例があるとは
知りませんでした。

From: KOUICHI Takahashi-S <t94249kt@***.***>
Subject: [LIFE - No.00504] Re: Marine Origins
Date: Tue, 13 Jan 1998 09:12:15 +0900
> > いるメカニズムで、どうしてこんなにも膨大な解空間での最適化問題を効率よ
> > く解決できるのでしょうか?その数理的な必然性はどこにあるのでしょうか?
>
> まず、工学的な見方として解空間をそこまで取る必要はないのではないでしょ
> うか。塩基配列が遺伝子をコードするためには様々な文法や制約があります。

これはそのとうりですね。そして、そのためにはそういった文法や制約をマネー
ジメントするような手段が必要になるでしょう。明らかに、これまでの数理の
ある種の弱点のようなものだと思うのですが、こういった文法(たとえば、自
然言語)のようなものを取り扱う道具が無いわけです。いままでは、問題の条
件を緩めると、解空間が大きくなっても、あまり問題にならないような状況が
ほとんどだったのでよかったのですが、離散的な空間だとそういう都合の良い
ことにはならずに、不利に働く場合が多いもので、壁にぶちあたっている感じ
がします。もともと数学にはマネージメントなんていう概念はありませんでし
たからね。そういう意味では、離散的な最適問題を取り扱うのに人工知能など
は可能性があるのかもしれません。

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Name : MIYAKE, Hiromichi
Tokyo Inst. of Tech.
Dept. of Mathematical and Computing Science
E-mail: miyake@***.***


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