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白倉様 LIFEの皆様
おはようございます.
白倉さん> このような反応拡散系を考えれば,すべてのパターンはチューリング
不安定
> というひとつの概念で説明できます.動的なパターンも非線型による状態間
> 遷移と考えることで,その概念のなかにおさめることができるはずです.
> さらに,M個の細胞があるのなら,MN元の反応拡散系を考えれば良いということに> なります.この方程式とCellular Automatonの関係は非常に密接なものと言えます
> ので,これまでの人工生命などの理論とも関連を持たせやすくなるのではないで
> しょうか.
飯田: 鋭い切り口ですね.ええと,(^^;)
空間パターン形成の問題は,Turingパターン(文末に付録あり)と
媒質の異方性でかなり精密に記述できるでしょう.生命現象に
伴うパターンを説明するのに良い視点だと思います.
E-Cellの場合,単一の細胞をシミュレートしておられ,さらに
個別の構成要素(コンパートメント),例えば,細胞膜,核,
etcに分解して考えておられるので,現状では,細胞内部の物質分布
パターンを検討することはできないかと思います.しかし,細胞を
記述する木の一番下の部分を箒のように枝分かれさせて空間の各点に
対応させ,それらの枝の間では反応拡散方程式に従う遷移が生じるよ
うなモデルにするとかの(まったくの思いつきですが)拡張は可能だ
と感じました.(高橋さん,その辺どうでしょう?)
> おおさっぱな直感でものを言って申し訳ないですが,複雑な系を複雑なまま
> 解析するのは冗長な概念を生むだけで,単純性を欠くことになります.
> 複雑な系をできる限り単純な系に落として考えることこそ,本質を見いだす
> ための手段だと思っています.
飯田:
白倉さんのご指摘は,今後も何回となく成されると思いますので,
ポイントをまとめておいてはどうかと思います.
LIFE読者のみなさんのご協力をお願いします.
まず,生命を理解するのに,様々な視点があって良いと思います.
それらの視点の分かれ目は,思うに
1.実験できることと,できないことを区別するか否か?
(そこにある生物を理解するのか,それ以外を理解するのか)
2.モデルと現象の間にある「複雑さのギャップ」を認めるか否か?
(全てを説明できる単純な原理があると確信できるか否か)
ではないでしょうか?
(もし私のように)それ以外も含めて理解したいのだけれども,
単純な原理の存在に確信が持てないという視点の場合のアプローチ
としては,
まず,実際に生命と呼ばれる現象を可能な限り詳しく観察記述して,
そこから情報を捨ててゆくことで,原理へと近づくことになります.
上の区分では,白倉さんは
それ以外も理解して,しかも単純な原理があると確信できる
という視点に立たれると考えてよろしいでしょうか?
飯田@NEC
「付録」
1.Turing Pattern と Turing Instability
については,先日ご紹介した
{Raymond Kapal and Kenneth Showalter eds.,
{it Chemical Waves and Patterns},
Kluwer Academic Publishers, Dordrecht, 1995.}
の第7章 pp.221-268に,
{Boissonade, J., Dulos, E. and De Kepper, P. (1995),
``Turing Patterns: From Myth to Reality." }
という解説があります.
--
"Life and Evolution '97"
Kazuhiro Iida,
Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation,
34 Miyuki-ga-Oka, Tsukuba, Ibaraki, 305 Japan.
TEL +81(298)50-1142, FAX +81(298)56-6136.
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