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生命の起源 #298 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
298
DATE
10/29/1997 02:30:17 AM
TITLE
[life:000298] Re: E-Cell
AUTHOR
"KOUICHI Takahashi-S" <t94249kt@***.***>
BODY


高橋です。

小野さん:

> 膜を外から与えるのではなく、代謝などと結びつけたモデルとして
> 表すにはどの様な方法があるでしょうか?

> 膜に相当するルールを外から与えてしまうのはやはり
> なんとなく物足りないように思われます。

これは僕も当初から感じていたところで、なんとかうまくできないか
考えているところです。

ケンブリッジ大学のグループ等は分子同士の相互作用を熱力学的に
計算して代謝系の一部をシミュレーションしているようですが、
現在の計算機の速度ではこの方法を細胞全体に適用するのは非現実的です。
現在のE-CellでさえP-6 233MHzで死にそうになっています。
計算の高速化にはまだ二三手は持ち札がありますが、それでも
20%はやくなればいいほうでしょう。
DEC 21164A の2-4ノードSMPにしても、多分一桁程度しか早くなりません。
# 現在一千万以内程度の予算では知る限り最速の構成とおもいます
ただしあと十年して1GHz程度の素子を数十以上並列に
アクター指向でプログラミングできる技術が確立されれば
可能になるかもしれません。


御参考までにE-Cellでどうしているかということを書きますと:

E-Cell Systemが採用しているStructured Substance-Reactor Modelでは
System クラスのオブジェクトを使って位相的な空間を定義することができま
す。基本的に木構造です。木の大きさと枝の数は無制限です。

さて、膜の主要な機能を考えてみますと、

1. 物質輸送
2. 空間の分割
3. 細胞の内部空間の体積の定義、維持
4. 細胞の力学構造的(機械的)維持

等がありますが、

1. 3つのシステムA,M,Bを定義して、システムM上にあるReactorの
基質A上のSとし、生成物をB上のSと置くと膜の主要な機能である
物質輸送を実現できます。
2. AとBに跨がって物質を操作するReactorをM上のみにしか置かないように
徹底すれば、0又は任意の曲率の膜を位相幾何学的に定義できます。
3. 膜オブジェクト自体にリン脂質やその他の膜形成分子の分子数から
膜内部の体積を計算することができる機能を付加できるようになっていま
す。

として1-3までは実現できます。4のモデル化が不十分であることは前の
記事でも述べました通りです。

> 私はいまCAのようなモデルで、
>
> 0。2次元格子上に様々な疑似分子があり、運動している。
> 1。分子ごとに何種類かの空間的相互作用がある。
> 2。また、分子同士の反応によって分子が作り換えられて行く。
> (酵素なども一つの分子として表されている。)
>
> そのなかで、リン脂質に対応する分子を代謝することで、
> 「膜」を維持するシステムを表現したいと思っているのですが...
> (あわよくば分裂なども再現して、原始細胞のモデルにしてみたい)


これは、比較的よく思い付くやり方ですね。
論理学方面の絡みからですが、ある友人もそういうことを
考えていたようです。 > そろそろ出てきたら?

実際の細胞を念頭に置くのではなくて仮想的な(AL的な)実験系ですね?
というのは、もし実際の細胞規模の空間を十分な精度で離散化するとなると、
automataの数が爆発してしまい計算量的に難しくなりますよね。



慶應義塾大学s 環境情報学部 (Bioinformatics Lab.) ‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
高橋 恒一
_____Kouichi Takahashi t94249kt@***.*** _______


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