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生命の起源 #292 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
292
DATE
10/28/1997 06:06:03 AM
TITLE
[life:000292] Re: What is life?
AUTHOR
"KOUICHI Takahashi-S" <t94249kt@***.***>
BODY


高橋です。

既に反応をいただきましたが、おそらくこの記事も全体には配送
されていないので再送します。


| > 飯田| (つまり,古典的な代謝の概念には,同化,異化という形で境界の存在が
| > | 織り込まれています.また,環境は変動することを認めるなら
| > | その変動に応じた振る舞い無しに継続できないという理由で継続することと
| > | センサ,プロセッサ,アクチュエータに相当する機構が検出されることは等価
| > | とみなせます.そういう意味で,「代謝の持続」は,環境の変動を前提とすれば
| > | 1.代謝系である.
| > | 2.物理的境界がある.
| > | 3.センサ,プロセッサ,アクチュエータ機構がある.
| > | と,等価なわけです.)
| >
| 高橋さん> センサ,プロセッサがあるとすると系はなんらかの情報を保持する必
| 要が
| > ありますから内部状態の変化が観測されるはずです。
| > 酵素反応の連続はほぼエルゴート性をもつものと考えられるので
| > 酵素は変化に関する情報は保持していませんね。
| > しかし、外部の物質の濃度の摂動に反応して酵素の回転数が変化すると
| > 結果として内部の物質の濃度が変化して履歴が発生しますから
| > 確かに情報を保持しています。したがって酵素単独では情報の
| > プロセッシングは行っておらず、酵素と物質濃度の二種のノードの
| > 間に構成されるネットワークが仮構されてはじめて刺激に
| > 反応できることになりますね。
|
| 飯田:系は何らかの情報を保持する必要があるというのに,大賛成です.
| その情報が何で,どうやって保持するかが面白いところです.

| 保持される情報は何だとお考えですか?
| 当方は,とりあえずは環境変動の力学系の特徴かと思いますが,

そうなるでしょうね。
# 歯切れが悪いのはもう少しうまい言い方ができそうだけど
# どうも思い付かないからです ^^;


| 現在の生物が自己の力学系の性質自体も併せて保持している
| のを見ると,この,
|
| 1.センサ,アクチュエータ,プロセッサ+その学習機構の力学系が,
|   生命に先行する重要なメカニズム
|
| に違いないと考えております.

どうもこの命題が気になる理由は、この現象論の三つの定理が
縮重しているように思えるからのようです。
# 例によって細かいところばかりつっこんでいるようで恐縮です。
ここに滞って議論していても進まないのでもう少し具体的な
話をうかがって、各論で少しづつ意見を明確にしていきたいと
おもいます。


| (余談ですが,「酵素反応の連続はエルゴード性を..」の意味は,
| 酵素分子一つを考える時,第一の反応の際の触媒能と,次の反応の際の
| それが同じという意味ですね?.必ずしもそうでない場合もあるようです.
| 昔,試験管を振って実験していた頃,周りの蛋白質やってる人は酵素がすぐ
| 活性を失うので保存に苦労してました.水中の酵素には少なくとも寿命は
| あるようです.

| あと,エルゴード性はマクロにしか検証できないんじゃ
| ないかと思っております.)

この御指摘はエルゴード性という用語一般に関してですか、それとも
酵素の場合に関してですか?


| 高橋さん> ただ、代謝の揺らぎに対する耐性は、代謝系自体のpropertyの一つで
| ある
| > robustnessによるものだとおもいます。変化に対して自らも変化し
| > 適応することにしても、代謝系自体のダイナミクスが発揮されたものであって、
| > センサ,プロセッサ,アクチュエータ機構をもちだして議論することも
| > できますが、あえてこれらを導入せずとも話ができるものとおもうのですが
| > いかがでしょうか。積極的にこれらの概念を導入する意義について
| > もう少し説明をいただきたいです。
|
| 飯田:これに対する返答は,次のご指摘の真意を確認してからにします. :)
|
|
| > 飯田| (余談ですが,注意が要なのは,
| > | 1.2.が全体の視点での議論なのに対して,3.では合目的性など,
| > | 局所の視点に立つ議論である点です.つまり,系全体の遷移を観測する
| > | ことで決まる部分系の構造,振る舞いを「解釈」した結果として,
| > | センサー,プロセッサ,アクチュエータ,合目的性などの「意味」を生じ
| > | ています.
| >
| 高橋さん> この視点の揺らぎ、また特にオートノミーはオートポイエーシス論が
| > 最も嫌う種類の議論なのです。
| > 合目的性はともかくとして、
| > これらをどうにかして同一の視点で記述できないでしょうか、、
| > システム論の基本として、系と外部の関係について視点の違いに
| > よる誤謬の危険性を排除したほうがいいとおもうのですが。

| 飯田:オートポイエシス的視点は,部分と全体という視点を嫌う,
|    そのような視点を設けること自体が,間違いを助長している
|    という意味ですね?

ええ、この事に関してはevolveでも書かせていただいたとおり:

========== begin citation [evolve:3061]
彼等がAutopoiesis論を提案したときに強調した「新しい物の見方」
の一つに、系を環境との関係で語るのではなく、また観測者の認識主観との
関わりで語るのでもなく、純粋にその系をその作動を記述することで
定義しよう、ということがあります。つまり、環境や、観察者も
包含して記述した言明は対象となるシステムMについて議論しているのではなく
環境や観察者も含んだ大きなシステムM'について語っているわけで、
結合線型性が保証されない生命等のシステムについて語る場合には
これは致命的な範疇誤謬に繋がります。彼等はこれは避けたいということを
はっきりと言っています。
だから、本来はautopoiesis論は主観依存的な理論ではありません。
========== end

主観、客観の議論を排したのみならず、部分と全体の二項対立も
問題視しているわけです。
ただし、単位体を設定するからには位相的にせよ時空間的にせよ
議論の対象とする系とそれ以外を区別することから議論が
始まることは否定できません。
そこで強調すべきは、提唱者の言葉を借りると、

「説明はいつも現象の再構成であり、現象の構成素が相互作用と関係
によってどのようにして現象を生じさせるかを示すことである。しかも説明
はいつも私たち観察者によってあたえられる。だからシステムに帰属する
構成的な現象と、私たちの記述領域つまりシステムと観察者との
相互作用に帰属する現象とを明確に区別すること、言い換えればシステムの
構成素と、それが観察されるコンテキストを明確に区別することがとても
大切」(出典:オートポイエーシス/マトゥラーナ、ヴァレラ 河本英夫訳)

であるということになります。


慶應義塾大学s 環境情報学部 (Bioinformatics Lab.) ‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
高橋 恒一
_____Kouichi Takahashi t94249kt@***.*** _______


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