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生命の起源 #196 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
196
DATE
10/17/1997 07:53:09 AM
TITLE
[life:000196] Re: What is life?
AUTHOR
"Kazuhiro Iida 飯田一浩 NEC基礎研究所" <iida@***.***>
BODY


高橋 様  LIFEの皆様


高橋さん> 投稿で述べたとおりここでは出発点として「生命が満たすべき必要条
件」
> ではなく「我々が知る生命によくみられる現象論的な特徴」を
> 議論しているものと理解していましたがいかがなものでしょうか?
> # 何度もくどいようで申し訳ありません

飯田:そういう意味で使わせていただいております.:)
私たちは特定の現象だけを生命と呼んでいますから,何かしら特徴がある現象
なはずです.その特徴をズバリ過不足無く言い当てることができれば
生命の必要十分条件を知っていることになりますが,そのターゲットには,
漸近的にしか近づけない.では欠かすことのできない特徴=必要条件を重ねる
ことで,せめてゆこうという意味です.

有る生き物の例,例えば,「犬」は十分条件ですが,十分条件を集めても
対象となる現象の幅狭めることができません.それに対して必要条件
例えば,「代謝系である」を重ねることで急速に対象を狭めることができます.
そういう意味で,「生命が満たすべき必要条件」と言っております.


> 飯田| (つまり,古典的な代謝の概念には,同化,異化という形で境界の存在が
> | 織り込まれています.また,環境は変動することを認めるなら
> | その変動に応じた振る舞い無しに継続できないという理由で継続することと
> | センサ,プロセッサ,アクチュエータに相当する機構が検出されることは等価
> | とみなせます.そういう意味で,「代謝の持続」は,環境の変動を前提とすれば
> | 1.代謝系である.
> | 2.物理的境界がある.
> | 3.センサ,プロセッサ,アクチュエータ機構がある.
> | と,等価なわけです.)
>
高橋さん> センサ,プロセッサがあるとすると系はなんらかの情報を保持する必
要が
> ありますから内部状態の変化が観測されるはずです。
> 酵素反応の連続はほぼエルゴート性をもつものと考えられるので
> 酵素は変化に関する情報は保持していませんね。
> しかし、外部の物質の濃度の摂動に反応して酵素の回転数が変化すると
> 結果として内部の物質の濃度が変化して履歴が発生しますから
> 確かに情報を保持しています。したがって酵素単独では情報の
> プロセッシングは行っておらず、酵素と物質濃度の二種のノードの
> 間に構成されるネットワークが仮構されてはじめて刺激に
> 反応できることになりますね。

飯田:系は何らかの情報を保持する必要があるというのに,大賛成です.
その情報が何で,どうやって保持するかが面白いところです.
高橋さんは,酵素と濃度分布による具体的な保持のイメージ
を描いておられるところが,さすがE−CELLプロジェクト!
と思いました.

保持される情報は何だとお考えですか?
当方は,とりあえずは環境変動の力学系の特徴かと思いますが,
現在の生物が自己の力学系の性質自体も併せて保持している
のを見ると,この,

1.センサ,アクチュエータ,プロセッサ+その学習機構の力学系が,
  生命に先行する重要なメカニズム

に違いないと考えております.それが,RNA分子と自然淘汰の組み合わせ
で実現されたのか,他の機構だったのかはわかりませんが.


(余談ですが,「酵素反応の連続はエルゴード性を..」の意味は,
酵素分子一つを考える時,第一の反応の際の触媒能と,次の反応の際の
それが同じという意味ですね?.必ずしもそうでない場合もあるようです.
昔,試験管を振って実験していた頃,周りの蛋白質やってる人は酵素がすぐ
活性を失うので保存に苦労してました.水中の酵素には少なくとも寿命は
あるようです.あと,エルゴード性はマクロにしか検証できないんじゃ
ないかと思っております.)


高橋さん> ただ、代謝の揺らぎに対する耐性は、代謝系自体のpropertyの一つで
ある
> robustnessによるものだとおもいます。変化に対して自らも変化し
> 適応することにしても、代謝系自体のダイナミクスが発揮されたものであって、
> センサ,プロセッサ,アクチュエータ機構をもちだして議論することも
> できますが、あえてこれらを導入せずとも話ができるものとおもうのですが
> いかがでしょうか。積極的にこれらの概念を導入する意義について
> もう少し説明をいただきたいです。

飯田:これに対する返答は,次のご指摘の真意を確認してからにします. :)


> 飯田| (余談ですが,注意が要なのは,
> | 1.2.が全体の視点での議論なのに対して,3.では合目的性など,
> | 局所の視点に立つ議論である点です.つまり,系全体の遷移を観測する
> | ことで決まる部分系の構造,振る舞いを「解釈」した結果として,
> | センサー,プロセッサ,アクチュエータ,合目的性などの「意味」を生じ
> | ています.
>
高橋さん> この視点の揺らぎ、また特にオートノミーはオートポイエーシス論が
> 最も嫌う種類の議論なのです。
> 合目的性はともかくとして、
> これらをどうにかして同一の視点で記述できないでしょうか、、
> システム論の基本として、系と外部の関係について視点の違いに
> よる誤謬の危険性を排除したほうがいいとおもうのですが。

飯田:オートポイエシス的視点は,部分と全体という視点を嫌う,
   そのような視点を設けること自体が,間違いを助長している
   という意味ですね?

--
"Life and Evolution '97"
Kazuhiro Iida,
Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation,
34 Miyuki-ga-Oka, Tsukuba, Ibaraki, 305 Japan.
TEL +81(298)50-1142, FAX +81(298)56-6136.


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