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生命の起源 #194 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
194
DATE
10/17/1997 06:00:50 AM
TITLE
[life:000194] Re: What is life?
AUTHOR
"KOUICHI Takahashi-S" <t94249kt@***.***>
BODY


高橋です。


一見身のない議論なようですがちょっと気になるところがあります。
もう少々お付き合い下さい。


| >飯田 > 私は,普遍的な性質を捉えているという意味で
| > >
| > > 1.生命も抽象概念(客観的に記述できるたぐいの)の一つだと考えて
| > >
| > > おります.同じラインで個体としての生命が実在するのならば,”種”に
| > > 相当するそれも実在してよくないでしょうか? それで
| >
| > > 2.上の種”や”多細胞生物”に相当する生命があって良いと考えておりま
| > > す.
| >
| 高橋さん> どうも誤解があるようです。種ではなくて生態系というのだったら
| ば、
| > そのような系が生命システムと相似であるという議論は納得できます。
| > 僕がいっているのは種と細胞や個体あるいは生態系はクラスヒエラルキー的に
| > 遠いので比較できないということだけです。説明不足でしたら申し訳ありません。
| > 種等の観念と細胞等のシステムの決定的な違いは、系の立脚する空間が
| > 物理的なものであるか概念的なものであるかということです。

# 物理的なものであるか概念的なものであるかを違いとしたのは少々
# 認識が甘かったようですね。

| 細胞などのシステムが物理空間に立脚するのと同様に,
|
| 1.”種”,”多細胞生物”などの大きなスケールの存在も物理空間に立脚する
|
| と言えないでしょうか?私は,そう考えます.

たしかに多細胞生物のほうは、細胞とスケールの違った相似なシステム的特徴を
もっているだろうとおもいます。

| 要は,細胞とか,多細胞生物とか,種とかいう前に,物理現象は厳然として
| 存在するんだけれども,外からそれを見ている「物理的」な検出装置が細胞
| 以上のスケール(のパターン)で見ているか,それ以下のスケール(のパタ
| ーン)で見ているかに依存して,細胞が生命らしく見えたり,多細胞生物が
| 生命らしく見えたりするということではないでしょうか?

| そんな理由で,私は,
| 1.”種”に相当する生命があり得て,
| 2.その生命も物理空間に立脚している
| と考えます.

(荒さん)
| ”種”が生命か、ということですが、高橋さんへ向けていえば、新種の発生、
| ある種の消滅、種間雑種、雑種致死とかの現象が(まだほとんどわかっていま
| せんが)起こる生物の仮想集団に対しては、生命の基礎モデルと同様な挙動が
| あてはまるかもしれないということだと思います。生態系の中の部分系として
| の”種”ということです(実体があるというイメージ)。

飯田さんがおっしゃっている「種」と、荒さんが生態系の部分系と
してあると主張している「種」は同じもののような感じがするのですが、
これらは「個体群」といってはいけないでしょうか。それならば納得
できます(と前の記事でいったつもりなんです)。
ルーマンのいう社会を拡大したものの範疇にはいりますよね。
たしかに個体あるいは個体同士の相互作用を構成素として、
それらの産出関係によって系が成立しているという点で生命と相似です。


(荒さん)
| ただし、”種”はEVOLVE-ML(というメーリングリストがあります)などで
| もいわれているように、生殖隔離以外にも様々な形質で命名が随時なされてお
| り、一般的にみなが納得できるような物理的な検出装置が発見されていない(
| と、自分は認識しているのですが)というのが問題点であるかも知れません。

といわれるように、「種」といった場合には表現型(形態)でくくるにせよ、
配列でくくるにせよ、今議論している系とは異質なものではないでしょうか。
系の特徴とかいうレベルでいっているのではなくて単純に言葉、概念の問題
としてです。

反例を出すとすると、たとえば二つの同じ種の個体群がなんらかの理由で
生態的隔離に陥いったとします。
このとき二つの個体群は互いに隔離された初期においては同じ種と
みなすことができますが、もはや二つの群のあいだで因果的な相互作用は
起き得ません。相互作用のネットワークが分断されていますので
この場合一つの統一的な単位体として考えることは無理があります。
これらを一つの種だと認識し、これらの断絶したネットワーク間を
橋渡ししているのは俯瞰した視点から物を考えている観察者の観念
であり、俯瞰した観察者の認識と、個体間の相互作用という全く別のクラス
の二つの作用を混在させて系の定義に含めるのは問題があります。


| >飯田 > ラフな表現で申し訳ないですが,生殖,自己増殖は,”種”に相当するスケール
| > > では,代謝に相当する現象とは言_(I&_・__ぢぢないでしょうか?”要素としての個体”が,
| > > 生成し消滅してゆき,その過程で何かが組織されてゆきますよね.
| > > 個体の場合も”要素である生体分子”が生成消滅してゆき,その過程で生命らし
| > > き
| > > 振る舞いが組織されてゆきます.個体スケールで代謝が非常に重要な性質で
| > > あるのと同様に要素としての個体の生成消滅(つまり生殖,あるいは自己増殖)
| > > は非常に重要な性質ではないでしょうか?
| > > ある個体が生命であるか否かを判定する時,我々が観測するのは,代謝や刺激
| > > 反応性という個体の寿命のスケールよりは小さな,要素のスケールでの現象で
| > > す.同様に,上で,生殖あるいは自己増殖というスケールは”種”に相当する存在の
| > > スケールに対しては,要素のスケールの事象です.

| 複数のスケールの検出装置を仮定する以上,”代謝”という言葉よりも,
| 複数のスケールで通用する適切な言葉を探す必要があるかもしれません.
|
| 3.例えば,「生成消滅」とか..
|
| もっと良い言葉があればお教え下さい.

オートポイエーシス論では産出、産出関係といいますね。
英語ではたしかproductionですね。原語ではどうなってるでしょうか。

| > ただ、その論理でいくと、たとえば細胞レベルでは酵素を介した物質変換つまり
| > 構成素の産出関係によってシステムが自己創出しているわけですが、
| > ここで問題にしているのはそのような意味での構成素の産出(増植)ではなくて
| > システム全体つまり細胞個体の増植ですよね?
| > そうすると"種"のレヴェルでの個体の増植は細胞レベルでの構成素の産出に対応
| > するわけで、議論がずれてしまうことになります。
| > というわけでやはり自己増植よりも代謝や自己創出のほうが本質的な
| > 気がするのですが。
|
| これは,単純な意味の取り違いではないでしょうか?
| 上の生殖,自己増殖は,個体スケールの存在に対するもので
| ”種”レベルのスケールの現象ではありません.
| 一つ下のスケールの現象に基づいて,そのスケールの存在
| が判定されている点にご注意下さい.

いや、おそらくこれはもっと根本的な見解の相違によるものですね。
僕は生命システムは下位の階層の現象、構成素によってではなく、
系そのもののダイナミクスによって定義できると考えています。
だからこそ

| > > 1.生命も抽象概念(客観的に記述できるたぐいの)の一つだと考えて

というような考え方が成立しうるのだとおもうのです。


慶應義塾大学s 環境情報学部 (Bioinformatics Lab.) ‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
高橋 恒一
_____Kouichi Takahashi t94249kt@***.*** _______


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