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生命の起源 #1711 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
1711
DATE
04/26/2006 04:13:10 PM
TITLE
[life:001711] Re: 比喩 Windows OS
AUTHOR
"Origin" <origin@***.***>
BODY


高橋様 LIFEの皆様

(1)集中と分散に関するレス.

集中管理型(レジストリ管理型)が計算のパフォーマンスにおいては
分散型に劣るというのは理解できます.動画はどこから利用しても
同じ動画再生アプリで開かれるといった別の次元のパフォーマンス
においては集中管理型が優れているというのも理解できます. :)

パフォーマンスという言葉は,曖昧なので
前者の意味のパフォーマンスを,遷移効率
(目的達成にかかる時間が短いという意味),
後者の意味を,同期効率
(多くの機能をタイミングよく統一的に管理するという意味)
と呼ぶことを提案します.

レジストリによる管理は,遷移効率は低く,同期効率が高い.
旧UNIX型(分散型)の管理は,同期効率は低く,遷移効率が高い
ということになります. :)

多数の機能からなる複合システムという点で,OSと細胞を同一視
すると,さてどうでしょう.

細胞の個別の機能をスピーディに実行するには,分散型が良く,
多くの機能を調和させて実行するには,レジストリ型が良いという
のは,次の意味で,細胞でも成り立つように見えます.

分裂に伴って全ての機能を娘細胞に引き継ぐ,環境の悪化にとも
なって,休眠胞子を形成する,気温や日照などに応じて生殖モード
に移るなどの代謝状態のスイッチ過程では,多くの機能のONOFF
をシーケンシャルにすすめる必要があり,特定の機能だけが勝手に
機能していては実現できない.いわば高次の機能で求められるのは
同期効率で,レジストリ型が向く.

栄養分を分解してATPに変える,古くなったタンパク質を分解する
といった機能は,それと比べると,求められるのは個別の機能の
遷移効率で,分散型が向く.RNAとタンパク質が生きている間
(合成されてから分解されるまでの間)は少なくとも遺伝子とは
無関係にフルパワーでセッセと機能する.

ただし,細胞は遺伝情報を参照する必要があるという意味では
全体として集中管理型になっていて,分散型システムの存在
自体を集中管理している.

逆にOSの仕組みに戻ってみると,
OSも,本来,集中管理システムであって,アプリに一部分散管理
を任せ,そのアプリの起動やリソースの消費状態を管理しています.

よって,完全な分散管理,完全な集中管理,完全な遷移効率
完全な同期効率というのがあると思うのは間違いで,
実在するシステム(何らかの意味で評価を受けて淘汰洗練されて
きたシステム)では,
集中管理と同期効率のペアが,分散管理と遷移効率のペアの上
に鎮座するようなシステムになっているようです.

2種類のペアのどっちが先かという議論もありですが,それは
いまのところ,わかりません.



(2)システムの進化に関するレス

高橋さんの100%妄想とおっしゃる部分も面白いですねえ.
タンパク質からの直接フィードバックの例は知りません.

ですが?,lifeの皆さんならご存じのように,
自分が自分で自分の遺伝子の構成を変えるという意味では,
幾つかのシステムが「実在している」わけです.

(1)細菌の場合,SOS反応のように,エラーの多い修復機構を発動
するか否かで,変異するか否かを選ぶ手段
(2)周囲の環境を変えてしまうことで,自分の子孫への淘汰圧を
変える手段(これは人間もやって来たことですね.体毛が減ったとか
はその結果かもしれません.)

コンピュータではそういうシステム
OSがOSを書き換えるシステムみたいな....
は知られていません.

いやあ,生物って珍なシステムですねえ.

飯田一浩
総研大葉山高等研究センター



> > 飯田:
> > UNIX系も,設定情報に関しては集中管理のwindows化してきている
> > というのは知りませんでした.アプリ開発側から見てレジストリによる集中管理
は,
> > システムのパフォーマンスを最大化したいというニーズが反映されているわけで

> > ね.高橋さんは,システムパフォーマンスの最大化ニーズがレジストリ派生の本
質と
> > 考えられますか?
>
> いやいやいや、集中管理と分散管理の二極のあいだの均衡点の揺らぎではないで
> しょうか。
>
> 「パフォーマンス」が実行効率のことを指しているとすると、一般論として集中
> 管理が高性能であるとは限りません。設定ファイルの規模Nに対して、どんな
> 構文解析アルゴリズムも線形時間O(N)では情報検索できませんから、もしNが
> 十分大きければ複数ファイルにわかれていたほうが効率がよいはずです。
> また、PC程度ではそこまでいかないでしょうけども、システムの規模が
> 十分おおきくなれば、排他処理なども関係しシステムは非対称
> (また計算機科学用語ですが:あるプロセッサからの情報のアクセスに
> かかわる遅延および帯域幅が情報の置き場の相対位置に依存する)となら
> ざるを得ませんので、この意味でも分散管理のほうが理論的には高性能です。
>
> では本質はどこにあるかというと、前に述べた通りですが、機能モジュールの
> 定義、区切りをどこにおくか、どのように相互作用するか(機能凝集)だと
> 考えます。 簡単な例でいうと、たとえばブラウザーで開いても、デスクトップ
> のファイルをクリックしても、動画ファイルは「お気に入り」メディア
> プレイヤーで開く、とかでしょうか。動画を開くという同じ機能は、同じ
> 場所で管理する(Desktop Environment)けども、OSのもっとカーネルに
> 近い情報は、別の場所にしまっておくとか。
>
>
>
> >> たとえば核酸の塩基配列、核酸の修飾からはじまりタンパク質分子の修飾、
> >> 複合体形成、濃度、局在などの遺伝子から見て下流にいくにしたがって集中型

> >> 管理から分散型の情報保持の傾向が強くなるわけですが、進化の
> >
> > 特定の物質とは核酸だったりして..
>
> ある時点で、世代を超えてはもう変化しなくなった(またはその時点
> をもってもう変化してほしくなくなった)情報は核酸にあったほうが
> 有利ですね。複製の精度も速度もコストも。(系の作動中に頻繁に
> 更新したい情報は核酸にはないほうが有利だとおもわれますが。)
>
> もし下流にあった情報が、上流に組み込まれる分子機構なんかを発見できたら
> これはダーウィン、いやメンデルと教科書で名を連ねる大発見になるかも
> しれません。核酸の修飾が塩基配列に変換される機構とか。タンパクの
> 修飾状態が世代を経て核酸の配列にフィードバックされる機構が
> もしかしてあったりして。直接的な分子機構ではないかもしれません。
> 確率過程の揺らぎにタンパクが干渉して(たとえば、、塩基配列の
> 複製のエラー率になんらかのタンパクの状態が関与していたり)
> タンパクから核酸に情報が流れていたりして、、  
> 100%妄想ですけど。。
>
>
> 高橋
>
>
> > ニーズの背景には,(まじめな)アプリ開発者は,機能を追加してゆくので,
> > 常にマシンリソースが不足してしまうという,フラストレーション(の自律生成
> > :)
> > はないでしょうか.
> > (自然に忠実でまじめな)細胞も,(長い歴史の間に)機能を追加していってる
ので
> > 管理リソース(代謝状態のスイッチに必要なリソース)が常に不足していちゃっ
たり
> > して.特定の場所,あるいは特定の物質に,管理情報を集めて集中管理に近い
> > こと始めるようになったりして.
> >
> >
> >> さて、これを厳しいのを承知でLIFE的な話になんとかもっていかせて
> >> いただくとすると、、
> >>
> >> たとえば核酸の塩基配列、核酸の修飾からはじまりタンパク質分子の修飾、
> >> 複合体形成、濃度、局在などの遺伝子から見て下流にいくにしたがって集中型

> >> 管理から分散型の情報保持の傾向が強くなるわけですが、進化の
> >
> > 特定の物質とは核酸だったりして..
> >
> >
> > 飯田一浩
> >
> >
> >
>
>
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