生命の起源フォーラム (ORIGINS OF LIFE FORUM) - help
生命の起源フォーラム (ORIGINS OF LIFE FORUM)
Welcome to 生命の起源フォーラム (ORIGINS OF LIFE FORUM) - help -
生命の起源 #151 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
151
DATE
10/08/1997 07:29:16 AM
TITLE
[life:000151] Re: What is life?
AUTHOR
"Kazuhiro Iida 飯田一浩 NEC基礎研究所" <iida@***.***>
BODY


高橋 様 LIFEの皆様


>飯田 > 私は,普遍的な性質を捉えているという意味で
> >
> > 1.生命も抽象概念(客観的に記述できるたぐいの)の一つだと考えて
> >
> > おります.同じラインで個体としての生命が実在するのならば,”種”に
> > 相当するそれも実在してよくないでしょうか? それで
>
> > 2.上のh種”や”多細胞生物”に相当する生命があって良いと考えておりま
> > す.
>
高橋さん> どうも誤解があるようです。種ではなくて生態系というのだったら
ば、
> そのような系が生命システムと相似であるという議論は納得できます。
> 僕がいっているのは種と細胞や個体あるいは生態系はクラスヒエラルキー的に
> 遠いので比較できないということだけです。説明不足でしたら申し訳ありません。
> 種等の観念と細胞等のシステムの決定的な違いは、系の立脚する空間が
> 物理的なものであるか概念的なものであるかということです。

細胞などのシステムが物理空間に立脚するのと同様に,

1.”種”,”多細胞生物”などの大きなスケールの存在も物理空間に立脚する

と言えないでしょうか?私は,そう考えます.

細胞が物理空間に立脚するという根拠は,おそらく物質と物質の相互作用が
物理化学的であるためですよね.これに対して多細胞生物の場合,細胞と
細胞の相互作用は物理的である以上の作用に思えるので概念的な空間であると
お考えですか.例えば,細胞と細胞が「くっつく」といった相互作用は,
分子と分子の結合とか,電気的な相互作用とか,混合とか様々な過程が
混ざりあった複雑な現象ですね.
しかし,物理的に書こうとすると複雑であるとは言え,その相互作用が記述
できないわけではありませんね.細胞内部の相互作用が存在するのと同様に
物理空間に存在しています.

要は,細胞とか,多細胞生物とか,種とかいう前に,物理現象は厳然として
存在するんだけれども,外からそれを見ている「物理的」な検出装置が細胞
以上のスケール(のパターン)で見ているか,それ以下のスケール(のパタ
ーン)で見ているかに依存して,細胞が生命らしく見えたり,多細胞生物が
生命らしく見えたりするということではないでしょうか?

そんな理由で,私は,
1.”種”に相当する生命があり得て,
2.その生命も物理空間に立脚している
と考えます.


> 文学作品や人間の精神世界は生命であるという言い方がたしかに成り立ちます。
> しかし、現段階でこれらと細胞等の系を同列に扱うのは議論を複雑にするだけ
> であまり得策ではないと考えます。

Dawkinsのmeme(

{Dawkins, R. (1989), The Selfish Gene (new edition), Oxford University
Press, NY.}

の11章をご参照下さい.)の類ですね.


>飯田 > ラフな表現で申し訳ないですが,生殖,自己増殖は,”種”に相当するスケール
> > では,代謝に相当する現象とは言_(I&_ぢないでしょうか?”要素としての個体”が,
> > 生成し消滅してゆき,その過程で何かが組織されてゆきますよね.
> > 個体の場合も”要素である生体分子”が生成消滅してゆき,その過程で生命らし
> > き
> > 振る舞いが組織されてゆきます.個体スケールで代謝が非常に重要な性質で
> > あるのと同様に要素としての個体の生成消滅(つまり生殖,あるいは自己増殖)
> > は非常に重要な性質ではないでしょうか?
> > ある個体が生命であるか否かを判定する時,我々が観測するのは,代謝や刺激
> > 反応性という個体の寿命のスケールよりは小さな,要素のスケールでの現象で
> > す.同様に,上で,生殖あるいは自己増殖というスケールは”種”に相当する存在の
> > スケールに対しては,要素のスケールの事象です.

高橋さん> そのとおりのことを僕も言いたかったんです。

複数のスケールの検出装置を仮定する以上,”代謝”という言葉よりも,
複数のスケールで通用する適切な言葉を探す必要があるかもしれません.

3.例えば,「生成消滅」とか..

もっと良い言葉があればお教え下さい.


> ただ、その論理でいくと、たとえば細胞レベルでは酵素を介した物質変換つまり
> 構成素の産出関係によってシステムが自己創出しているわけですが、
> ここで問題にしているのはそのような意味での構成素の産出(増植)ではなくて
> システム全体つまり細胞個体の増植ですよね?
> そうすると"種"の激xルでの個体の増植は細胞レベルでの構成素の産出に対応
> するわけで、議論がずれてしまうことになります。
> というわけでやはり自己増植よりも代謝や自己創出のほうが本質的な
> 気がするのですが。

これは,単純な意味の取り違いではないでしょうか?
上の生殖,自己増殖は,個体スケールの存在に対するもので
”種”レベルのスケールの現象ではありません.
一つ下のスケールの現象に基づいて,そのスケールの存在
が判定されている点にご注意下さい.


> > 高橋さん> ルーマンの社会システム理論での社会は...
> >
> > 興味あります.文献をご紹介下さい.勉強させていただきます.:)
>
> 「社会システム理論」というそのもののタイトルの本が出ていたとおもいます。
> 訳もあったはずです。その筋では有名な本(らしい)ので、普通の規模の
> 図書館ならば社会学関係のあたりに置いてあるとおもいます。

{ニクラス・ルーマン,(1993), 社会システム理論, 佐藤勉監訳,
恒星社厚生閣.}

原著 Soziale Systeme : Grundriss einer allgemeinen Theorie
著者標目: Luhmann, Niklas

を見つけました.ありがとうございます.

--
"Life and Evolution '97"
Kazuhiro Iida,
Fundamental Research Laboratories, NEC Corporation,
34 Miyuki-ga-Oka, Tsukuba, Ibaraki, 305 Japan.
TEL +81(298)50-1142, FAX +81(298)56-6136.


-----
Go to page top