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生命の起源 #140 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
140
DATE
10/04/1997 11:20:35 AM
TITLE
[life:000140] Re: What is life?
AUTHOR
"KOUICHI Takahashi-S" <t94249kt@***.***>
BODY


高橋@慶應藤沢です。

# ML serverに蹴られていたようなので再送です。


えー、数週間の間話を追えていなかったので完全に被浦島効果です。
思い切って今日から参加したつもりでこれから参加させていただきます。


そのまえに一応フォローを:

| > 少々自己紹介をさせていただきますと、僕は慶應大学環境情報学部で
| > 電子化細胞(E-Cell System)構築の研究をしており、主にシミュレーション

| ”電子化細胞”ですか。面白いキーワードですね。これは、現存する細胞を
| 調べて、それと相同なシステムをコンピュータ上に構築する活動ですか?
| それとも、現存する細胞と同じであるかどうかにこだわらず、これから議論する
| ような生命の性質を備えたシステムを創るというものですか?

基本的に我々が知るmicrobeの作動をシミュレーションすることを念頭に
設計しています。Structured Substance-Reactor modelという基本的に
フローダイナミクスの発展形のモデルを提唱しており、実験系の
記述を直接C++言語のレベルで行えるようにしてあるため非常に柔軟な
モデリングができる、ように願って開発中です。

現在我々のグループではM.genitaliumをベースに仮想細胞の構築を進めており、
現在までのところ124個の遺伝子、転写翻訳系、グライコリシス、
fermentation、細胞膜による物質輸送、リン脂質合成(細胞膜形成)が
完成しております。
今後はDNA複製、細胞分裂、アミノ酸合成等に取り掛る予定です。

ただ、E-Cell Systemは根本的には物質の濃度を変数とした連立偏微分方程式
を数値積分するだけの非常に素朴なシステムでして、遺伝子工学や
微生物学での応用が念頭に置かています。ですからLIFEで議論されている
ような系を検証するには少々単純過ぎます。僕自身の目標としては
アイゲンのハイパーサイクルやオートポイエーシスなどのシステムモデル
も視野に入れたシステムを組んでいきたいなとおもっています。


| 話のつながりが良く追えませんでしたが、たぶん生命が満たすべき必要条件だけ
| では
| 不十分で、そのような条件を満たすシステムが、どのようにして生じうるか?と
| いう
| 生成機構面での議論が必要だとおっしゃっているだと解釈いたしました。

いいえ、そうではなく、僕がいいたかったのは、飯田さんが提示された
前提にあるようなアプローチの仕方は(それ単独では、というだけで
非常に重要であることに疑いの余地はないのですが)生命を現象論として
論じることはある程度明確に行えるとおもうが、単なるに現象論に留まる
だけでは一般的な、システム的な生命の理解は困難なのではないか、という
ことです。
ただ、

| ただし、このスレッドでは、申し訳ないのですが機構面に踏み込む前に、我々が
| どの
| ような現象を生命的と見なしているかを客観的に数え上げてみよう整理してみよ
| う
| としております。それが見えていると、生成機構に関する議論がかなり明確に
| なると思うからです。

この考え方は非常に説得力があるものなので、この点に異議はありません。
どうか僕にも議論に参加させてください。


| > そこで、もう少し上位のレベルの議論が必要になります。つまり、機能単位同
| > 士の関係性、例えば、ある機能単位と、その機能が作用する対象との関係、
| > あるいは機能が発現するために必要な要件である別の機能単位との関係です。
| > このような機能単位同士の関係性のネットワークが本質かな、と考えるわけで
| > す。しかし、僕はこれでもまだ不十分だと考えています。機能単位の関係性の
| > ネットワークでおそらく生命を記述はできるでしょうが、同じように生命とは
| > いえない別のシステムも記述できるからです。コンピュータや、自動車、電話
| > の交換網などの明らかに生命ではないシステムもこの方法で記述できます。
| > また、生命システムとこれらの生命ではないシステムを明確に区別することも
| > このような記述の方法では不可能だと考えます。
|
| 以上の事柄は,私は,
|
| 1.生命は,物質を基盤とする[システム]である.
| と理解しております.
|
| 機能単位である生命源物質,例えばアミノ酸,核酸塩基,ヌクレオチド,色素
| 等々の性質は,おっしゃる以上に重要だと考えています.
| 例えてるなら,トランプゲームは,カードがなければ遊べないからです.
| では,カードだけあれば良いかというと,カードだけではゲームは成り立ちませ
| ん それらを動かすルールがあって初めて,ゲームができます.
| 物質とシステムの関係はそのようなものだと考えております.

僕がいいたかったのは、このアナロジでいくと、カードそのものはゲームでは
ないということです。誰がどのカードを持っているかいちいち紙に書いても
ゲームはできますし、計算機上でもゲームはできます。カードではなく
ボールや駒を使っても違う種類のゲームができます。「ゲームとは何か」
「ゲームの一般的な特徴はどんなものか」を論ずるときにはカードそのもの
は必要ではないということです。

つまり、「生命」自体は物理的実体ではなく概念であり、生命を定義すること
は我々の知る生命という観念を総合、吟味して生命という概念を定義すること
にほかならないわけで、その場合には定義は地球上の既知の生命の形態のみならず
我々がそれを観察したときにこれは生命であるというであろう一般的な単位体も
包含したものであるべきです。したがってゲームの道具は既知の有機分子に限る
べきではありません。ただし、それらの物質の性質、機能は重要なヒントに
なるとおもいます。(機能同士の関係はさらに重要だとおもいます)
…というのが上の文を言い換えた要約です。


| (私は,このような捉え方でなく,生命現象を物理的フラックスの特別
| な形式であると捉え,従来的な記述で書けると思っております.書けるから
| 比較も可能です.ちょっと哲学的な話になるのでフラックスの話は,テーマを
| 変えてご説明します.)

フラックスというのは、プリゴジンが使っているような意味での
いわゆる流束のことですか?
御教示下さい。


| > 付け加えると、生命の定義としてよく言われる自己増植や生殖も
| > 生命システムの本質的な契機ではありません。
| > これらはシステムの作動によって二次的に発生する現象であって、思考実験と
| > してもし増植せずに一代のみで終わる種がいたとしても、不稔性の個体
| > を生命ではないとはいわないのと同様にそれは依然として生命以外の何者でも
| > ないわけです。

| 本質的な契機というのは,生成機構,原理に関することですが,必要条件だけ
| 考えてみましょう.
| 先に前提の部分で,生命はそれに特徴的は時空間スケールがあると
| 述べました.個体のスケールでは,自己増殖は生殖は本質的ではありません.
| 種のスケールでは,本質的になると考えます.

種と細胞レベルの生命を比較するのは範疇誤謬だとおもいます。
種は物理的基盤を持つシステムではないうえに、システムであるかどうか
自体が疑問です。

| > もし物理的な境界が現象的には必須のものであったとしても、十分条件であっ
| > て必要条件ではないと考えます。

| (コメント:
| 十分条件だとすると,物理的境界を持つシステムならば生命ということ
| になります.これはおかしなロジックです.ご検討下さい.)

そのとおりです。認識が誤っていました。発言を取り消します。



慶應義塾大学s 環境情報学部 (Bioinformatics Lab.) ‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
高橋 恒一
_____Kouichi Takahashi t94249kt@***.*** _______








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