生命の起源フォーラム (ORIGINS OF LIFE FORUM) - help
生命の起源フォーラム (ORIGINS OF LIFE FORUM)
Welcome to 生命の起源フォーラム (ORIGINS OF LIFE FORUM) - help -
生命の起源 #1280 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
1280
DATE
09/02/2001 09:06:25 AM
TITLE
[life:001280] Re: What is life? : a tiny tree toward the
AUTHOR
Kazuhiro Iida <piyopiyo@***.***>
BODY


lifeの皆様

次に,膜ができるメカニズムに関する報告を簡単にまとめます.

----------------------------------------------
膜は,その材料が面上に集中して閉じた空間をつくっています.この構造が生じる
メカニズムとしては,
1.疎水性相互作用による凝集
2.溶解と拡散による散逸構造
が指摘されています.生じる構造は同じですが,その形成機構は全く異なります.

1.は,脂質や脂肪酸などの両親媒性分子と水との相互作用で構造がつくられる
ものです.脂質や脂肪酸は,細長い形状をしており,その一端が親水性で他方が
親油性のため,水中である程度濃度が上がると分子が衝突し,親油性の部分
どうしが集まり始めます.その結果,親油性の部分が内側,親水性の部分が外側
に向いた構造のミセルができますが,さらに濃度が上がると,ミセル同士が結合し
ます.この時,分子が細長い形をしており,内側の親油性の部分と親水性の部分
の容積比が一定という性質があるため,
(親水−親油−親油−親水)
という2重構造の膜を持つ線条体もしくは閉じた面(膜胞)が形成されます.
両親媒性分子の構造形成のダイナミクスは,名大の宝谷先生が精力的に調べて
おられました(・F. Nomuram, M. Honda, S. Takeda, T. Umeda, K. Takiguchi and
H. Hotani., Morphological and Topological Transformations of Lipid Bilayer
Vesicles. Statistical Physics, eds. M. Tokuyama & H. Stanley, American
Institute of Physics, New York, pp426-434 (2000) ・本田誠、瀧口金吾、宝谷紘一
生体膜の弾性力学,生体とエネルギーの物理 生命力のみなもと(日本物理学会
編)裳華房出版、48-77(2000))

2.は,アミノ酸の重合物でできた粒子で観察されています.アミノ酸を加熱して
水と作用させ乾燥させることを繰り返すと,複雑な組成のアミノ酸重合物でできた
球ができます.この球と塩基性水溶液が作用すると,内部が空洞の膜胞が形成
されます.具体的な反応機構は不明ですが,その内側では膜胞をつくっている物
質が溶解され,その外側では膜胞の材料が拡散するような現象を生じていること
を長岡技術大学のグループが(桜沢氏,現在は生命研)観察しました(Sakurazawa,
S., Imai, E., Honda, H., Matsuno, K. Microcapsule formation in self-assembly of
thermal hetero complex molecules form amino acids, Colloid. Polym. Sci. 274:
899-903 (1996) ).この作られては壊されるという形成過程は,散逸構造と呼ぶ
べきものでしょう.

----------------------------------------------

これまで私は膜だけに注目して研究してきたわけではありません.
他の機構として報告されているものがあれば,ご指導の程よろしくお願いいたします.


またまた蛇足ですが,こうして見ると,起原の研究はナノテクそのものですね.なぜ
なら自己組織現象によりナノスケールの規則正しい構造物が形成されてゆくわけで
すから.しかも,現在工学分野で追いかけているナノの自己組織膜(SAM膜)等とち
がって,起原ではナノ&インテリジェントなマシンが自然に形成されるわけです.:)

飯田一浩

-----
Go to page top