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lifeの皆様
まず，膜の材料について簡単にまとめます．
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現在の細胞の膜は，脂質でできています．脂質は水中で臨界濃度を超えると
自動的に膜胞を形成することが良く知られていますから，最初の生物の膜も
脂質で出来ていたと思いたくなります．しかしアミノ酸が生成されるような模擬
原始環境では，脂質や原料の長鎖脂肪酸は，ほとんど得られませんでした．
それで，最初は脂質以外の物質で小胞がつくられ，その後，脂質膜に置き換
えられていったという考え方があります（脂質以外の小胞としては，例えば，
オパーリンのコアセルベート，Fox, Haradaのミクロスフェア，柳川らのマリグラヌル
Yanagawa, H., Egami, F.(1980) BioSystems 12,147-154 などが想定されていま
す）．その一方で，やはり脂質の類縁物質から始まったと考えるのが妥当で，
その材料は隕石に由来する脂肪酸だったという説もあります（例えば，Mautner,
M. et. al.(1995) Planet.Space Sci 43, 139-147）．このグループは，隕石中には，
組成不明な有機物が含まれており，それが地球に降り注いだ際に水と反応して，
炭素数１０程度の脂肪酸を生じた可能性があると指摘しています．それらの脂肪
酸も膜胞を形成するが，薄いので今の脂質膜よりも物質を良く透過するから，
最初の細胞膜に向いているとのこと．
その後も脂質の生成条件を探る実験は進められており，最近，生命誕生の場所
として注目されている海底の熱水噴出口に近い条件（100?125℃）で，各種の
脂肪酸や炭化水素が生じることが報告されています（Rushdi, A. I., Simoneit,
B. R. T.(200）Origins Life Evol. Biosphere 31, 103-118）．このグループの研究
者は，地球上の熱水噴出口付近で，一酸化炭素や二酸化炭素を原料として（
Fischer-Tropsch反応様の反応）脂質の材料が合成されたのだろうと予想して
います．
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不正確な点，補っていただければ幸いです．
なお，蛇足ですが，隕石から有機酸ができることを報告したグループのDeamerは，
最近ナノテクとも言える仕事で特許をとっています．脂質膜に，細菌からとったヘモ
リシンという穴のあいた蛋白質を一個だけ結合して穴を空け，そこにｓｓＤＮＡを通し
てＤＮＡの配列を電気的に読み取るという特許です．これが実現すると，超高速
ＤＮＡ配列読み取り器ができますね．起原の人は，発想も豊かということでしょうか．：）
飯田一浩
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