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生命の起源 #1270 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
1270
DATE
08/28/2001 10:35:46 PM
TITLE
[life:001270] Re: What is life? : The phylogenic tree
AUTHOR
Kazuhiro Iida <piyopiyo@***.***>
BODY


山口様 lifeの皆様

ご指摘ありがとうございます.山口さんの指摘は,物質の進化系統樹の性質に関するもので,
極めて重要です.物質の進化系統樹には,巡回路が存在しないなど,他の性質もありますが,
まず,ご指摘の点にお答えします.

山口さんQ1> (包含関係の上位にある属性は)”先行する属性の条件式も「全て」満たす” の
> 「全て」と
> いうあたりでつまずきました。
>
>  積木を例にしますと、重心を少しずつずらしながら積み上げてゆくと、最上部の
> ピースが
> 最下部のピースと重ならないようにできますね。「少しずつずらして」の「ずれ」
> (emergenceと
> いっても構いませんけれど)が重なり、重心がずれて、初期属性が見かけ上失われた
> 可能性は
> ないでしょうか?


飯田A1:
(こういう場合,図があると便利ですね.:)
包含順序関係下にある属性群については,ご指摘の可能性はございません(断定).

山口さんにご指摘いただいた,重心がずれてゆくような進化シーケンスの場合は,包含順序だけ
では表現できません.それで,[life:001249]でほのめかした,系列の交差点を表す論理で表現し
ます.具体的には,Venn図上の関係(同一,重なりと交わり,平行,相補,和,孤立),相関関係
(完全従属,独立,正の従属関係,負の従属関係,排他性,同時生起)に注目して分析しています
(後日説明する機会があると思います).

重心がズレてゆくような遷移の場合について具体的に説明いたします. 属性A,B,Cが,「ズレ」
ながら交わっており,AからスタートしてCに向かう過程を想定しましょう.注意したいことは,
属性Aを持たないという属性をA~{-}と書けば,この過程が,A⇒B⇒Cではなく,
A→A∩B
 ⇒A~{-}∩B
 →A~{-}∩B∩C
 ⇒A~{-}∩B~{-}∩C
と書けることです.→印は包含順序を,⇒は,遷移順序を指します.
逆に,A,A∩B,A~{-}∩B,A~{-}∩B∩C,A~{-}∩B~{-}∩C なる属性のリストだけから,この遷移
順序が導けるか?といいますと,残念ながらできません.他の可能な経路も含む,曖昧さを残した
系統樹,

A→A∩B
   |
  A~{-}∩B→A~{-}∩B∩C
           |
        A~{-}∩B~{-}∩C

ができます(|は,相補関係の意味). その理由は,包含順序から時間順序が決定できるのに
対して,相補関係からは,直接的には時間順序が決まらないからです.

具体的には,
A→A∩B
A→A~{-}∩B
であることはわかりますが,
A∩B ⇒ A~{-}∩Bという順序で生起したのか,その逆の順序で生起したのかを決定する方法については,
まだ現在研究中です.
単なるたとえですが,Aを「無機質である」,Bを「短い分子からなる」,Cを「遺伝子がある」として考えてみると.
A∩Bは,無機質の短い分子から成る系
A~{-}∩Bは,有機質の短い分子から成る系です.
A「無機質である」からスタートしたとすると,無機質の短い分子から成る系のほうが,有機質の短い分子から
成る系より前に生じそうなのですが,まだ結論に至ってはおりません(AとA~{-}が排他的だとすると同時には
起こりえない,などなど).お知恵を拝借できれば幸いです.

同じことが,
A~{-}∩B→A~{-}∩B∩C
A~{-}∩B→A~{-}∩B~{-}∩C
の順序についても言えます.



山口さんQ2>あるいは、アーチを作る際の「ささえ」のように、D→Aに進む時
> だけに必須な
> (従って失われた)Dの属性、というものがあり得るのではないでしょうか?


飯田A2:
次に,属性が失われるケースについて説明いたします.
属性が失われるといえそうなケースとして,
A∩B⇒A~{-}∩Bの場合,
A⇒A∩B⇒Bの場合
があります.

前者は,例えば,Bは「遺伝子がある」,Aは「無機質でできている」,A~{-}は「有機物でできている」
と読み替えてみて下さい.前者のケースでは,生物の属性を数える時点で,失われた可能性のある
属性Aに予め注目して数えていれば,その失われる過程もまた先の重心がズレていく場合のように,書けます.
もちろん予めAに注目していなければ,経路を書くことはできません.

後者は,Bの獲得のためにAが必要だったが,Bが獲得されてしまえば,Aであろうと,なかろうと関係ない
といったケースです.
この場合も,Aに予め注目していなければ,経路を書くことはできません.
しかし,予めAが失われることを想定している場合,
A,B,A∩B,A~{-}∩Bなる属性を数え,

A→A∩B→...
   |
 A~{-}∩B→...

なる分岐図を得ることができます(|は,相補関係.ここでA⇒A∩B⇒Bは,
A⇒A∩B⇒(A∩B)∪(A~{-}∩B)と書かれています.



山口さんQ3> 可能性ばかりを書いて申し訳ありませんが、「全て」と言いきれるのが数理的な普遍
> 性に由来
> するのか、属性の選び方や条件式への分解方法に依存するものかを知りたいのです

飯田A3:
包含順序関係下にある属性の並びについては,「全て」が,数理的に保証されていると考えております.


山口さんQ4> 関連して、包含関係を評価する際、属性の条件式は全て等価でしょうか?それとも重
> み付けが
> ありますか?

飯田A4:
条件式どうしを何を基準として比較するかがポイントになります.ここでおっしゃる等価性の判断基準は
何でしょうか?ご指導いただければ幸いです.


飯田一浩
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