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生命の起源 #1263 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
1263
DATE
08/24/2001 09:05:35 AM
TITLE
[life:001263] RE: What is life? : The phylogenic tree of materials
AUTHOR
Kazuhiro Iida <piyopiyo@***.***>
BODY


三田様 lifeの皆様

(つづきです.)

説明:

1.包含順序A→Bに注目するとき,属性Aは,実験系が満たすべき初期条件であり,
Bは,期待される実験結果である.

例えば,Aは「恒常性を維持するように見える」,Bは「物理的境界がある」という属性
だとします.先日,小項目に分解して説明いたしました内容では,BはAに包含されま
すから,A→Bという順序で属性が獲得されたと言えます.
この獲得過程を検証する実験を実施することを想定して,説明させていただきます.

実験系は,物質の組み合わせ,反応条件,入れ物の構造,そしてそれらに規定される
現在の状態で表せます.属性Aは,実験系が満たすべき初期条件でありというのは,
実験系の出発状態(初期状態)が,「恒常性を維持するように見える」の条件式を満た
すことを指します.

A「恒常性を維持するように見える」は,先に,
マルコフ的である(系の遷移が系自体に大きく依存する)
特異的な分布を形成しており
それが維持され,
小さな擾乱にも安定である
と分解しました.実験系は,このそれぞれの小項目に対する条件式を,全て満たす
必要があります.

例えば,「特異的な分布を形成しており」というのは,空間をスケールλ,時間スケールτ
のセルに区切って計測する時,注目するセルの状態と最近傍のセルの平均状態との差が
大きいことを指ます.これを代表する距離Lとして例えば,最小二乗距離

L=∑_{i} (s_{i}~{+} - <s_{i}~{±}>)^{2}
(s_{i}~{+}:注目するセルのi番目の状態要素の値.s_{i}~{±}:注目するセルの最近傍のセル
群のi番目の状態要素の値)

を採用し,このLが,ある閾値よりも大きいことで検証します.状態要素の値は,例えば
脂肪酸(パルミチン酸等)など物質の濃度や,電界強度などの物理量です.計測スケール
λ,τは,個々の属性,小項目ごとに決められる値です.「特異的な分布を形成しており」
という小項目が満たされている状態は,例えば,そのセルのパルミチン酸濃度が,近傍よ
りも有意に高くなっているか,低くなっていることに対応します.上の条件式では,物質濃度
だけでなく電界強度などの物理量についても同じことが言え,注目するセルにおける電界
強度が近傍よりも有意に強いか,低いことでも「特異的な分布を形成しており」が満たされ
ます.これは,例えば,荷電している物質の周囲などで生じ得る状態です.

実験者が「恒常性があるように見える」→「物理的境界がある」へのジャンプを検証したくて,
パルミチン酸に当たりをつけた場合(どうやって当たりをつけるかは別に説明しますが),少
なくともパルミチン酸の局所濃度が計測できる実験系でなければ,「特異的な分布を形成
しており」すら検証できませんから,そうでない実験系は除外されます.

同じように,実験の結果「物理的境界」が生じたことを検証する必要がありますが,これは上
と同様に「物理的境界がある」に対応する条件式が満たされていることで示されます.

(つづく.長くてごめんなさい)

飯田一浩

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