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生命の起源 #1150 : LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life study
LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
1150
DATE
03/23/2000 10:13:15 AM
TITLE
[life:01150] RE: SSOEL25
AUTHOR
"Kazuhiro Iida" <iida@***.***>
BODY


SSOEL25の参加レポート(つづき)です.

3.公開シンポジウム「原始環境からみた起原と進化」
学会の最終日に
(1)宇宙での分子進化,
(2)原始地球環境と最初の生命の化石
(3)原始的細菌の分子生物学的知見
という体系的ストーリーにのっとった講演がありました.
(1)宇宙での分子進化に関しては,国立天文台の大石先生が
暗黒ガスの周辺での物質進化について電波望遠鏡を使った
観測結果を報告されました.それによると,極めて多くの種類
の有機低分子が検出されるそうですが,アミノ酸など,直接,
生体物質にむすびつきそうな分子の存在は,まだ見つかって
いないそうです.これらの分子の多くはラジカル状態で,その
成因も,地球上での化学反応とは,全く異なる過程で生成され
るらしいとのことでした.それらの有機物質は量的には極めて
多量ながら,分子濃度が極めて希薄であるため,衝突頻度は
1年に一回程度と見積もられ,その分子進化は,極めて遅いとの
ことでした.生体をつくるような複雑分子が宇宙空間で直接生産
される可能性は低そうです.
(2)さて,それらの有機物質は,彗星や隕石などに乗って原始地球に
降り注いだとされています.
それらの有機物質が海の水に溶けたものが,生体物質のもとに
なり,特に,それらが海底の熱水噴出口の付近で変性重合する
などして生命が誕生したのではないかという説があります.
これに関連して,東大の磯崎先生が地質学的に38億年前の海洋
底の熱水噴出口およびその水脈とみられる岩石から細菌様の化石
を見つけたという報告をされました.この化石は,以前,LIFEでも
紹介したことがありますが,放線菌に似た形状をしています.
(私本人は,この化石が生物由来かどうか判断しかねています.)
以前の説では,最初の生物は光合成する藍藻の類とされていました
が,磯崎説では,海洋底の熱水噴出口付近で化学合成をしていた
のではないかとのことです.
話は,かわりますが,その時代,その場所の物理的環境を推定できます
かとたずねたところ,以前,RNAワールド仮説を検証するで丸山先生,
川上先生もそうおっしゃったのですが平均値としてはかなりの高温だった
と推定されるが,測定の誤差範囲が50度から90度もあるので,正確な
状態はわからないとのことでした.このことは,合成実験をする場合の
出発環境が正確にはわからないということを意味するので,より正確な値
がわかる分析手法の確立を期待しています.
(3)東京薬科大学の山岸先生によると,
最初の細菌の誕生とその姿を,現存する細菌の遺伝子配列から推定すると
やはり38億年前ごろ最初の細菌が極めて高温の環境下で出現したと
いう結論がえられるとのこと.これは,生命の熱水起原説を支持する結果
です.その最初の生命は,その後,古細菌と真正細菌に分岐し,ついで
真正細菌が古細菌の中に取り込まれることによって,真核細胞が誕生
したという説がリンマーグリスの細胞内共生仮説です.山岸先生によると
ミトコンドリアや,葉緑体はそれで良いかもしれないが,ゴルジ体や,
小胞体の起原は不明とのことで,これは,古細菌どうしの融合によって
生じた「くびれ」で説明できるかもしれないとの仮説を提出されました.
その根拠として,細胞壁をもたない古細菌の一種thermophilusを
ある条件で培養していると,おそらく分裂がうまくゆかない
ことによって多細胞が融合した菌体が出現する場合があるそうで,
その形状がまさに「くびれ」こみを持っているそうです.さらに,その融合
体の核酸を染色して分布を調べると,複数の細胞に由来する核酸が,
一箇所にまとまって,核様の領域を形成していたそうです.残念ながら
その培養条件を実現することが難しく,再現性が悪いそうですが.
面白い知見でした.
(つづく)

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