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飯田さん ならびに LIFEのみなさまへ
中川@KITです。
----- Original Message -----
From: Kazuhiro Iida <iidakek@***.***>
To: life ML <life@***.***>
Sent: 1999年8月16日 17:51
Subject: [life:01073] 返 : Re: mitchondria moves like bacterium
ここまで省略いたします。
> Voetの教科書で,調べるとATPがくっついたGアクチンは,
> Fアクチン(アクチンのポリマー)を一方向に伸長させる,つまり
> 一方だけの端に重合してゆきその時,ATPが加水分解されるとあります.
> この伸長方向を決定がATPの役割であるように書かれています.
>
> よくわかりませんが,ATPが結合することによって,立体構造が微妙に変わ
> って,Gアクチン分子に方向性が出るということでしょうか.分子(Gアクチン)
> の構造の一部を一時的に(異方性に)固定するのがATPの役割なのかも.
> そう考えると筋肉の機構とちょっと似てるんではと思いました.
>
> ちなみに,重合したアクチンは,他端でどんどん解離してしまうので,ATPに
> 結合したアクチンの量によっては重合しつづけても長くならない状況が出現
> するそうです.
>
> 分子生物学は日進月歩なので,上はもう古いイメージかもしれません.
> 新しいイメージが提出されていましたら,ご教授下さい.
アクチン重合のことですこし説明不足だったところがありましたので、
その補足をします。
アクチン重合速度は、ATP-GアクチンとADP-Gアクチンでは20倍ほど
ATP-Gアクチンが早いのですが、重合と同時にATP-Gアクチンが
ADP-Gアクチンになるわけではありません。繊維を作ったアクチン分子
のなかでゆっくりと加水分解されていきます。そのため、アクチンの重
合とATPの加水分解はカップリングしていないと考えられます。ATP-G
アクチンとADP-Gアクチンに、立体構造の違いがあることは十分に考え
られると思います。
これと似たことは微小管でも知られています。微小管を構成するチュー
ブリンはGTPase活性をもち、GTPを結合していないと重合できませんが、
重合とGTPの加水分解はやはりカップリングしていません。
また、ATP-Gアクチンの重合が一方向だけということはなく、重合の
早い端と遅い端があるだけです。重合の早い端は脱重合は遅く、逆に
重合の遅い端は脱重合は早くなっています。そのためGアクチンの濃度
が適切だと、Fアクチンの早い端にGアクチンが付加されその分が遅い
端から脱重合してしまう「トレッドミル」という現象が起こります。
私の知識も10年ほどほとんど更新されていませんが、上記の話に変更
はないはずです。
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中川 裕之
九州工業大学 情報工学部 生物化学システム工学科
E-mail: hiro@***.***
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