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平藤様 LIFEの皆様
1.情報の流れと間接度について
平藤さん:
> うーん。なかなか詰め将棋のようにいかないですねえ。それだけ,生き物がやや
> こしいシステムなのだということでしょう。
> 翻訳系が間接度が高い反応系として選択されるとすると,間接度が高い反応系の
> 有利さって何?
飯田:
すくなくとも次の3つの特徴があると思います.
1.冗長さに起因するロバストネス
翻訳系で顕著ですが,産物Aに対してその前段階に複数のコード(あるいは分子)が
対応している場合,一つのコードが失われてもAの生産はストップしません.
2.ケチの原理
産物Aよりも優れた産物Bの発明と生産を,産物Aの生産工程をほぼそのまま使って実
現できます.ゼロからのスタートでBをつくるよりも時間が省けます.
3.それから,平藤さんご指摘の情報の方向づけ
間接度の高い反応段階では,情報の流れに方向性が生じる可能性があります.
今考えたばかりなので,良い例では無いかもしれませんが,
系α: A←→(C または C') と
系β: A←→C
(←→は双方向の反応の意味.A,C’,Cはある分子でともに平衡状態にあるとしま
す.)
という2つの系を考えます.
AからCができる反応の間接度は,系αの方がが大です
(C’という可能性がキャンセルされる必要があるからです).
今,Aの性状が環境によって変化させられA←→Cの反応が起こらなくなったとしま
す.系αでもβでも早晩Cは失われます.
逆に,Cの性状が変わったことによってA←→Cの反応が起こらなくなったとする
と,系βでは,Aが早晩失われるのに対して,系αではC’が存在するためAが維持
されます.
「影響の伝わる方向」を考えると,間接度の低い後者の系では方向性が無いのに対し
て,間接度の高い前者では,A→(CまたはC’)の方向に伝わりやすいことがわかりま
す.
これら3点の特徴は分子反応系の進化に有利かもしれません.
飯田@NEC基礎研究所
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