LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
1295
DATE
09/20/2001 08:59:45 AM
TITLE
[life:001295] Re: What is life? : a tiny tree toward
AUTHOR
Kazuhiro Iida <piyopiyo@***.***>
BODY


三田様 LIFEの皆様

三田さん:
> 当時は、ほとんど顕微鏡観察による球状形態だけで議論されていました。何か反応基
> 質を加えて変化を見るという触媒活性は簡単に測定できるので多少検討されていまし
> たが、内部形態・境界構造はほとんど議論されていないと思います。今申請している
> 予算が通れば、少しプロテノイドミクロスフェアを中心に機能と構造を調べてみたい
> と思っているのですが。。。

飯田:
経験上,良い行いは報われます.(深読みしないでくださいね.:)
光学顕微鏡で見る限りにおいて,0.5μm程度の分解能しかありませんから数ミクロンの
ミクロスフェアの内部構造を観察するのは困難だったでしょう.現在は,走査電顕があり
ますから,より詳しい構造がわかるように思われます(電子線で形が崩れる可能性
があるので金属の蒸着が必要かな).あとは,観察された構造にどのような意味を見出せ
るか.その辺が今後の議論で見えてくると良いですね.


>飯田 > [life:001284]で添付した表を再度参照しますと,低位のスケールでの特徴として
> >流れ制限
> > が強いか否かが特徴的で,生体膜以外は,脂質膜,長鎖の脂肪酸膜だけがこの特徴
> >を満たし,
> > (定量的なデータはありませんが)マリソーム以降の構造物はそうでないと判断い
> >たしました.
> > まずここまでに,異なる情報があればご指導いただければ幸いです.
三田さん:> これは、リポソーム的な構造(表現がうまくないのですが)が必須と言うことと認識
> してよろしいのでしょうか。なんとなく理解できますが。

飯田:
リポソームは,先にお話しした脂質膜と同義とみていただいて結構です.表でマリグラヌール
以降の構造物と比較すると,やはり流れ(特にイオン)の制限が強いという特徴があると思い
ます.
三田さんから,あからさまな反論がないのを良いことに,低位スケールの次の特徴
2次元化可能性を取り上げます.平面構造が自動的に形成されるような局所的性質が
あるかどうかを指しています.

生体膜,脂質膜,長鎖脂肪酸の膜,短い脂肪酸の膜については構成分子が,局所的に見て
も2次元的に配置しているので,この性質があります.
これらの構造物の2次元化可能性は,成因から説明されています.つまり,
その構成要素である分子が,両親媒性の細長い分子であることが原因で,2次元化可能という
特徴が生じていると思われます.ミセル同士が融合してゆわゆる2重膜状態になった後は,
疎水性相互作用の効果でその2重膜状態を壊して面の法線方向に分子を積み重ねてゆくより
は,平面方向に分子を追加するほうがエネルギー起こりやすいという事情で2次元化可能にな
っていると説明されています.(文献としては,私は: "Intermolecular and Surface Forces,"
Jacob Israelachvili, Acadamic Press, 1991.で勉強しました.)
生体膜の場合,蛋白質の裏打ち構造がありますが,裏打ち構造がなくても平面構造が形成され
ますから,2次元化という局所の性質については,脂質膜や長鎖脂肪酸膜と同じと考えられます.

マリソームは高位スケールで膜状で,しかも出芽様の現象が報告されていますから,2次元化
可能と判断いたします.ただし,その生成機構は脂質膜とは異なるように思えます.
出芽様の現象が生じることは,内腔の物質構成と,外部のそれとが異なり,その界面で何かの
(化学?)反応が起こる結果として2次元化が起こっているように見えます.

ミクロスフェアカプセルは,高位スケールで空胞状ですが,局所で2次元化していると言って良い
かどうか以前の三田さんの指摘にもあったように判断が難しい,境界的な構造です.
2次元化(空胞を形成するという意味で)の機構も,脂質膜と異なるようです.長岡技科大の報告
ではカプセルは,さらに小さいナノパーティクルが集まって出来ているとのことですが,この粒子が
極性分子かどうかについては不明です.表では○にしましたが,不明(−)とする方が正確かも
しれません.

これらに対して,コアセルベート,ヒドロゲルは2次元化が見られず,局所において2次元化を保証
するような機構も聞いたことがありませんので,この特徴は無いと判断しました.

こうした理由で,表の2次元化可能性の項の分類結果を得ました(ミクロスフェアカプセルは不明に
修正が必要).この判断についてはいかがでしょうか?

(2次元化可能性は,共通項目の数の少なさという視点では,生体膜類似構造の低位スケールでの
特徴として,流れ制限の次に重要な特徴と考えます.)


飯田一浩@ワーム対策に時間をとられてしまいまいした. (>_<;)
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