LIFE Mailinglist Archive for the Origins of Life Study

ID
1283
DATE
09/05/2001 08:44:59 AM
TITLE
[life:001283] What is life? : a tiny tree toward the membrane :Characterization
AUTHOR
Kazuhiro Iida <piyopiyo@***.***>
BODY


三田様 lifeの皆様

三田さんの指摘を受けて,生体膜類似の構造を分類したいと思います.
膜の起原を考える上で,生体膜がどの構造クラスに含まれるかを決めておく
必要があるからです.

ここでは,生物の(物理)属性と,その条件式に基づいて物質系を分類して
いますから,構造も同じ考え方で扱います.つまり物質系を計測した結果が,
属性(構造)を代表する条件式に当てはまるなら,その属性(構造)が獲得
されていると見なします.

まず,構造は低位と高位の2つの時空間スケールで計測するとします.
高位のスケールは,低位のスケールよりも概ね1000倍以上大きなスケールで,
形態学的に「閉じている」か否かなどの大規模な性質を評価するのに使います.
低位のスケールは,より局所的な性質,高位のスケールが示す構造が,「緻密で
物質を透過しない」などの性質を評価するのに使います.細胞の実際のサイズでは,
高位のスケールが数ミクロン,低位のスケールが数ナノメートルに相当します.
(なぜ2つの時空間スケールを用いるかというと,特徴の捉え方によってスケールの
数は変化しえますが,以後の議論では2つのスケールによる記述が妥当な程度の
特徴を議論するという意味です.)


この見方で,膜の「構造上の特徴」を記述すると

1.低位のスケールでの特徴

1)構造単位

1種類の構造単位かどうか
凝集性が有るかどうか

2)その局所配置

その点を介する物質やエネルギーの流れが制限されるかどうか
その点の物質密度が高いかどうか
その点の配置の自由度が2次元かどうか
(低位スケールで見て,面の法線方向には配置しないこと)

3)ダイナミクス

低位スケールで安定かどうか
(擾乱に対して,上記の特徴が回復するか否か)



2.高位のスケールでの特徴

1)局所構造

1種類の局所構造から成るかどうか
(異種の構造パッチが存在するかどうか)

2)全体的形状

質量に対して容積が大きいかどうか
形態学的に閉じているかどうか
空隙が存在するかどうか

3)ダイナミクス

高位スケールで安定かどうか
(擾乱に対して上記の高位スケールの特徴が回復するか否か)


が妥当でしょうか.



生体膜をこれらの指標で特徴づけると

1.低位のスケールでの特徴
1)構造単位
1種類の構造単位かどうか⇒ 一般に異種の構造単位からなる
凝集性が有るかどうか ⇒ 凝集性がある

2)その局所配置
その点を介する物質やエネルギーの流れが制限されるかどうか
⇒ 制限される
その点の物質密度が高いかどうか ⇒ 高い
その点の配置の自由度が2次元かどうか ⇒ 2次元
3)ダイナミクス
低位スケールで安定かどうか ⇒ 安定


2.高位のスケールでの特徴
1)局所構造
1種類の局所構造から成るかどうか⇒ 一般に複数の局所構造からなる

2)全体的形状
質量に対して容積が大きいかどうか⇒ 大きい
形態学的に閉じているかどうか ⇒ (高位のスケールで)閉じている
空隙が存在するかどうか ⇒ 空隙がある

3)ダイナミクス
高位スケールで安定かどうか ⇒ 安定である.

になると思います.

次報ではこの指標で,プロテノイドミクロスフェア,マリグラヌル,コアセルベート,
脂肪酸膜,脂質膜,コロイド凝集物を比較したいと思います.

飯田一浩
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