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三田様 lifeの皆様 
 
ご指導ありがとうございます. 
 
飯田> 溶解と拡散による散逸構造 
を膜の生成機構と見ることに対する疑問として, 
 
三田さん> 均質溶液に何らかの場が生成し、密度の異なる空間ができた場合、その溶質濃度を見 
> れば「溶解と拡散した散逸状態」かもしれませんが、あくまで結果であり生成機構で 
> はないと思います。生成機構は、均質溶液中に加えられた力であると思います。プロ 
> テイノイドミクロスフェアの形成には、イオン種・イオン強度の寄与が大きいことが 
> 知られています。ですから、静電的なあるいはイオン的作用が球状体形成に効いてい 
> ると考えるべきだと思います。 
 
なるご指摘をいただきました.上記において,三田さんは, 
1.溶解,拡散による膜状の構造は,結果であり成因では無い 
2.膜状の構造の成因としては,イオン的相互作用を想定するのが合理的である 
と主張されています. 
 
 
1.については,溶解と拡散は成因になりうると信じますが,ミクロスフェアでそれが見られる 
とした点については,多少当方の思い込みがあり,反省しております. 
 
私は,溶解と拡散の可能性だけを書きましたが,他の可能性もありえます.例えば,スフェアの外側が 
アルカリで溶解されにくく,しかも透過性が高い成分から成り,内部が溶解されやすい成分でできてい 
れば,中身が解けて外に漏れ出すだけで,カプセルが生じえます.詳しい機構が解明されるのを待って 
数えたほうがよさそうです.この段階では,「疎水性相互作用以外の未知機構」として参照するのが 
適当だと思います. 
 
 
2.については,当方は,イオン的相互作用は補助的な作用だと考えます. 
 
第一に,符号の異なるイオン間の凝集効果が主たる要因だとすると,その結果生じる構造は 
金属塩の結晶のような樹枝状になると思われます(パーコレーション).この予想に反して,ミクロス 
フェアは球状にまとまった構造をしています. 
第二に,イオンが水素結合を強化するなどの補助的な効果(例えば,DNAは,Mgイオンが存在すると, 
すぐに凝集沈殿してしまう)で,ミクロスフェアの生成に寄与しているとしても,コンパクトな凝集物 
が生じるだけで,空洞を持つような構造を生じるとは考え難いからです.アミノ酸の重合物が極めて規則 
的で,特定の場所だけで水素結合可能な結晶性の分子だったとすれば,ありえないことではありません 
が,種々のアミノ酸の熱反応で,同じような球体ができるというのは,その可能性が低いことを暗示して 
いるように思えます. 
 
 
三田さんは,もう一点 
 
三田さん> 疎水相互作用で形成するミセルも、溶解と拡散というとイメージが多少異なりますが 
> 、プロテイノイドミクロスフェアに比べると非常にドラスティックな変化ですが、散 
> 逸構造には違いないのではないでしょうか? 
 
と指摘してくださいました.おっしゃるとうりです.散逸構造は意味が広すぎます. 
(散逸構造という言葉は,今後あまり使わないようにしようと思います.) 
 
 
さらに, 
 
2.>その例として、プロテ イノイドミクロスフェアが適当か否かには疑問があります。 
> まづ、本当にプロテイノイドミクロスフェアの内部に空洞があるのかどうか?昔、先 
> 輩がやっていた実験の結果から、うろ覚えで申し訳ありませんが、内部構造について 
> は疑問点があると議論していました。溶質とプロテイノイドミクロスフェアの間での 
> 、溶解凝集が平衡的に起きているのは間違いないでしょう。表層に殻のような形態が 
> 見られるのも事実です。しかし、その内部構造ははっきりしていないはづです。もっ 
> とも、細胞も内部が全くの空洞ではなく、細胞質などに満ちているわけですが。内側 
> における密度が表層と異なれば、多少なりとも溶解していると見ることもできなくあ 
> りません。 
 
で,三田さんには,膜胞,空胞,小胞など,形状類似とはいえ,細かく見ると異なる 
構造物を1把ひとからげに参照している可能性を示唆いただいたと思っております. 
膜の起原を考える場合,それらの構造を分類しておく必要がありそうです. 
質量と最大容積の比, 
閉じているか否か, 
表面の形状, 
内部の空隙の形状などが 
指標になると思います.実際に存在する巨大分子集合体を,これらのパラメタで 
分類した表か何かを示したいと思います(次報). 
 
 
> なお、櫻沢氏ははこだて未来大学に移り、小さいなりにも1城の主になったようです 
> 。また、生命の起原の研究も再開するそうです。 
 
飯田: 
おめでとうございます.そして,祝,起原研究再開! 
→ 桜沢さん :) 
 
 
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